医療・看護

2015年7月21日

フォーカス 私たちの実践 褥瘡回診の効果 愛知・千秋病院 チームで褥瘡に向かい看護の質、社会が見えてきた

 愛知・千秋病院では、二〇一二年から褥瘡(じょくそう)回診を始めています。回診メンバーを固定化したことで処置が統一できました。また、情報共有も行き渡ったことで看護の質の向上や、職員の褥瘡への関心の高まりにつながりました。第一二回看護介護研究交流集会で、二年間のとりくみをふり返りました。同院看護師・谷口美鈴さんの報告です。

 千秋病院では、二〇一二年九月から褥瘡対策チームを作り、褥瘡回診を始めました。褥瘡への関心の薄さと電子カルテの導入が契機でした。
 それまでは、毎月の褥瘡報告書への記載は深さや大きさを記入する程度で、十分とはいえないものでした。電子カルテの導入に伴い、褥瘡の治癒経過の評価と重症度も予測できるDESIGN―Rを使用することに。計測や記入方法を見直す必要が出てきました。また、毎回同じメンバーが診察し統一した指示をするために、メンバーの固定化も必要と考えたこともチーム結成の要因です。

回診の流れ

1600_01 褥瘡回診名簿に基づき、週に一度回診を行っています。褥瘡のある患者は、全員回診の対象。職員は褥瘡を見つけたら、褥瘡対策チームの看護師に報告し、褥瘡回診名簿に反映します。メンバーは、医師・管理栄養士・薬剤師・言語聴覚士・看護師。
 回診では、カンファレンスを行いながら処置などの指示を医師が出します。診察結果は電子カルテに記入するだけでなく、名簿にも記録して各病棟に配り、情報共有をします。
 褥瘡の計測は二週間ごとです。電子カルテ内でDESIGN―Rを利用して評価をします。「病棟褥瘡報告書」の作成は一カ月単位。これは委員会で報告します。問題点や困難事例を議論し対策を考えます。また、褥瘡担当看護師「病棟リンクナース」を配置し、DESIGN―Rの指導や褥瘡学習会の開催など、中心的役割を担っています。

 スタッフの関心高まる

 回診を開始して以降、病棟から確実に報告が来るようになり、信頼できるデータが集まるようになりました。治療のための情報共有もスムーズになり処置が統一され、治癒率も九%から一三%へ向上しました。
 「褥瘡が良くなっていくのが分かるようになった」「同じ医師が継続して診るようになり、経過を熟知した上で指示が出る」「リンクナースが学習会を開いて、スタッフの関心が高まっている」と病棟看護師。看護の質も向上しています。
 今後の課題は、なぜ褥瘡ができたのか、「振り返り」ができていないことです。月に一度リンクナースも参加した褥瘡カンファレンスを行い、何が問題だったのかを検討し、褥瘡ケアの向上を図ることを目指しています。同時に、この評価・分析が予防につながるよう、引き続きデータをとり続けます。

 社会的背景も気になる

 入院前にその患者が「どこでどう生活していたのか」を職員は意識するようにもなりました。自宅で療養していた患者が大きな褥瘡を作って入院するケースが、以前より増えた印象があります。そんな時「介護のマンパワーが足りているか? 介護サービスがきちんと受けられているか?」と、社会的背景にも注目をします。
 実際に、ほぼ寝たきりになっていたのに、介護サービスの知識がなかったために申請すらしていない患者さんにも遭遇しました。徐々に体調が悪くなりながらも自宅でほぼ寝たきりで過ごし、発熱したため受診すると、大きな褥瘡ができていることが分かりました。入院して褥瘡を治療しつつ、介護サービスを受けられるよう調整し、退院しました。
 褥瘡を通して、看護の質と社会が見えてくると感じています。

(民医連新聞 第1600号 2015年7月20日)

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