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2004年卒後研修必修化…キミはどうする!?
基本的診療能力の獲得をめざして
北海道勤医協中央病院総合診療病棟のとりくみ
いよいよ2004年から卒後研修の必修化がはじまります。必修化に際して厚生労働省は、卒後研修の2年間を「医師臨床研修に専念し、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身につけるとともに、医師としての人格を涵養することが求められている」(医師臨床研修検討部会中間とりまとめ(論点整理))と位置づけました。民医連に加盟する病院・診療所では、これまで一貫して地域に近い医療機関という特色を生かし、プライマリ・ケアを重視した研修を実施してきましたが、さらに研修内容の充実をはかっています。メディウイングでは、今年度から総合診療病棟を立ち上げ、研修医の受け入れをスタートさせた北海道 民医連の勤医協中央病院をレポートします。
札幌市の東側、昔はあたり一面タマネギ畑だったところに、勤医協中央病院(415床)はあります。現在は病院の横を高速道路が走り、周辺は住宅の密集地になっています。
勤医協中央病院は、2002年4月より総合診療病棟を新設しました。臨床研修病院として研修教育機能を充実させ、同時に地域のニーズにこたえる、開かれた病院をめざしての開設です。
総合診療の病棟は全部で64床。肺炎や心不全、ネフローゼ、糖尿病、膠原病、胃ガンなど実にさまざまな疾患を抱えた患者さんが、診療所や地域の開業医から紹介されて入院してきます。
総合病棟では現在10名の研修医が(1年目8名、2年目2名)研修をおこなっています。研修指導は10年目〜20年以上の医師経験をもつ、ベテラン医師5人が担当しています。指導医と研修医の間には、3〜5年の経験をもつシニア研修医が3名おり、いわゆる屋根瓦方式で指導にあたります。教える医師も、教えられる研修医もお互いに学び合いながら研修の充実をはかります。
■ 1日のはじまりは 朝回診と新患紹介
午前8時、総合診療病棟の指導医と研修医、総勢18人が病棟詰め所に集合。忙しそうに動き回る看護師さんを横目に、簡単なミーティングをおこないます。その後、2つのグループに分かれて入院患者さんを回診します。研修医たちは1人ひとりの患者さんに声をかけながら、病状や治療状況をチェックする指導医の質問にもハキハキと答えます。 医局での朝会の後は病棟内のカンファレンス室で、昨日入院された患者さんの入院経過、主訴、既往歴、身体所見、治療方針、鑑別診断などを主治医が報告する「新患紹介」がおこなわれます。研修開始から半年、プレゼンテーションする研修医の姿もすっかり板に付いてきました。
■クラスター単位の 指導体制
旭川医大を今春卒業した河野龍平医師は、4月のオリエンテーションを経て、5月から約4ヶ月循環器の専門病棟で研修をおこない、9月からは総合診療病棟での研修をはじめました。
「病棟が変わって緊張しています。初めて病棟に配属されたときの気分を思い出しました」と河野医師。さっそく入院してきた患者さんの主治医となりました。
患者さんが入院してくるまでの時間を利用して、指導医の杉澤憲医師(93年卒)から病棟のシステムや、検査伝票、各種書類、レントゲン写真やビジブルの場所など、病棟の基本的な説明を受けます。
現在、総合診療病棟では、研修医をA〜Dの4つのクラスター(房の意:グループ)に分けて、いわゆる「屋根瓦方式」の指導・研修をおこなっています。河野医師はCクラスターに所属。指導医の杉澤憲医師を筆頭に、本城信吾医師(5年目)、中田幸夫医師(1年目)、河野医師の4名で1つのクラスターを構成しています。5人の指導医は常に最低でも一人は病棟にいる体制をとり、グループを超えて研修医の質問に答えたり、患者さんを一緒に診ながら指導にあたっています。
■
主治医としての 責任は重大
河野医師が担当する患者さんは、61歳の女性で、入院時の病名は「腹痛、体重減少、子宮癌の手術後」となっています。今回は、腹痛と腹部膨満感の精査・加療のため入院となりました。
河野医師はさっそく情報収集。医療面接と身体診察を始めます。
面接では、初めて相対する患者さんとしっかりとした信頼関係をつくりながら、身体の状態はもちろんのこと、家族構成、職業歴など、くわしく聞き取らなければなりません。
さらに身体診察では、頭のてっぺんから足の先までくわしく診察。とくに症状のある腹部は入念にチェックをおこたらないようにします。
総合診療病棟では指導医の指導の下で、研修医も主治医として患者さんを受け持ちます。主治医として医療に関わることが医師としての成長につながるのです。そのためには指導医をはじめとするスタッフのサポートが重要になるのは言うまでもありません。総合病棟には指導医はもちろん、ときおり他の病棟の医師も姿を見せて医師たちの相談にのっています。
「後輩に質問されても、結論までは答えられない時もあり、困りました。だけど一緒になって患者さんを診察したり、本を開いて調べたりしてます」。
