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2015年4月21日

コミュニケーション不全を改善し安全文化の醸成を 第7回 医療安全交流集会

 全日本民医連は三月一四~一五日、都内で第七回医療安全交流集会を開き、全国から約三〇〇人が参加しました。同集会は二〇〇三年から二年ごとに開催。各地のとりくみを交流し、学習と議論を深めています。

 一日目の全体会では、野田浩夫・全日本民医連副会長の開会あいさつに続き、医療安全委員長の根岸京田理事が問題提起。患者の高齢化に伴う介護度の上昇、医療費抑制政策の下での人的・物的資源の制約と時間的圧迫など、医療全体のエラー発生要因は増大していると指摘。そのうえで「チームSTEPPS研修のブラッシュアップ」「医療事故の多くがコミュニケーション不全などノンテクニカル領域で起きていることの自覚」「安全文化の重要性の再確認」「全国のすすんだとりくみの交流から安全文化醸成の具体化」の四つを、本集会の目的として掲げました。
 つづいて大阪大学附属病院中央クオリティマネジメント部の中島和江部長(教授)が「医療チームの安全を支えるノンテクニカルスキル~スピークアップとリーダーシップ」と題して講演。中島さんは、自動車工場とERを例に、「医療の現場は、患者の状態、チームの状態など“同じ場面は二度とない”特徴がある」と指摘。「チームにはリーダーシップとフォロワーシップがあり、チームメンバーそれぞれが力を発揮し、助け合うことが大事」と、医療事故をはじめ山岳遭難事故や航空事故などの具体的事例を紹介しました。
 講演を受け三五班で討論。医師の意識改革(安全研修や安全推進活動にどう巻き込むか)、ノンテクニカルスキルの導入と活用、成功事例の評価と共有などについて議論しました。

警鐘事例から学ぶ~分科会より

 二日目は、「チームSTEPPS導入期研修(初級入門編)」「警鐘事例から学ぶもの」「多職種による医療機器安全の向上をめざして」「認知症における暴言・暴力対応」の四テーマで分科会を行いました。
 「警鐘事例から学ぶもの」では、全日本民医連の伊藤真弘理事が警鐘事例収集事業の概要を報告。近年の報告件数の減少に触れ、収集事業のあり方や各事業所でのとりくみについて注意喚起しました。
 東久保隆理事は「副作用モニターから見えた医療課題」と題し、本紙でも掲載している副作用モニターについて分析。最近の特徴である「超高齢」「低体重」の事例は今後増加すると予想。一方、治験は二〇~六〇歳代が対象で、臨床で初めて明らかになる副作用もあること、低体重の患者へは過剰投与になりやすく注意が必要だと強調しました。抗生剤投与後五分間のモニターを忙しい現場でどう実現するか、議論を呼びかけました。
 その後、「麻酔科領域の警鐘的事例」(北海道・勤医協中央病院/高桑良平医師)、「ERのリスクマネージメント~マイナーエマージェンシーから学ぶもの~」(東京・東葛病院/後藤慶太郎医師)、「循環器領域の警鐘事例」(東神戸病院/遠山治彦医師)の報告が。
 高桑氏は、大腿骨折で手術した九三歳の女性が死亡に至った事例を紹介。今後への教訓として、低体重(二六・五kg)にもかかわらず抗血小板剤を通常量服用していた問題や、術前の休薬が十分でなかった点、合併症の評価、術後のICU入室などを挙げました。
 後藤氏は、「診断の見逃し」「検査編」「結核見逃し事例」「暴言・暴力対応」の四項目で報告。「診断の見逃し」では骨折しやすい小児と高齢者の事例を示し、二方向での撮影など「単純X線の読影・2の法則」を紹介。「診断しにくい時も『折れていない』と言わず、『痛みがひどいなら再受診を』と説明し経過を見れば、見逃しやトラブルを回避できる」と話しました。
 遠山氏は、「循環器疾患の診断の遅れは致命的な結果を招く恐れがある」として、二事例を紹介。一つは、リハ職員が異常に気づいて指摘したがリハ継続の指示が出て、四日後に再度リハ職員が指摘して診断・治療となった事例でした。多職種で良好なコミュニケーションを実現するには、「指示系統のトップの医師がスタッフの意見を取り入れるスキルを身につけること」と強調しました。
 参加者との質疑応答では、「パート医との意思疎通に苦慮している」「インシデントの把握と継続は重要だが、それだけではだめ。何を見いだし、どう共有し、職場の安全文化の向上につなげていくかが大事」などの議論がありました。

(民医連新聞 第1594号 2015年4月20日)

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