HPH

2015年11月3日

日本HPHネットワーク結成 「健康なまちづくり」「幸福・公平・公正な社会の実現」掲げ35組織で

 一〇月一七日、東京都内で日本HPH(Health Promoting Hospitals & Health Services)ネットワーク(略称‥J―HPH)結成総会と結成の集いが開かれました。発起人、関係者など約一二〇人が参加しました。全日本民医連はヘルスプロモーション活動を重視し、日本の主な病院団体・学会などに積極的な参加を呼びかけてきました。(丸山聡子記者)

 国際HPHネットワークは、一九八六年にWHOがヘルスプロモーションについて定義したオタワ憲章にもとづき、その実現をめざす組織です(一九九〇年発足、四三カ国の約九〇〇の病院・施設が加盟)。J―HPHは同ネットワークに加盟する日本国内の三五病院・施設で構成し、患者、職員、住民の健康水準向上をめざし、住民や地域社会、自治体等とともに、健康なまちづくり、幸福・公平・公正な社会の実現をめざします。
 発起人は、日本病院会の堺常雄会長、全国自治体病院協議会の邉見公雄会長、日本プライマリ・ケア連合学会の丸山泉理事長、日本ヘルスプロモーション学会の島内(しまのうち)憲夫会長、佐久総合病院の伊澤敏統括院長、千葉大学の近藤克則教授、日本医療福祉生活協同組合連合会の藤原高明会長理事、全日本民医連の藤末衛会長の八人。結成総会では、CEOに島内憲夫氏、日本コーディネーターに千鳥橋病院の船越光彦副院長のほか、運営委員と監事を選出しました。

“健康水準向上”へ連帯を

 結成の集いでは、日本病院会の堺会長が開会あいさつ。「高齢化社会の先進国である日本がめざすのは地域包括ケアの充実であり、ヘルスプロモーション活動を通じて健康の向上を実現すること。これはHPHのビジョンと合致します。私たちがなすべきは、国民ひとりひとりの安心・安全の暮らしを担保することです」と述べました。
 出席した発起人があいさつ。
 全国自治体病院協議会の邉見会長は、「今日を機に、自治体病院や公立病院、厚生連などとともに広くとりくんでいきたい。医療と教育がなかったら、社会は立ちゆきません。身体の健康以上に精神分野も大事です。ネットワークに期待しています」と語りました。
 佐久総合病院の伊澤統括院長は「健康は平和の礎」という故若月俊一医師の言葉を紹介。「この言葉を噛みしめないといけない重大な時代です。世界では戦争が絶えず、日本では経済格差が広がり、特に若年労働者は、生活のためには健康も、場合によっては命さえかまっていられないひどい状況です。医療者が連帯し、『健康と命が大事だ』と広めるために力を合わせましょう」と話しました。
 日本医療福祉生協連からは、会長理事の代理として高橋淳理事が出席。「自己責任ではなく、健康の社会的決定要因へのアプローチが大事です。HPHに参加し、連携をすすめたい」と述べました。
 全日本民医連の藤末会長は「目の前で困っている人のみならず、全ての人を救うことが社会保障の原点」と強調。岩手・沢内村や佐久総合病院での地域医療に触れ、「こうした歴史を引き継ぎ、健康格差の広がりや、無差別平等の地域包括ケアの実現などの課題にとりくむことに、HPHの現代的意義がある。皆さんと大きく育て、世界に発信したい」とスピーチ。

この日を“始まりの日”に

 WHOからは、アレックス・ロス氏(神戸センター所長)が結成を祝う来賓あいさつ。国際HPHネットワークのハンヌ・ターネセンCEOのビデオメッセージ(別項)、中華台北と韓国のHPHネットワークのメッセージが紹介されました。
 島内CEOは、J―HPH結成までのいきさつを紹介し、「結成が日本の保健医療への大きなメッセージとなることを期待します。職場、学校、病院、そして地域でヘルスプロモーション活動が展開されることで、本来の目的が達成されます。夢はあなたの明日をつくる。ともに夢の実現にとりくみましょう」と呼びかけました。
 HPH活動についての報告が三本。「HPHの紹介」、「佐久総合病院におけるヘルスプロモーション活動・地域活動」、「埼玉協同病院のHPH実践」でした。
 閉会に、日本プライマリ・ケア連合学会の丸山理事長があいさつ。「公平・公正な医療とは何か。国籍にかかわらず日本に暮らし、働く人たちの真の安心・安全の保障は何か。医療とは何者のものであるか、この三点を医療者は常に省察し、すすまなければなりません。後に『あの日が始まりであった』と思えるような組織になるか。私たちの努力にかかっています。現場の活躍と優しい気持ちに期待します」と結びました。


〈メッセージ〉
皆さんの知恵を世界へ(要約)
国際HPHネットワークCEO・WHOCCセンター長ハンヌ・ターネセン

 日本の会員数は35組織。結成初日から、世界で5番目の規模のネットワークです。
 2度のHPHセミナー開催で訪問した日本では、福島原発事故被災者の避難所や病院で、自治体と活動する姿に感銘を受けました。そうした知識や経験の交流こそ、国際HPHネットワークの活動の柱です。
 世界が抱える問題の一つに、高齢化の問題があります。日本は世界でも平均寿命の長い国です。国際HPHネットワークも、高齢者人口グループが保健分野に及ぼす影響や負担増の研究をすすめています。
 皆さんのすばらしい知恵をぜひ世界にも伝えてください。

(民医連新聞 第1607号 2015年11月2日)

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