シニア研修医として研修指導にあたる本城医師は卒後、出身大学の麻酔科に入局し、大学での4年間で麻酔科標榜医を取得しました。現在総合病棟で内科研修をおこないながら麻酔科4年間の経験を生かして、患者さんの急変時の対応や、帯状疱疹などの慢性疼痛管理などのアドバイス、病棟内でおこなう各種手技の指導に熱が入ります。
■患者さん中心の チームの中で
総合診療病棟での研修の1週間
月
月
火
水
木
金
土
午前
病棟
病棟
病棟
病棟
病棟
病棟
午後
カンファレンス
MGH(*)
病棟
世代の時間
病棟
病棟
病棟
リエゾン
カンファレンス
病棟
夜
3水7(*)
術後検討会
3水7(*)
医局会議
内科木研会(*)
3水7(*)
3水7(*)
※病棟単位の時間帯では、交代で救急研修をおこないます。また、クラスターごとのカンファレンスも随時おこなっています。
*MGH(Case Records of The Massachusetts General Hospital)
毎週月曜日の16:30〜17:30に“The New England Journal of Medicine ”より指導医が交代で出題し、各自で英文を訳して症例検討をおこないます。(英文は前の週に配布)進行方法は、指導医、シリア、1・2年目の研修医の3つのチームにわかれ、鑑別疾患や検査方法、予想診断をチーム内てディスカッションし、全体にプレゼンテーションをおこないます。
*3水7 サンスイセブン
北大総合診療科の前沢政次教授の呼びかけで、道内で総合診療科を開設している北大と札医大、勤医協中央病院総合診療病棟の3者で、毎月第3水曜日午後7時から、合同症例検討会を北海道民医連会館で開催しています。各病院より、症例を交番制でもちより検討会を重ねており、日常診療にも役立てています。医学生の参加も可能です。
*内科木研会
内科の医師がおこなっている自主的な勉強会(各科で実施)。CCやCPC、抄読会などをおこなっている。
看護師さんからは、経済的に困難なため入院費用に不安を抱いていること、子宮癌の術後で「再発したのでは」と思いこみ抑うつ状態になっていることなどの情報提供がありました。河野医師は収集した情報をもとに、治療方針について指導医や担当の看護師と相談します。
入院費用については相談室に連絡し医療ソーシャルワーカーの力を借りることにしました。また、入院時の検査については、血液検査など必要なものはひととおりおこなうとして、その後の検査については費用負担を相談しながらおこなうことにし、費用負担の資料を医事課の事務の方にお願いしました。
このように一人の患者さんを中心に、その患者さんの問題点を解決するためにいろんな職種がチームとして関わっているのは、民医連の医療機関の大きな特徴です。
末期癌など予後のきびしい患者さんには、医師や看護師以外の他職種も交えて「臨床倫理4分割法」を用いたカンファレンスをおこない、患者さんの意志や家族の思いを大切にしながら治療方針をたてていきます。また、2週に一度は精神科の医師を交えて、患者さんの精神的なケアについて検討するリエゾンカンファレンスもおこなっています。
患者さんをめぐって一番情報交換をし合うのは、やはり看護師さんたち。ときには意見がぶつかりあったり、ベテラン看護師さんから研修医が指導されるなどということもあります。
看護師の砂原ひづるさんは「雰囲気がとてもいいんです。指導医の先生たちは皆頼もしく、1年目の研修の先生たちも着実に成長しているのがわかります。研修の先生たちは、はたでみていても『すごく勉強しているなあ』と感心してしまいます。人柄も個性豊かで魅力的な人ばかりで、いいチームワークで仕事をすすめています。ここは可能性いっぱいの病棟なんです」と、目を輝かせます。
病棟の要、澤田幸子看護師長は、「スタッフと研修医、指導医との協力共同をどうすすめるか、いつも考えてきました。今、ようやく病棟全体の歯車がかみ合ってきました」とチーム医療が軌道にのり、医師たちの研修も前進していることを喜びます。
生きいきした病棟のなかで1人ひとりの医師が確実に研修し、成長しています。
■ 同世代で刺激しあい、 励ましあって
毎週火曜日の午後、夕方の時間帯を使って「世代の時間」がもたれます。河野医師は世代の代表としても奮闘しています。
この時間は、テーマを設定して、同期の研修医が持ち回りでチューターをつとめたり、各分野の専門医に講師をお願いして学習会をおこなっています。いままでのテーマは「EBMについて」「救急蘇生法」「糖尿病の治療」など。また、世代間の各種の連絡事項や、お互いの研修状況についてディスカッションなどもおこなっています。
最近の大きな話題は、同僚のY医師の結婚。世代全員で披露宴の発起人をひきうけ、しおりづくりや二次会の手配などで大変盛り上がったそうです。
1年目の研修医にとっては毎日が初めてのこと、分からないことばかり。ひとつひとつの仕事にも指導医の何倍もの時間がかかります。重傷の患者さんを受け持つと帰りが深夜に及ぶことも。主治医としての責任と日々の辛さに、つい弱音を吐きそうになるとき、支えてくれるのは同世代の仲間たち。互いによきライバルとして、ときには競いあい、ときには励まし合って切磋琢磨する人間的な集団がいるからこそ、頑張っているけるのです。
