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2016年9月20日

薬害根絶デー学習会の報告から HPVワクチン接種者追跡 検討を行って ―― 静岡民医連薬事委員会

 HPVワクチン(子宮頚がん予防)は二〇一三年度から国内で定期接種(公費)になりました。ところが重篤な副反応が集積し、厚生労働省は同年六月から積極的接種推奨を一時中止しています。全日本民医連も、接種した事業所に、医薬品副作用被害者救済制度の情報提供や、相談窓口の設置、接種者へのアンケートなどを呼びかけました。今年の薬害根絶デーの民医連学習交流集会(八月二四日)での、静岡民医連からの報告を紹介します。

 静岡民医連は一病院(八四床)四診療所、薬剤師二〇人の県連です。県内では一〇年六月に三島市で最も早く公費全額適用に。県連薬事委員会がサーバリックスとガーダシルの採用を決めたのは一二年七月です。接種者アンケートは厚労省が接種推奨を中止して約一年後の一四年七月に行いました。また薬剤師集団で学習し、医師の意見も集め、検討しました。

接種者アンケートの結果は

 全接種者の回答率は三七%でした。副反応は、回答者の接種回数総計の六七七回のうち、四四件(一七%)で発生していました。ほとんどが軽微で「注射部位の発赤」が最多の五九%、「手足の力が入りにくい」「筋肉痛」がそれぞれ一一%と続きました(図1)。
 副反応消失までは「二日以上一週間未満」が最多、次いで「一週間以上一カ月未満」で、消失期間がやや長い印象でした(図2)。
 気になる例が一例ありました。接種当時一二歳。一回目の接種二カ月後に頭痛やめまいが出現。状態悪化し、登校できなくなり、起立性調節障害の診断で他院に通院。三回目の接種を不安に感じた母親が別の医師に相談し、接種をすすめられたため、三回目を行いました。その後は悪化は報告されていません。主治医は直接診察していませんが「報告されている例をみれば、因果関係は否定できない」という見解でした。
 これを受けて開いた薬剤師部会でHPVワクチンをめぐる問題を取り上げました。事前に、薬事委員が情報をまとめました。

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医師の意見も集めて

 医師にもアンケートをとりました。対象は常勤一〇人と小児科二人。有害事象とワクチンの因果関係を「あり」と見る医師が六人と最多で、「分からない」が五人。副反応を「心身の反応」とする厚労省を肯定する意見は少数。また筋・神経組織の損傷などの可能性に言及した厚労省の見解のために問題の見落としが起きないか? という懸念も出ました。
 ワクチンを「効果なし」と見る医師はいませんが、有効性は「分からない」が最多。効果を見るには数十年のスパンが必要です。
 「欧米の報告では差がないように見える」「発現期間や内容が広範囲すぎる」や、「接種者に思春期が多いことの反映ではないか」という意見、性教育の啓蒙や「第二の薬害エイズ事件」にしないように、との意見も出ました。
 静岡民医連の対応には一部「討議不足」との声も出ましたが、当時の状況では仕方がなかったという意見が大半でした。今後の接種については「要望があれば」「全日本民医連の見解に任せる」「他の医療機関の動向をみる」など慎重です。

薬事委員会の強化

 県連ではこれを機に、医師が二年間不在だった薬事委員会の構成を見直し、医師が委員長に。現段階ではHPVワクチンは推奨していません。病院の薬事委員会も定期開催になりました。
 今後は、個々の薬剤師が社会的背景も踏まえた薬剤情報を収集評価できる力を持ち、それを医師に伝えるしくみの構築と、さらに他職種にも薬害の加害者にならぬための啓蒙が必要と考えています。

(民医連新聞 第1628号 2016年9月19日)

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