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2015年7月21日

相談室日誌 連載396 SOSを出せない親子のケースで考えたこと(新潟)

 「財布に二〇〇円、家に残っている缶詰を食べて生活している」。息子さんの訴えをきっかけに、Aさん親子に関わることになりました。
 Aさん(八〇代)は息子さん(六〇代、無職)と二人暮らし。自宅前で転倒し自力で起き上がれなくなりましたが、一週間家で寝ていました。息子さんが親戚に相談し発覚、入院となりました。大腿骨の骨折でした。
 Aさんは結婚後間もなく夫と死別。子育てをしながら夫の家業(銭湯)を継ぎましたが、経営が立ち行かなくなり閉鎖。跡地を貸駐車場にして、その収入で生計を立てていました。息子さんは仕事が長続きせず、次第に飲酒量が増えていきました。
 三年前からAさんは鍋を焦がすなど、目が離せなくなりました。息子さんはAさんを日中見守るため、夜勤のアルバイトへ転職。しかし朝から飲酒するようになり、Aさんが酒代を渡さないと暴力をふるうこともありました。
 入院してから、Aさんが重度認知症であることが分かりました。息子さんも、口頭で伝えたことを覚えていられず、必要事項は紙に書く必要がありました。Aさんも息子さんも、駐車場を誰に貸しているのか、年金額も貯蓄額も分からない状況でした。家は物が散乱し、猫が自由に出入りする状態。息子さんと一緒に通帳を確認し、Aさんの年金(一カ月で三万円)があることはわかりましたが、残高は一四五円。息子さんの保険証も短期保険証でした。生活保護を申請し、入院中に決定。Aさんは介護老人保健施設へ入所となりました。
 生活保護の申請と同時に、市の保健師が息子さんに関わり始めました。自宅訪問、受診勧奨などを継続してもらっています。
 相談室では、Aさん親子のように、行政の関わりなど何の支援にもつながっておらず、入院を機に課題が発覚するケースが多々あります。
 年々減らされる年金、申請しなければ使えない生活保護制度や介護保険制度。希薄になっていく地域のつながり。その中で、どう早期にSOSサインを掴むのか。病院を含めた地域の体制づくりが求められていると感じています。

(民医連新聞 第1600号 2015年7月20日)

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