* 1…臨床倫理4分割法を用いたカンファレンス
総合診療病棟では、カンファレンスの際、臨床倫理4分割法を用いて、医師をはじめ看護師、MSWなど合同で行います。臨床倫理4分割法とは、@医学的適応 A患者さんの意向 BQOL C周囲の状況の4つの問題点にそって意見を出し合い、分析し、対策や今後の方針を決めていくカンファレンスの手法です。
* 2…リエゾンカンファレンス
糖尿病や肝疾患を抱えている患者さんなどでは、よくよく話を聞いたり、調べていく中で、アルコール依存が原因していることが多々あります。病棟で療養しているうちに、病気はよくなるが、アルコール依存は残ったままで退院しては、また病状を悪化させ、入退院を繰り返してしまいます。中央病院の精神科リエゾンカンファレンスは、毎月2回金曜日に2名の精神科医と臨床心理士が勤医協丘珠病院から参加して、総合診療病棟の医師・看護師スタッフに、色々と患者さんについて聞き出します。「アルコールの飲み具合は」「患者の家族構成は」「キーパーソンは誰ですか」などなど。病棟では訴えが多い患者さんに、スタッフが振り回されることがありますが、精神科リエゾンカンファレンスは、患者さん対応のカンファレンスだけでなく、総合診療病棟の医師・看護師スタッフチームをカウンセリングしてくれる場にもなっており、チームをまるごとサポートしてくれています。
若い医師たちのムーブメントが 総合診療を実現させた
尾形和泰 Kazuyasu Ogata
勤医協中央病院 総合診療教育部医長 1989年旭川医科大学卒
北海道民医連・勤医協中央病院では、この4月から総合診療病棟がオープンしました。その背景となった議論などを紹介します。
当院は開院以来20数年、大規模病院にありがちな臓器別の病棟構成で発展してきました。「患者さんのために…」と考えていても、どうしても縦割り・臓器別の、いわば「医師中心の医療」となっている部分も多々ありました。例えば診断名や患っている臓器がはっきりしないために入院する病棟が決まらないとか、ひどい場合には病院内で患者さんをたいへんお待たせしてしまうことすら起きていました。
卒後臨床研修もその中で受け入れていましたので、実際は臓器別・科別のローテーション研修となっていました。知識はたくさん身につけても、患者さんを全人的に捉えたり、患者さんの問題を解決する主治医能力を身につけることは、なかなかうまくいくものではありません。
そこで、患者さんを臓器や疾患で差別せず、丸ごと引き受ける病棟をつくろうというムーブメントが若い医師から起きました。それは地域の患者さんや近隣の医療機関の要求からも病院の在り方を考えていこうという当院の新しい方針とも合致し、総合診療病棟という形が実現しました。
研修医も、病棟スタッフも、患者さん中心の医療を学び、実践しながら、「医療の目標」を患者さんや家族と共有できるようにしたいと、そんな大きな目標を掲げて、この4月スタートしました。
研修医により近いところから 具体的なアドバイスを
浮田昭彦 Akihiko Ukita
シニア研修医・1998年弘前大卒 岩手民医連で5年間研修後、4月から1年間の予定で、総合診療病棟で研修中。
内科を中心に、さまざまな症例を経験できるという点でも、また、初期研修の改善に病院を挙げて取り組んでいる中で、研修医の教育に一緒に関われるという点でも、この総合診療病棟での研修は非常に楽しいものになっています。私は、シニアレジデントとして、十数年目の指導医のもとで2人の1年目の研修医と一緒に仕事をしています。総合診療病棟には、本当にさまざまな病気をもった方が入院してきます。僕自身にとってもはじめて見るものであることも多く、一緒に勉強させてもらっているとうのが本当のところです。1年目の研修医に対しては、病気についてアドバイスできることはわずかですが、病気で苦しんでいたり不安を抱えている患者さんやその家族への対応のしかたや、簡単なベッドサイド手技など、より研修医に近いところで、具体的にアドバイスできる立場にあると考えています。本当に研修医がこまっていたり不安に思っていることは、私自身の記憶からも、結構些細な事であることが多いので、そのようなちょっとかゆいところに手が届くような関わりができれば、と感じています。
研修希望者のみなさんへ
田村裕昭 Hiroaki Tamura 研修責任者
医師としてスタートするにあたって、最初の2年間が「一生のかたち」をつくる大事な期間だと思います。医師としてのものの見方や考え方、科学する心を、そして病める者と共感する姿勢を学んでほしいと思います。そのためには、人間性あふれる医療集団の中で、互いの姿勢を切磋琢磨することが、とても大切です。私たちの病院にはそんな人間的な医療チームが存在します。研修はけして楽ではありませんが、患者さんの立場に立てる医師として一緒に成長していきたいと思います。
focus interview
1年目研修医にインタビュー!
