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2016年2月2日

被ばく相談窓口をつくろう 民医連のセミナーから(1)

 東日本大震災に伴って起きた東京電力福島第一原発事故から間もなく五年。放射線の健康被害への不安や生活再建の困難をさらに悪化させるような賠償打ち切り方針など、事故被害者に背負わされた問題は、軽減するどころか深刻さを増しています。全日本民医連は被ばく相談活動の強化を提起。被ばく相談とは何をすれば良いのか? 昨年九月に初開催した「被ばく相談員セミナー」での雪田慎二医師(被ばく問題委員・精神科医)の講演概要を連載します。

はじめに 「心の感度」をあげる

 冒頭、雪田医師は写真や新聞記事を示し「自分の活動の意味をいつも思い出せるよう、こうした資料を大事にしている」と語りました。事故後初めて全日本民医連が福島を視察し、「屋内退避」を命じられた三〇km圏内に入る際、防護服の警察官の検問に感じた緊張(二〇一一年三月二七日)、放射線量が高いために復旧作業ができず、二〇一三年になっても被災した姿のままの富岡町…。
 紹介した記事は原発事故被害者に関するものでした。自主避難者向け無償住宅の打ち切りや自民党が賠償の終了を提言するなど帰還の「押しつけ」がすすめられていること。原発労働者の実態や福島の子どもの甲状腺検査の結果なども紹介し、ひきつづきフォローが必要だと再確認しました。

福島を「風化」させない

 最初に私が写真や新聞記事を紹介したのは、福島の「風化」が問題になっているからです。広域避難した原発事故被害者の健診や相談活動を粘り強く続けている県連・事業所も多くありますが、「風化」は民医連でも例外ではありません。例えば福島問題の勉強会やセミナーに以前ほど人が集まらない事実があります。福島の問題をもう一度、正面から考えるとりくみが必要ではないでしょうか。
 全日本民医連が原発問題学習パンフレット『被害者に寄り添い いのちと人権を守るために』を改定したのはそうした問題意識もあります。改定したパンフレットは、若手職員にも分かりやすい一冊になったと思います。普及して、民医連内外で学習していただければと考えています。
 また、風化させないための努力の一つとして、全日本民医連は福島でのフィールドワークを一五年春から始めています。三、六、一一月と三回行い、若手職員中心に参加があります。

行動の基盤にあるもの

 フィールドワークで大事にしているのは「見て、聞いて、感じて、考えて、行動する」ことです。
 私はここで「感じて」という点を強調したいのです。感じるとは「こころが動く」ということです。色々な被災者・被害者の声を聞かせてもらい、現地を見て、様々なニュースに触れる中で、そのつど自分のこころを動かして関心を持って見ていく。それが結局、行動につながっていきます。
 「感じる」とは「こころの感度をあげる」こと。それが相談活動の第一歩です。このことを最初に強調しておきます。
 次回から、パンフレットの中身に入っていきます。

(民医連新聞 第1613号 2016年2月1日)

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