MIN-IRENトピックス

2016年10月31日

本当のたたかいは地元で 沖縄・東村高江 
全国支援始まる

政府は沖縄県民の民意を無視し、沖縄北部の東村高江地区で米軍のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事を再開した。
沖縄民医連は戦争する国づくりを進める基地建設に反対し、毎週金曜日に高江での座り込み行動を開始。
全日本民医連は沖縄民医連とともに全国に呼び掛け、高江支援行動を始めた。
9月9日、民医連の集中行動日となる高江座り込み行動に同行した。

文・井口誠二(編集部) 写真・森住卓

建設現場への道を塞ぐ壁を前にした民医連の集中行動参加者

建設現場への道を塞ぐ壁を前にした民医連の集中行動参加者

 2カ月前の7月11日早朝、突然ヘリパッド建設現場へ資材搬入が再開された。参院選沖縄選挙区で、辺野古新基地建設や高江ヘリパッド建設に反対する伊波洋一さんが大勝した翌朝だった。
 政府は全国から500人もの機動隊員を沖縄に派遣し、建設に反対して座り込む人たちを排除。生活道路である周辺道路も封鎖した上で22日、建設工事再開を強行した。選挙で示された沖縄県民の米軍基地建設反対の民意は、踏みにじられた。

本当のことを知って

 全日本民医連の集中行動には、沖縄医療生協の組合員2人を含む20県連・36人が参加。沖縄協同病院(那覇市)から高江に向かうバスの車内で、沖縄民医連の比嘉直人さんが高江の現状を説明し、組合員の新城富秀さんと赤嶺典子さんが県民の心情を語った。
 「今の高江は酷い状況です。機動隊は殴る蹴るが当たり前。同じ日本人を虫けら同然に扱っている。私たちは、ただ平和に暮らしたいだけなのに」と語尾を震わせて話す新城さん。
 赤嶺さんは「多くの人が沖縄に2つの誤解を抱いています。1つは、沖縄は基地経済で潤っているという誤解。もう1つは、沖縄は振興策で莫大なカネをもらっているという誤解です。沖縄は予算の計上方式が他県と違うだけで、県民1人あたりの補助金は全国で6番目。決して飛び抜けてなんかいません」と訴えた。

しなやかな抵抗

 座り込みは、主要道路ではなく建設現場に続くあぜ道にテントを構えて行われていた。アスファルトの上に座り込むつもりでいた参加者はやや拍子抜けしたが、長く続く座り込みは負担が少ない方が良い。長い間、権力とたたかってきた人たちのしなやかな強さを感じた。
 建設現場に向かうと、沖縄防衛局が無許可で設置したフェンスと木製の壁が立ち入りを拒んでいた。隙間から覗くと警備員の姿も見え、座り込み行動者らがフェンス設置の説明を求めたが、返答はなかった。
 その後、座り込み行動から帰路についた参加者の上空に、突如資材を吊ったヘリが現れた。「住民を混乱に巻き込みたくない」と東村長が基地建設に関わる村道の使用を拒否したことで、陸送が困難になった国は資材や重機の空輸を決定。折しもこの日が、空輸初日だった。
 ただ見つめるしかない光景だったが、比嘉さんは「たたかいが陸路を諦めさせたんです。ある意味、私たちの勝利だと思いますよ」と励ますように笑った。

地図

住民無視の強硬建設

 高江のヘリパッド建設は、北部訓練場返還の条件だ。米軍からすれば、老朽化した基地から機能強化した新基地に移ることができる。辺野古新基地を併せると、これまでの陸・空の訓練から、陸・海・空が連携した理想的な海兵隊訓練ができる。しかも費用は日本持ちだ。
 一方、高江の住民からすれば、集落を取り囲むようにヘリパッドが新設され、中には民家から400mしか離れていないものもある。さらにヘリパッドは、危険なオスプレイの離発着訓練に使われると言う。返還のために負担が増す不条理を、住民は当然受け入れられない。
 ところが政府は住民に説明もなく、 2007年から工事を開始。説明なしの建設に反対し座り込んだ住民を、通行妨害で訴える裁判も起こした。既に2カ所のヘリパッドが完成し、米軍は本格的な訓練を始めている。
 飛行訓練は禁止協定のある深夜でも行われ、騒音で眠れない住民の中には、一家あるいは女性と子どもだけで村外に“避難”した家もある。

沖縄の問題ではない

 座り込みを支援している東村の伊佐真次村議会議員は「工事も500人の機動隊を支えているのも税金です。こんな税金の使い方は間違っていると、全国の人に当事者として声をあげてほしい。高江まで来るのが無理なら、地元でビラを配ったり、周りの人に話すだけでもいい」と訴える。
 新城さんや赤嶺さん、座り込み支援者も一様に「ここで見たこと、感じたこと、沖縄の現実を本土に伝えて」と話す。高江に限らず政府にとって望ましくない報道は、ごく限られたメディアしか放送しない。多くの人が知らされていない現実を、伝え広めて世論を作る。本当のたたかいは、地元に戻ってから始まる。
 東京民医連の米津圭人さんは「まずは身近な友人や家族に伝えたい。ここで見た人たちの必死さに応えたい」と話す。長野民医連で学生対策を担当する多澤弘貴さんは「現地に来た僕らと、僕らから聞く人の間には、色んな差がある。それを乗り越える工夫をして、学生に伝えたい」と決意を見せた。
 全日本民医連は、「沖縄県民の民意尊重と、基地の押し付け撤回を求める全国統一署名」への協力を呼び掛けています。ぜひご協力をお願いします。

いつでも元気 2016.11 No.301

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