医療・看護

2016年9月21日

【声明2016.09.16】高薬価の仕組みにメスを入れ、誰もが安心して健康保険で治療が受けられることを求めます~高薬価の医薬品を口実にした差別医療に反対します~

2016年9月16日
全日本民主医療機関連合会 会長 藤末 衛

 今年4月4日の財政制度審議会財政制度分科会での國頭英夫医師(日本赤十字社医療センター化学療法科部長)による「癌治療のコスト考察;特に肺癌の最新治療について」の報告をきっかけに、マスコミや医療団体・関係者から抗がん剤オプジーボ(一般名ニモルマブ)に関して多くの発言がなされています。
 オプジーボは2014年7月4日に根治不能な悪性黒色腫に対して承認され、その後非小細胞肺がんにも適応が拡大されました。財政制度分科会のなかでは、「体重60kgの肺がん患者がオプジーボを使えば薬剤費だけで年間1人約3500万円になる。対象となる患者の半数(5万人)がオプジーボを使用すれば、この1剤だけで年間医療費が1兆7500億円増加する」との試算が示され、「日本の医療保険財政が破滅する」との意見もだされました。そして破滅回避のために、「『適正』薬価」、「『適正』使用」と合わせて「総量規制」をあげ、高額療養費の見直しや投与対象の年齢制限にも議論が及んでいます。

● 所得の格差がいのちの格差にならないよう、安全で有効な治療はすべて健康保険で
 保険医療財政の破たんを理由に高薬価の医薬品を保険給付からはずせば、混合診療に道を開くことにもなり、高額な自己負担を支払える人だけしか治療を受けられないことになります。また年齢によって給付範囲を制限すれば、年齢による差別を医療に持ち込むことになります。高額療養費制度廃止の意見もありますが、日本の医療の一部負担金は現役世代で原則3割、高齢者でも1~3割であり、ヨーロッパなどと比べると極めて高額です。この制度をなくせば、所得の格差がそのままいのちの格差につながります。
 高薬価の医薬品を理由にした国民皆保険制度破壊は許されません。安全で有効な治療はすべて健康保険で提供されるべきです。保険医療財源が不足する場合には、保険給付の制限ではなく応能負担を原則にした財源の確保を行うべきです。

● 高薬価の仕組みにメスを
 医療保険の適用となる医薬品の薬価は、中央社会保険医療協議会(中医協)が決めています。オプジーボのような、類似薬のない新薬の場合は、原価計算方式という方法で薬価が決まります。この方式は、製薬企業が申告する製品製造(輸入)原価に対して一定の比率で経費や利益を積み上げていきます。問題なのは、製品製造(輸入)原価は製薬企業の申告によるものであり、その根拠を検証する仕組みがないことです。こうした不透明な薬価算定ルールにメスを入れ、適正な薬価にするためにも薬価算定ルールを見直すことを求めます。
 また診療報酬改訂に合わせた薬価改定を待たずに、適応症の拡大に合わせた薬価再算定のルールをつくることを求めます。

以上

PDF版

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