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2016年10月18日

フォーカス 私たちの実践 認知症ケアの向上 山形・至誠堂総合病院 全職員が「認知症サポーター」に挑戦

 至誠堂総合病院では、認知症の知識を深めたケアの向上をめざし、職種を問わず全職員が学習にとりくんでいます。看護師の犬石里香さんが第一二回学術・運動交流集会で行った報告を紹介します。

 超高齢化社会をむかえる中、認知症対策は最重要課題のひとつです。厚労省が呼びかけた「認知症を知り地域をつくる一〇カ年キャンペーン」では、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを市民の手で展開する「認知症サポーターキャラバン事業()」などがとりくまれてきました。
 至誠堂総合病院には退院支援の必要な患者が多くいます。利用者が後期高齢者で、認知症を合併しているケースが八割にのぼります。しかし、全職員が顔を合わせる研修などで「患者への接し方に個人間で差が大きい」、「忙しく、配慮に欠けてしまうことがある」との指摘が多く出て、認知症の正しい知識を持って支援する必要がありました。
 これは、全職員でとりくむ課題だと考え、同院では二〇一四年から、「全職員が認知症サポーターの取得を目指す」を目標に学習を始めました。

図

80%超がサポーターに

 まず看護部の担当者を中心とした四人(看護師三人、事務一人)が「認知症キャラバン・メイト養成研修」を受講しました。四人は、院内での認知症サポーター養成講師として活動。全職員三一八人中二六五人(八三・三%)が、DVD学習などを含めたプログラムで講座を受講。三カ月のうち四回開かれる講座のいずれかに出席してもらい、全員が認知症サポーターになりました。未受講者についても随時受講をすすめています。
 また、医師三人、看護師三人、事務三人、リハビリ技師五人が、同じく厚労省が実施する医療従事者向け「認知症対応力向上研修」に参加し、院内・各部門の委員やリーダーとなり活動しています。また医師一人が「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を受講しています。

ケアの課題もみえる

 受講者の感想文から今後の課題も明らかにしています。
 医師を含む全職員から積極的な参加があり、関心の高さがうかがえる一方、事務からの感想文の提出率は低く、患者との関わりが少ない事が影響しているとみられます。
 「普段の看護を振り返ることができた」、「地域・家族に置き換えて考えることができた」という意見も多く、今後のケアの指針が明確になった職員が多くいました。
 日常的な高齢者への関わり方に活かすと共に、これを機に認知症へのとりくみを続けることが重要だと多くの職員が感じています。
 また、スペシャリストとの連携と育成も急務です。当院は認知症を専門とした科はなく、週一回で外部から精神科医の支援を受けています。「認知症ケア専門士」、「認定看護師」など、より高度な知識を習得できる環境を整えることも、高齢者への医療の水準を上げるうえでの課題です。

「ありがとう」が聞こえる

 職員の働き方にきわだった変化はまだ見られませんが、患者からの接遇に関するクレームは減り、「温かい支援をありがとう」など、感謝の声が増えました。
 認知症に対する情報の共有ができる有効なとりくみでした。今後も、明らかになった課題への対策を講じながら、「認知症サポーターの医療者」として、自信を持った対応をめざします。

(民医連新聞 第1630号 2016年10月17日)

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