いつでも元気

2016年1月30日

いきいきシニアライフ(2) 現代葬儀事情 その1 本人が望み、遺族も納得する葬儀とは

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表。ファイナンシャルプランナー

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表。ファイナンシャルプランナー

 「葬儀やお墓の費用が高すぎる」「金額の根拠が不透明だ」といった社会の批判が強くなりました。また、伝統的な葬儀や墓地に対する市民の考え方も大きく変化しています。今回は現代の葬儀事情について解説します。
 最近は葬儀をせずに火葬場へ直行する「直葬」が三〇%を超えるようになってきました。高齢で兄弟や知人も既にこの世になく、見送りに来る人がいないとの理由や、生活が苦しくて葬儀費用が捻出できないといった背景があるようです。
 また、職場や地域の人間関係が希薄になったことから、「家族葬」や「密葬」も増えています。祭壇も従来よく使われていた「白木祭壇」が減り、華やかな「花祭壇」が多くなりました。さらに「無宗教葬」が一割を占めています。こうした変化に対応して、葬儀社も大会場を小会場に仕切り、少人数の家族葬に対応できるようにしています。
 都市部では亡くなる人も多く、火葬場が対応しきれなくなっている地域もあります。そのため、亡くなってから一週間後でなければ火葬ができない事態も起きています。ご遺体の一日の保管料は五〇〇〇円~一万円で、一週間だと三~七万円ほどかかります。

葬儀を巡るトラブル

 こうした変化は都市部に顕著ですが、地方では旧来のしきたり通りという地域もあります。都市部の葬儀のやり方が地方にいるおじ、おばとのトラブルの元になることも。「夫が生前言っていた通りに無宗教葬にしようとしたら、夫の兄弟が大反対。私は“夫の意志だから”と強行した。数年後に義妹の葬儀があり、夫の兄弟からまた文句を言われた」と、ある主婦が苦い経験を話していました。私が受けた相談事例のひとつです。
 葬儀は非日常のうえ、遺族にとっては辛い時であり、戸惑ったりトラブルが起きるもの。自分が元気なうちに正しい知識や情報を得て、事前に家族や親族と話し合うこと。残された遺族が困らないように、「自身が望む見送りの仕方を書き残すこと」がカギを握ります。“エンディングノート”はこのためにあります。

お墓は必要なのか?

 昔は集落が総出で葬儀を取り仕切り、家族は故人を偲んで数日、喪に服しました。これを「もがり」(通夜)といいます。続いて遺族を先頭に集落の人々が葬列を組んで「野辺の送り」をおこない、墓所に穴を掘って土葬します。土葬の上には故人が悪霊となって出てこないよう、竹を組み鎌を置いていたようです。
 貴族や武士など権力者は墓石などをつくりましたが、庶民には墓石はなく、功績のあった人や金持ちだけ他の場所に記念碑を建てたようです。
 今日のような宗教葬やお寺の墓が増えたのは、幕府が江戸時代中期に仏教寺院に人別帳(戸籍)を作らせたことが始まり。庶民の宗教葬や墓はたかだか三〇〇年程度の歴史です。
 墓の下に遺骨を埋葬するようになったのも、疫病の蔓延を避けるという衛生上の理由から、明治政府が法律で火葬を強制して始まったものです。最近まで土葬をしていた地域もあるようです。

葬儀の本来の目的は?

 現代の葬儀で大切なことは、習慣や形式にとらわれず、本人の「誰にどういう見送りをしてもらいたいか」との思いを尊重すること。また、「遺族や友人、知人が故人の生きた歩みを偲び、故人の思いが後世につながるような、皆が良いお見送りができたと思える」ような形式でおこなうことだといえるでしょう。
 遺族は悲しみや喪失感を抱えながらも、葬儀の準備をすすめなくてはなりません。良いお見送りができたと思えれば、悲しみや喪失感を和らげることもできると思います。

葬儀の種類

 葬儀の名称は基準が定まっていません。私見ですが、表のように形式や会葬者に応じて分類してみました。「宗教葬」は前半が宗教儀式で、後半は告別式からなっており、宗教儀式を外せば「無宗教葬」となります。
 会葬者の範囲によって分類すると、職場関係、友人・知人、近所の方も参加する「一般葬」、親族だけの「家族葬」、親子だけの「密葬」と分けて呼んでいるようです。
 無宗教葬にすると時間を持て余すように感じますが、工夫次第といえます。故人の現役時代の話を職場の同僚や友人に、幼少のころの逸話をおじやおばに話してもらうなど、親族も会葬者も故人の人となりや生きた歩みを知ることで、葬儀が意味深いものになります。
 ただし檀家寺にお墓がある場合は、宗教儀式をしなければ埋葬を拒否されるので注意が必要です。社葬や団体葬、また仲間がお別れの会を開くような場合は、たいていは家族だけで静かに葬儀を済ませています。
 私の知り合いの遺族は「父の葬儀は無宗教葬にしました。友人や兄弟の思い出話のおかげで、自分も親の生き様を初めて知り、改めて親の想いを感じて感謝することができました」と安堵して話していました。

葬儀の種類
形式での分類
宗教葬  宗教儀式+告別式
無宗教葬 告別式のみ

会葬者での分類
一般葬 親族・職域・地域
家族葬 親族のみ
密葬 親子のみ

葬儀の費用は?

 気になる葬儀の費用についてですが、平均で一九八万円といわれています。直葬なら一四~一七万円という葬儀社も出てきました。一日葬で三〇万円、家族葬なら四〇万円など“相場”はさまざまです。
 ただし、こうした費用には通夜の食事代、会場費、返礼品などは含みません。五〇~六〇人の会葬者の一般葬なら、お寺の費用を除いて総額一〇〇~一五〇万円でしょう。葬儀費用については、次回で詳しくお伝えします。

 

いつでも元気 2016.2 No.292

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