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2015年11月30日

「辺野古埋め立て承認」は誤り “あきらめない”覚悟を広げよう  第三者委員会委員 桜井国俊さんに聞く

 沖縄県の翁長雄志知事は一〇月一三日、辺野古新基地建設を阻止するため、前知事による「辺野古の埋め立て承認」を取り消しました。ところが国は、二七日にこの取り消しを執行停止し強引に基地建設を進めています(表1)。埋め立て承認の審査内容を検証し、今年七月に「承認には法的に瑕疵(間違い)がある」との報告書を翁長知事に提出した「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」のメンバー、桜井国俊さん(沖縄大学名誉教授)に話を聞きました。(聞き手・新井健治記者)

 まず、皆さんに確認していただきたいのは、国といえども都道府県知事の許可なしに、勝手に海を埋めることはできません。ですから、事業主体の沖縄防衛局は沖縄県の許可を取ろうと、二〇一三年三月に埋立願書を提出。仲井眞前知事は同年一二月に「公有水面埋立法」に基づき願書を承認しました。
 同法第四条第一項の一号から六号に承認の要件があります。承認するには要件のすべてに適合することが求められます。このうち、辺野古の埋め立てに関係するのは、一~三号です。
 埋立願書を審査したのは県海岸防災課で、一~三号のいずれにも適合すると判断しました。しかし第三者委員会は、海岸防災課の審査は適切に実施されておらず、一~三号のすべてにおいて法的に瑕疵があるとの結論に至りました(表2)。報告書は県のホームページで公開しているので、参考にしてください。

表1

表2

辺野古にこだわる説明がない

桜井さん

桜井さん

 また第三者委員会は、「埋め立ての必要性」についても検証しました。公有水面埋立法は一九七三年の改正で、埋め立ての必要性が明確に証明されない限り認めない「埋め立て抑制法」に変わりました。沖縄防衛局は法の趣旨に基づき、埋立願書とともに「埋立必要理由書」を県に提出しています。
 埋立必要理由書は、埋め立ての必要性について「普天間基地の危険性除去」「代替施設が必要」と説明していますが、そもそも、なぜ移設先が他の場所でなく辺野古なのかについては、全く説明していません。論理が飛躍しているのです。
 また、同理由書は普天間基地の国外・県外への移設が適切でないことについて、(1)抑止力論(2)地理的優位性論(3)一体的運用論などの三点を挙げていますが、これについては事前に県が疑問を提示。ところが、海岸防災課は、県の質問に沖縄防衛局が答えていないことを見過ごしていました。
 さらに森本元防衛大臣は二〇一二年、普天間基地の移設先について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると沖縄が最適の地域である」と証言しています。大臣自らが辺野古にこだわる必要性を否定したにもかかわらず、適合と判断した海岸防災課の審査は誤りです。承認の過程で法的に瑕疵があるなら、これを正すのが法治国家です。

工事を止める手法

 翁長知事の承認取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査請求をおこない、併せて取り消しの執行停止を公有水面埋立法を所管する国土交通大臣に提出。国交大臣は執行停止を決定しました。
 執行停止は行政不服審査請求の裁決がおりない限り効力を発揮します。裁決の期限はありません。おそらく、国交大臣は永久に裁決を出さないでしょう。その間に沖縄防衛局が工事を進め「海を埋めてしまえば県民はあきらめる」というのが国のもくろみでしょう。
 全くむちゃくちゃな話です。行政不服審査法は、行政から不利益を受けた民間を救う法。国の一機関である沖縄防衛局が、県を訴えるなんて法の趣旨を逸脱しています。
 しかし、基地建設工事を止める方法はこれだけではありません。埋立願書には設計概要しか記していないため、今後、実施設計の段階で設計変更の必要が出てきます。設計を変更するには、知事の承認が必要です。承認をしなければ、工事が止まる可能性があります。
 ほかにも、工事を止める手立てはいくつもあります。県土保全条例の変更も、そのひとつ。既存の同条例は、民間事業者が県内で三〇〇〇平方メートル以上の土砂採取をする際に県知事の許可を求めていますが、これを行政に適用することは可能です。そうすれば、辺野古周辺での土砂採取に環境保全の観点からブレーキをかけることが可能となります。 
 また文化財保護法を根拠に、名護市教育委員会と沖縄県教育委員会が、辺野古沿岸部の文化財を調査する方法もあります。調査が終わらなければ工事はできません。国の卑怯なやり方にも、決してあきらめない。あきらめない覚悟を広げるうえでも、第三者委員会の報告を学習することが大切です。
 辺野古に新基地ができてしまえば、今後二〇〇年は海外侵略の出撃拠点になります。私たちが加害の側に加担するとともに、沖縄が攻撃のターゲットになる。七〇年前の沖縄戦と同じく本土防衛のための捨て石です。そんな基地を子や孫に残すことは、決してできないのです。
 辺野古埋め立て承認は法的に間違っているとの確信を全国に広げるとともに、その根っこには安倍政権の非民主主義的な姿勢があることを全国の皆さんと共有しながら、新基地建設を阻止する運動を広げていきたいと思います。

いつでも元気 2015.12 No.290

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