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全日本民医連 第36回定期総会 運動方針 |
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全日本民医連 第36回定期総会 運動方針
目 次
- はじめに
- 第1章 2年間のとりくみをふり返って〜課題と到達点(35回方針に照らして)
- 【総論】どんな2年間だったか
- 【各論】
- (1) 人権を守る医療活動と医療・経営構造の転換はどこまですすんだか
- (2) 医師の確保と養成はどこまですすんだか
- (3) たたかいと共同組織の強化はどこまで到達したか
- (4) 組織改革と団結の現状と課題
- (5) 個別分野のとりくみ
- 第2章 激変の情勢とわたしたちの基本的立場、たたかいの方向
- (1) 時代をどうみるか、時代認識と私たちのたたかいの方向
- (2) 平和、政治、医療・介護・社会保障をめぐる情勢
- 第3章 どんな民医連運動を築いていくのか〜50年の歴史を踏まえめざすもの
- 第4章 今後2年間の方針、次期総会までに達成をめざす重点目標
- (1) 平和と憲法を守るとりくみを強めよう
- (2) 「共同の輪」を広げ、医療・社会保障を守るたたかいを地域から巻き起こそう
- (3) 医療安全、医療の質の向上、医療・福祉の内容充実目指して
- (4) どんな事態にも耐えうる安定した民医連の経営基盤、体質を確立しよう
- (5) 「管理運営」と「医師問題」での飛躍をはかろう
- (6) 民医連運動を担う医師養成と職員育成の前進を
- (7) 「400万」共同組織、「10万」「元気」新たな峰めざして、この2年間の目標
- (8) 民医連組織の強化めざして
- おわりに
- 全日本民医連第36回定期総会
- 運動方針
- はじめに
- 激動の情勢の中、2004年2月、全日本民医連第36回定期総会を開催します。平和を守るたたかい、医療・社会保障を守るたたかい、そして川崎、京都問題への対応と、さまざまな課題を経験した2年間でした。こうした中、全日本民医連は団結を強め、たたかい、そして民医連の事業所を守り、発展させてきました。
- 第36期の2年間は、「戦争推進・市場競争原理至上主義※1」勢力と「平和・人権・非営利・協同」をめざす運動とのはげしい対決がますます強まります。戦争は「いのち」を最も粗末にする行為です。いのちを大切にし、「連帯し助け合う」社会の対極にあります。私たち民医連は憲法と平和を守り、国民の医療・福祉への要求、権利の実現のために、多くの医療関係者、国民と力を合わせて奮闘します。
- 第36回定期総会では、第一に、第35回総会方針に照らして、この2年間を振り返り総括すること、情勢認識を一致させ、今後2年間の活動方針を決定すること、第二に、第36期の全日本民医連の役員を選出すること、第三に、決算および予算、経営困難支援規定の決定、全日本民医連規約を改正することを任務とします。
- 第一章 2年間のとりくみをふり返って
- 〜到達点と課題(35回方針に照して)
- 【総論】 どんな2年間だったか
-
平和に生きる権利、医療を受ける権利が奪われ、「いのちの平等」が大きく崩されてきています。こうしたもと全日本民医連は有事法制反対、イラク戦争反対を正面にかかげ平和を守るたたかいを進めてきました。日本医師会など医療4団体(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会)などとともに、健康保険本人3割、高齢者医療定率負担、国保料値上げなど、患者、国民負担の大幅な引き上げに、反対、撤回をもとめ全力でたたかってきました。また共同組織の人びとや地域住民とともに受療権をまもるとりくみを粘り強くすすめてきました。史上初めての診療報酬、介護報酬の引き下げとあいつぐ医療・福祉改悪による経営への影響が大きく広がる中、医療・経営構造の転換をすすめ民医連経営を守るために、時に大胆に、時に粘り強く、奮闘してきました。民医連の加盟組織は1641ヶ所(2004年1月理事会現在)となり、史上最高の組織現勢に到達しました。介護事業をこの2年間で大きく伸ばしてきました。
- 1992年の第30回総会で掲げて以来10年の運動を経て共同組織が300万に到達しました。この2年間で16万の増加です。92年10月創刊した「いつでも元気」は5万部を超えました。2003年9月に東京で開催した第7回共同組織交流集会には2700人を超える共同組織の人びと、職員が集まり、大きく成功しました。この集会の成功は、安心して住み続けられるまちづくり運動が大きく拡がっていることを示しました。民医連の事業所を守り、地域で健康づくり、医療・福祉の運動をすすめる共同組織の存在は、地域の人々と私たちのかけがえのない財産です。
