医療・看護

2015年3月3日

相談室日誌 連載387 「生活保護受給者は受診を控えてあたり前」?! 岡田武(長崎)

 Aさんは生活保護を受ける六〇代の単身男性です。建設関係の自営業を営んでいました。脳梗塞後遺症で、身障手帳2級取得。生活は障害年金、不足分が保護費で出ています。他に腰部脊柱管狭窄症・変形性膝関節症があります。
 当院へはバスを乗り継いで通院中です。身障手帳があるので運賃は半額ですが、翌月、移送費保護変更申請書を提出し、負担分が出ます。医療機関は、保護課から毎月届く「移送費用の通院証明書」に来院日を証明。さらに医師は「移送費の給付要否意見書」を書きます。医師が記した必要な通院頻度は「月四~六日で半年間」、実際、その範囲で推移していました。
 しかし、腰痛が悪化して受診が一六日になった月がありました。すると担当のワーカーは「病院にかかりすぎる」とAさんを責めました。保護課からはSWにも電話確認がありました。電話では誤解も生まれかねないため、医師に文書で照会するよう求めました。
 外来用の医療要否意見書には、リハ医が「脳梗塞は右片麻痺中等度あり、失語にて通院訓練の継続を要する」と記しています。またカルテには、整形医が「温熱療法、物理療法」と指示、リハビリ医が脳血管障害に対し「ファシリテーション・基本動作訓練・体操指導」と指示しています。行政が言う「適正な受診」とは、どのようなものなのでしょう。
 国が定めた生活保護担当職員配置基準数は「受給世帯八〇世帯あたり一人」です。これを長崎市にあてはめると、ワーカーは一二二人必要です。しかし、現状は八三人で、一人あたり一一七世帯を担当。受給者に優先度を付け、保護費を渡す際の面接や、月に一度の訪問も行っているようですが、半年以上訪問のない世帯も。受給者の状況が十分掴めず、寄り添い型の自立支援・生活指導や援助の不十分さがうかがえます。改善は急務です。
 しかし一方で市は、長崎新幹線建設許可に伴い、イベント施設や新庁舎・公会堂建設を検討中で、まさに箱物行政。行政は「(生活保護は)受診を控えてあたり前」と言っていいのか、あらためて考えさせられています。

(民医連新聞 第1591号 2015年3月2日)

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