介護・福祉

2016年9月6日

11 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [冨田秀信] 働くほど出資増える

 介護保険は要介護度ごとに使えるサービスの限度額が設定されている。妻は要介護5、限度額は38万5000円(当時)。だから、ヘルパー派遣とデイなどの通所施設でのサービスはこの範囲でなければならない。月曜から金曜まで、毎朝8時にヘルパーさんに来てもらう。それまでに起床、トイレ、洗面を終え、出勤の私とヘルパーさんがチェンジし、私が作った朝食を妻に食べさせ、9時前のデイ送迎を待つ。送迎車が来たらそれに乗ってデイ施設へ。午後4時半過ぎまで過ごし、5時に送迎車で帰宅。それまでに私が帰宅しておく必要がある。
 この形で1カ月経過すると、要介護5のサービス限度額はほぼいっぱいになる。逆に言えば、平日私が午後5時までに帰宅できず、ヘルパーさんを利用したり、土曜日や日曜日にデイ通所やヘルパーさんをお願いすると、限度額オーバー。つまりオーバー分が自己負担、すなわち10割負担となる。
 例えば、午後6時まで神戸の職場で仕事して、急いでJRで帰宅しても8時になる。その場合は、5時から8時までの3時間のヘルパー利用で、夕方5時にデイから帰ってくる妻の世話と夕食作りなどをやってもらう。これが月曜から金曜まで5日間、つまり3時間×5日間=15時間、1カ月間(4週)続くと×4週=60時間。
 この60時間が全て10割負担となるとどういう金額になるか? 17万5000円! これは仮定の話ではないのだ。当時の実際の請求書は残してある。限度額の枠内なら利用料は一割負担で、3万8500円。この限度額と自己負担(10割負担)の金額を思い知らされた。
 神戸~京都の遠距離通勤とはいえ、午後6時まで勤務していたら、毎月の薄給と同じくらいの金額が支払いに消える。手元に給料は残らない。「仕事をすればするほど、出費がかさむ」という皮肉な現実にぶち当たった。夕方5時には帰宅し、勤務時間をセーブしつつ、業績を上げ、要介護5の限度額の範囲での暮らしと仕事の両立が求められた。


とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けている。神戸の国際ツーリストビューロー勤務。

(民医連新聞 第1627号 2016年9月5日)

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