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民医連医療の記事

指定報告1/介護報酬改定に対する総合的な対応/福岡・健和会 在宅総合事業部事務局長 村本則行

 今回の介護報酬改定は、診療報酬とのダブル改定であり、その内容も医療制度・介護保険制度改革に対応したものとなっています。また、同時実施された診療報酬改定では、在宅療養支援診療所の創設、リハビリの算定日数上限設定、医療区分による報酬逓減制など、入院から在宅へ、医療保険から介護保険への誘導が明らかな内容となっています。

 この報告では、単に介護報酬改定の対応だけでなく、医療・介護保険制度の総改悪に対する総合的な対応という観点から、当法人の「医療・介護の複合的な取り組み」を紹介します。

 

在宅ケアセンターの位置づけ

 

 厚生労働省の最近の会議資料では、療養病床削減の受け皿として「在宅療養支援拠点」という概念が使われるようになってきました。厚生労働省のイメージでは、「在宅療養支援診療所」と、これと連携する介護事業所群を総称して「在宅療養支援拠点」としています。また、これらの資料では「自宅」だけでなく「ケアハウス、有料老人ホームなどの多様な住まい」も含めて「在宅」としていることにも注目しておく必要があります(図1)。

図1

 民医連の事業所では、すでに医療、介護の複合体としての取り組みが進められており、「医療機関に併設した介護事業所」というスタイルは特に珍しいものではありません。また、「在宅総合ステーション」として複数の介護事業所による介護サービス拠点の整備もすすめられてきました。

 私たちの法人では、このスタイルを一歩進めて、医療機関の「在宅医療部門」と「複数の介護事業所」をとりまとめて1事業所扱いとし「在宅ケアセンター」を整備してきました。このために「各事業所」それぞれに、「法人形態」や「ライン上の位置づけ」の違いがあっても、担当事務長を調整役として配置するなどして、共同の取り組みが行える「仕組み」をつくっています(図2)。

図2

 

「大手町在宅ケアセンター」の取り組み

 

 担当事務長を配置したケアセンターは、現在、法人内に2ヶ所あります。中でも「在宅専門」診療所と介護事業所の共同で、まさに「在宅支援拠点」としての活動を行っている大手町在宅ケアセンターについて少し詳しく紹介しておきます。

 大手町在宅ケアセンターは、 638 床の法人センター病院から少し離れた場所にある貸事務所の一室に入居しています。狭い部屋ですが、ワンフロアにすべての事業所が入っています。ヘルパーステーションは別法人の組織ですが、各事業所が対等に取り組みができるよう、法人の組織図ではケアセンターを1事業所として扱うこととしています(図3)。

図3

 

 大手町在宅ケアセンターの特徴は、診療所が外来診療を行わない在宅専門診療所であることです。このことで大手町在宅ケアセンターは、医師が配置されながらも在宅支援機能のみに特化した複合事業体となっています。

 大手町在宅ケアセンターのもうひとつの特徴は、地域の在宅拠点としての機能を発揮していることです。訪問看護ステーションの介護保険利用者のケアプラン作成事業所数は 24 事業所にもおよび、法人外の20事業所のケアプランに沿って活動しています。

 このように、大手町在宅ケアセンターは診療所も含めて在宅支援機能に特化していることや、立地的にもセンター病院から一定の距離をおいた場所にあるということもあって、今後も「地域の在宅支援拠点」として発展していく可能性を持っていると考えています。

 一方では、課題も多くあります。何より24時間の支援体制の「しくみ」づくりは、大変ですが重要な課題です。現時点では、やはり特定の医師、看護師の奮闘に負うところが大きくなっています。

 

住まいづくりの取り組み

 

 また、2006年度に当法人では300床の慢性期中心病院の敷地の一部を社会福祉法人に贈与して、ケアハウス、グループホームを建設しました。ケアハウスと病院は屋根付き廊下で結ばれ、厨房は病院内の職員食堂と兼用するなど、設立法人の違いを超えて連携した取り組みを行います。ケアハウスは本年10月にオープンしたばかりで実践はまだこれからですが、入居希望は予想以上に多くケアハウス、グループホームとも計画より早いテンポで満室となっています。医療機関に近接した高齢者の住まいに対するニーズの大きさを実感する経験となりました。

 

総合的な視点で対応を

 

 医療、介護制度の改革は、国民要求を無視し、財政の理論優先で強引に進められようとしています。私たちは医療難民、介護難民をださないためのたたかいの取り組みを強めると同時に、これへの対応として、今こそ医療、介護の複合体としての役割を発揮すべきときだと思います。

 在宅支援拠点の整備をすすめ、医療法人ならではの「住まい」の提供のあり方を創造していく必要があると思います。

 当法人の取り組みもまだまだこれからですが、社会保障制度の「総改悪」に対しては、そのたたかいと対応も「総合的」な視点をもってすすめることが重要であると考えています。