いつでも元気

2016年3月31日

いきいきシニアライフ(4) 現代葬儀事情 その3 費用平均は200万円 終活ノートの活用を

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表ファイナンシャルプランナー

徳田五十六
ライフデザイン社会保障研究会代表ファイナンシャルプランナー

 前号で、葬儀の概要・日程・会場について述べました。今号では葬儀当日の運営体制について紹介するとともに、葬儀費用の解説をします。

葬儀当日の運営体制

 喪主や親族代表を決めます。無宗教葬の場合は、職場の同僚や友人、知人、親族のうち、昔話や思い出話をしてもらう担当者を決めます。
 香典返しと会葬礼状、献花の受付と扱い方も決めておきます。斎場ではなく自宅で葬儀をおこなう場合は、テントや机など受付の準備が必要です。

食事数を事前に発注

 葬儀には飲食接待がつきもの。「通夜振る舞い」や、火葬後におこなう初七日法要後の「精進落し」があります。あらかじめ参加人数を予想しておかないと、実際の参加者より多く発注してしまい余計な費用がかかります。
 遠方から親族が参加する場合は、宿泊や最寄り駅から斎場への送迎バスなどが必要になることもあります。葬儀社には寺院への謝礼を除き、全体の見積もりを出してもらいます。予算に照らして内容を判断し、納得がいかなければ再検討しましょう。

葬儀のお知らせ

 生前に葬儀の案内をする対象者の名簿を用意しておきましょう。名簿がない場合には、職場関係者、友人、知人、親族、ご近所など、遺族が判断して連絡することになります。都市部では、ご近所には知らせない人も多くなりました。
(注)会葬案内の範囲を極端に狭めてしまうと、後々、線香をあげに来訪者が一年以上も絶えず、遺族が対応に苦慮した例もあります。

葬儀費用

 葬儀費用総額は全国平均で一九九・九万円です(表1)。内訳は、葬儀一式が一二六・七万円、飲食接待費四五・五万円、寺院謝礼五一・四万円です。総額は八一〇万円から二〇万円までと格差が大きく、消費者センターに苦情や相談が増えています。
 最近は直葬(通夜や葬儀を省き、火葬のみ)で一〇~一七万円、一日葬(通夜を省く)で三〇万円、家族葬(身内のみでおこなう)で四〇万円の葬儀社もあります。ただし、これらの費用の中には飲食接待費や寺院謝礼、火葬費用、斎場費は含まれていないので注意が必要です。
 一般的に五〇~六〇人が参加する葬儀で、寺院謝礼を除き一一〇万円(都市近郊)~一五〇万円(都心部)になります。ここから香典を差し引けば、出費は一〇〇万円前後でしょう。なお、火葬費用や飲食接待費の支払いは現金で、その場で払うことが原則です。
 葬儀費用は地域や葬儀社によりさまざま。契約前と打ち合わせ終了時には、葬儀社に総額の見積もりを出してもらうことが大切です。葬儀は人の一生を締めくくる一大事業です。形式や風習、見栄えにとらわれず、身の丈の予算で故人の生き方や人となりを偲び、心からお見送りができる内容にしましょう。
(注)銀行の個人口座は、本人の死亡により閉鎖され、家族といえども遺産分割協議書がなければ現金を引き出すことができません。銀行が本人の死亡を知るのは、家族の通知があった場合です。

表1 葬儀費用の平均値

葬儀一式 126.7万円 (最高500万円~最低20万円)
寺院謝礼 51.4万円 (最高189万円~最低1万円)
飲食接待費 45.5万円 (最高450万円~最低1.5万円)
葬儀費用総額 199.9万円 (最高810万円~最低20万円)

 ※一般財団法人「日本消費者協会」調べ(2010年)

(注)それぞれの合計は合いません。地域差が大きいので参考程度にしてください

残された期間を輝いて生きる

 終活の本来の目的は、いずれ迎える死を受け止め、これまでの生き方を見つめ直し、残された期間を目標を持って自分らしく輝いて生きることにあります。
 葬儀やお墓の準備に加え、医療や介護、終末期の暮らし方、相続など幅広い情報が必要で、自分の人生を締めくくることは容易ではありません。
 死を迎える準備は、自分らしく生きる権利でもあります。高齢期に輝いて生きるために、エンディングノートに願いや希望をしっかり書き残し、家族に負担をかけないようにしましょう。

エンディングノートは2冊

 たんすの奥にエンディングノート(以下ノート)をしまってしまい、「万が一」の時には役に立たないこともあります。ノートは「緊急対応用」と「相続遺言用」の二冊に分けて準備しましょう。
 重い病気になったり、介護が必要になった時から、多くの人は表2のように三つの段階をたどります。
 病気や介護から終末期、葬儀までは緊急対応用ノートに書いたうえで、気に入った遺影用の写真を貼って誰でも目の付く場所に置きましょう。納骨や相続、お墓の選択などは別のノート(相続遺言用ノート)に書き、保管します。
 次回はお墓について解説します。

表2 エンディングノートの書き方

■病気や介護が必要になった時
救急医療の選択、医療と介護の選択、成年後見制度などの活用
⇒緊急対応用ノートに記載
■終末期
終の棲家、終末期医療の選択、葬儀の内容
⇒緊急対応用ノートに記載
■葬儀後
納骨、相続、墓の選択、各種契約(健康保険、年金など)の打ち切り、ペットの処遇など
⇒相続遺言用ノートに記載


読者はがきから

 このコーナーに寄せられた読者の質問に徳田さんがお答えします。

質問 火葬場への搬送は、家族でもできるのですか?
答え 搬送そのものは家族でもできますが、火葬場では納棺されていないご遺体は受け付けません。納棺には末期の水に始まり、湯灌、死化粧、死装束など「納棺の儀式」が必要で、通常は納棺師という専門家が担当します。なお、誤解がないように付け加えますが、直葬とは納棺の儀式を済ませたうえで、葬儀を経ないで火葬場に搬送することです。
質問 散骨はできますか?
答え 違法とはいえませんが、森林などでの散骨を条例で禁止する自治体が増えており注意が必要です。通常は宗教法人が持つ墓地で、樹木葬や散骨などの形をとっておこなわれ、二〇~三〇万円の費用がかかります。

いつでも元気 2016.4 No.294

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