大学内にとどまらず、
いろんな臨床研修病院を見ることをおすすめします
この春から勤医協中央病院総合診療病棟で研修をスタートし、10月から循環器内科で研修に入る深谷進司医師にこれまでの総合診療病棟での研修を振り返ってもらいました。
編集部
オリエンテーションが終わって、総合診療病棟での研修はどうでしたか?
深 谷
はじめは夢中でやってましたけど、最近は余裕ができてきて、病棟には研修医が多いので、患者さんの取り合いですね。受け持ち患者さんは、3〜5人なのでちょっとものたりないかな。症例数が、1人あたりの医師に対して少ないので、回診の時には、他のクラスターの患者さんの経過版を注意深く見るようにしたり、カンファレンスなどで、患者さんの状態などを把握するようにしています。
編集部
1人ひとりの患者について、理解していくのは大変じゃないですか
深 谷
総合診療なので、肺炎から腹痛、癌、不明熱、リウマチ、などなど症例がばらばらなので、1個1個調べるのは大変でした。だけど、短期間で、消化器、呼吸器、循環器を一通りみれたのでよかったです。
編集部
病棟には同期の研修医仲間が7名いますけど、一緒に研修することについてはどうですか?
深 谷
自分と同じレベルで疑問を分かち合うことができたり、勉強している仲間の存在が、良い刺激になってたりしますね。
編集部
研修中感じた疑問などはどうしていますか?
深 谷
わからないことなど、今しか聞けないので、ためらわず聞いていますが、指導医だけじゃなく、他科の医師、シニア研修医も一緒になって、調べたり、考えてくれたりしますね。目指すは、指導医の田村先生ですね。
編集部
田村先生はどんな先生ですか?
深 谷
とにかく、知識の範囲が広い。自分の専門以外も、とにかくよく知っている。しかも細かいところまで。人間的にも尊敬しています。患者対応でも、患者さんに対して愛情があるんですよね。仕事としてというより、心から言葉が出てくるように感じるんです。
編集部
先生は学生時代、研究もやってみたいと考えていたと聞いてますが、臨床の現場はどうですか?
深 谷
臨床が思っていた以上におもしろくて今は研究のことまで頭が回りません(笑)。
編集部
印象に残っている患者さんはいますか?
深 谷
Nさんという70歳代の女性だったんですが、不明熱ということで入院されてきたんです。慢性関節リウマチもあって、一時はあぶないところまで、病状が悪化したんですが、もちなおして無事退院したんですけど。
編集部
結局、原因はなんだったんですか?
深 谷
関節の痛みを訴えるようになり、リウマチからくる痛みなのか診断に苦慮しましたが、結果は化膿性関節炎でした。指導医からも、「感染の患者さんは、ぱっぱとやらないと」と厳しくいわれましたが、いい経験ができました。
編集部
医学生にメッセージありますか?
深 谷
臨床研修が必修化されますが、自分の大学にとどまらず色々見た中で研修先を決めて欲しいですね。大学に残ることを決めた学生も、外の臨床研修病院を見たほうがいいと思いますよ。研修施設と研修を希望する学生とのマッチングもはじまるようですし、5年生の早い時期から動く必要があると思います。
編集部
ありがとうございました。
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