民医連新聞

2015年7月21日

民医連新聞1600号 私たちはこう読んでいます

 民医連新聞は、今号で一六〇〇号を迎えました。民医連で働く仲間を“つなぐ”新聞として一九六三年に誕生。全国からの通信や各地の実践、医療・介護をめぐる動き、社会情勢など幅広く発信しています。民医連新聞がどう読まれているか、どう作られているか、作り手トークも交えて紹介します。

読み合わせ3年 広がる発見 ―山口・生協上宇部クリニック

 山口・生協上宇部クリニックは、外来診療と訪問診療を行う診療所です。毎週民医連新聞で学習を行っているとのこと。七月六日の回を取材しました。
 毎週一回、午後の診療が始まる前の一五分間を使い、医師、看護師、事務と薬局の薬剤師が集まり学習会をします。職員が交代で気になる記事を選び、議論します。
 取材日の参加者は九人。事務の井上理恵さんが六月一五日号の六面「フォーカス」の愛媛生協病院の身体拘束を見直したという記事を取りあげ、自身の父親が入院して拘束された体験から、「本人のためとはいえ驚いた。もがく父を見ていられなかった」と語りました。
 「医療現場が拘束に慣れてしまっているいま、見直したことは素晴らしい」と馬場洋明所長が口火を切りました。
 「毎日拘束されるのはどんな気持ちだろう?」「暴れるのは拘束されているせいでは?」など患者目線の意見も出ました。そして「動いてしまう理由があるのでは? と考えることもあるが、余裕が無い」、「オムツに排泄し、そのままベッドで数時間すごすという新入職員研修をしている病院がある」など現場の職員としての意見交換も。そして、「忙しさを正当化するのではなく、患者さんの身になって考えて拘束を少なくしていくことが大事」とまとめました。

■   ■

 読み合わせを始めたのは三年前。「きっかけは、民医連医療や看護を語り継ぐ先輩が異動でいなくなったことです」と宮本紋子師長。そこで、配られても「ゴミ箱直行」だった「民医連新聞」を見直しました。(1)社会情勢や全国の民医連の活動を知る、(2)民医連の職場で働いていることを自覚し、モチベーションを高める、(3)民医連医療、看護や民医連活動を語り継いでいける職場作りをめざす、が目標。
 当初は担当者が興味を持った記事を読み、感想を添えるだけでしたが、最近は民医連新聞が届くと率先して紙面を開くように。記事に関わることを事前に調べ、パネルや資料も追加して議論する時もあるほど。「知らなかった発見があり楽しい」、「ここで働く魅力を感じている」、「世の中の事に関心を持つようになった」、「読み合わせることで職種間のコミュニケーションが良好になっている」、という反応が出ています。
 馬場医師は情勢、看護師は医療、事務はコラムに注目することが多いそう。民医連の月刊誌『いつでも元気』の記事を取りあげることも。
 「気張って難しい情勢だけを語ろうとせず、身近な記事にも注目しています」と三浦由華事務長。無理に民医連らしい意見を言おうとしない、堅苦しくない雰囲気が長続きの秘訣です。
 「若手職員には難しく感じる『民医連新聞』ですが、身近な話題から読み合わせすることで発見があり、拒否反応はなくなりました。民医連の魅力を語れるようになってほしいです」と馬場医師は語っています。(田口大喜記者)

気軽に広げて 佐保川診療所

 【奈良発】当診療所では月に二回、申し送りの最後に「民医連新聞」の読み合わせをしています。始めは会議で読み合わせをしていましたが、半年ほど前から申し送りでの読み合わせとなりました。
 冒頭に事務長が、今号にはどんな記事が載っているか、紹介します。その後、記事を一つ選び、読み合わせます。記事は簡潔にまとめられていて分かりやすいです。その後、気軽に感想や意見を出し合います。憲法や介護保険の学習会に行った人はその話を、薬剤師は薬の話などをします。話が脱線することもしばしばですが、職員のコミュニケーションもとれて、雰囲気はとてもいいです。
 読み合わせを始めてから、平和の記事、原発の記事、社会情勢、介護、医療の事、薬の副作用の話など、民医連新聞は医療・介護の現場で働く私達の教科書なんだと気付きました。
 これからも読み合わせを続けていきます。(舛田左智、事務)


■紙面に期待すること□

 民医連新聞には、紙面へのご意見を寄せていただくモニター制度があります。読者なら誰でも参加できます。毎号評価を送ってくれるモニターさん2人に聞きました。

岡山・オレンジさん
 私たちが知らない情報や参加できなかった集会をとりあげていて、紙面を通して知ることができます。全国からのとりくみの様子や読者のコーナーを見て、心が温かくなることもあります。
 紙面を見ると、文章や内容だけでなく、配置や色使いにもこだわっているのが伝わります。これからも読者の知らない情報をとりあげて欲しいです。

三重・津生協病院 村木貴代美さん
 毎月、第1、3月曜日を心待ちにして、久しく年月が過ぎました。「北から南から」の通信で広く全国の方々の活動を知り、学び、こんなにもたくさんの仲間が民医連を支えていることに、力がみなぎる思いでいます。
 これからも、力強い記事を心より期待しています。

民医連新聞の紹介

発行日…第1、第3月曜日
体裁…タブロイド8ページ
発行部数…約7万2000部
1面はホットな話題
2面は組織の動き
3面は学習
4-5面は特集
6面は現場の実践
7面は読者のページ
8面は取材記事・紙上討論
全国から寄せられる通信は年間1000通を超えます。クロスワードパズルも人気で毎回150~200人の応募が。両方とも編集部の宝。
*Twitterのアカウントもあります @minshinbun
フォローしてください!


作り手トーク 編集部4人が語り合いました。

つちや:この春、入職4年目で苫小牧から出向してきました。専門的な業務の編集部に出向者も配属されるとは思っていなくてびっくりしました。
たぐち:僕は昨年、北九州の病院から来ました。全日本で医事をするとは思わんかったけど、記者になるとは。「民医連歴3年の僕で良いのかな」と最初は思った。
きのした:取材、記事書きからレイアウトまで全てやるからね。でも全日本民医連の機関紙やから民医連職員が作る意味があるねん。
まるやま:2人とも来てから2カ月くらいで1面に記事を書いたじゃない。それができるのは民医連職員の感覚を持っているからこそ。私は他紙からの転職組。取材で患者さんの話ばかり聞こうとして、現場から来ていた同僚に「職員のとりくみも取材せえよ」と指摘されてハッとした。
つ:作り手は民医連職員でいいと言っても、写真の顔の向きが左か右かで紙面での配置も違うとか、ルールがたくさんあって!
た:紙面ひとつひとつに労力をかけている。何ひとつ無駄な記事は無いっちゃ。難しい問題をわかりやすくして、最新の情勢を学ぶ良い資料だと思います。現場では読者のひろばと8面のエッセーくらいしか読んでなかった僕が言うんやから、ぜひ読んでほしい。

き:仕事で気をつけていることは何?
た:取材では皆さん本気で語ってくれるんです。その熱さを冷まさず、そのまま記事にして伝えたい。
つ:僕は「読み手を意識して論文を書け」と大学時代に言われてきたので、それを改めて意識したいと。
ま:現場の人が「うちでもやってみよう」と思えるように、具体的に伝えたい。
き:現場の仲間に少しでも役立つような紙面にしたいね。

き:失敗も。取材先でカメラのバッテリーが入ってないと気付いたり。
ま:大学の先生のインタビューの時、「録音します」と言った後に録音機がない! 先生が「私のを使いなさい」と貸してくれて助かった。
た:弁護士のデモを取材に行ったのに、撮っていたのは違うデモだったことが。途中で気がついて追いかけたけど、すでに解散した後で…。

き:印象に残っている取材は?
た:沖縄のたたかいです。僕、3回取材に行ったんですが、全国が団結してひとつの目標に向かってとりくむ民医連運動を象徴してると思いました。
ま:水俣病検診ですね。職員が船で離島に渡り、公民館にビール箱とかシーツで工夫して診察室を作っていた。最後の一人まで被害者を救おうという民医連に感動。
き:東日本大震災かな。地震発生の1時間後には山陰の県連から「支援の準備できたから指示待つ」と連絡が。各地からみんな陸路で向かった。一方その時、被災地では大変な混乱の中、「必ず支援が来るから、踏ん張れ」と励まし合っていたと後から聞き、涙が出た。お互い顔も知らんけど「いのちの平等」の綱領でつながっている民医連だからこその姿だと。

き:出向で来ている2人は、帰任までにどんな取材をしたい?
た:学生時代のバイトの経験から、「ブラック企業・バイト」に興味があります。僕らの世代はその状態を普通と思い込まされていて、最後は「使い殺される」というのは許せないですね。
つ:「子どもの貧困」です。自分も奨学金がなければ大学に行けなかったし、現場では、お金が無いから子どもの進学を諦めさせたという話を聞いたこともあって。一児の父でもありますし。
き:皆の成長が紙面に直接反映していくねん。引き続き、仲間や患者さんに心を寄せて、がんばっていきましょか。

(民医連新聞 第1600号 2015年7月20日)

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