- この2年間、医療事故の問題が連日のように報道され、社会問題となりました。この問題では、国による調査も統計もないという遅れた状況があります。また、欧米の数分の一しかない医師、看護婦の人的配置水準(*1)という貧困な医療環境があります。医療事故をなくすには医療事故やニアミスの経験、教訓が公開され、広く普及され、再発防止につなげていくことが重要です。これまで日本では、「だれが起こしたのか」が問題視され、「なぜ起きたのか」「生かすべき教訓はなにか」の立場からの医療事故防止対策が抜本的に遅れ、国民の医療不信の一因(*2)となってきました。
- *1)肥田会長、八尾医真会・森院長らが医療事故問題で視察したスエーデンの県立南病院(South Stockholm General hospital)は530床に対し、医師607人、看護師1490人、准看護師780人などとなっている。
- *2)読売新聞(04・1・9)によれば、「自分や家族が医療事故に巻き込まれるかもしれない」と感じている人が「大いに」26%、「多少」51%、あわせて77%が「感じている」と答え、「医療機関は情報を公開している」との問いには「公開している」9%、「そう思わない」89%との世論調査結果を報道した。
- 全日本民医連は、早い段階から医療の安全性を「人権」の問題としてとらえ重視してきました。
- こうした経験を踏まえ、民医連は医療事故問題にとりくむにあたって、(1)患者の人権を第一におき、誠意をもって真実を告げること、(2)患者・家族を守ること、(3)徹底した原因究明、(4)再発防止、(5)情報公開を原則として確立し、実践してきました。この2年間に民医連の事業所で起きた医療事故への対応もこうした民医連の原則に沿ったものです。
- この2年間、民医連における医療安全のとりくみ、医療事故への対応は、大きな改善がはかられつつあります。2003年3月に開催した医療安全集会は今日の民医連の医療安全問題での到達点を示す画期をなす集会となりました。民医連は経験や教訓を内部に伝えるだけでなく、他の医療団体や医療機関に対しても、積極的に伝える努力をしてきました。私たちは、さらに国に対し、被害者救済制度の確立と再発防止を主とする第3者機関の設置を要望し運動をすすめてきました。また、医療安全を保障する診療報酬改善を求めて運動をすすめてきました。
- その一方で、川崎協同病院における「気管チューブ抜管・薬剤投与による死亡事件※2」、京都中央病院における「検査虚偽報告事件※3」は決してあってはならない事件でした。
- 川崎協同病院、京都民医連中央病院は自発的、自主的に問題を解明する立場を貫き、自ら公表しました。全日本民医連、当該県連はこのとりくみを全面的に援助してきました。「事件」は、これまで民医連事業所へ寄せられてきた信頼を大きく損なうものでした。多くの困難にも直面しましたが、自らの医療の安全性、医療の質的向上をめざし、正面から立ち向かい、自己点検と改善をすすめ教訓を発信してきました。この姿勢を貫いてきたからこそ、今日の改善が生まれていると確信しています。
- 自浄能力を発揮し、医療事件や事故問題の総合的な解決の姿勢に立てるのは根本において患者のいのち、人権を守ることを最大の使命とし、医学・医療の発展のために力をつくすという民医連綱領にもとづく日常の実践をおこなっていることに由来します。民医連内での医療安全のとりくみは大きな変化が生まれていますが、まだ緒についたところです。
- 医療事故、事件とかかわって、かってない民医連攻撃が展開されました。地域住民と深く結びつき、平和や医療・社会保障改善にむけてたたかっている民医連の存在を否定し抹殺しようとする意図を持った政権政党による組織的な攻撃でした。全日本民医連は、「医療事故、事件と私たち民医連の立場※4」の見解を明らかにし700万近いビラ・パンフレットを発行し医療関係者、国民に対し訴えてきました。民医連の見解に対して、患者さん、共同組織の方々、有識者、医療関係者、民主団体の中で共感と期待が広がっています。しかし、ことあるごとに、公明新聞や議会、住民運動を装った施設建設妨害運動など民医連攻撃は続いており、不当な攻撃には断固として反撃を行っていくことが求められています。
- このたたかいと情勢の激変のもとで、あらためて民医連運動とはなにかが問われました。50周年を機会に民医連や事業所の歴史を深めることを重視し、事業所・職場での医療・福祉宣言づくりの運動をすすめてきました。全国の約7割の事業所が作成、その後もとりくみがすすめられています。この「宣言」づくりの運動は自らの事業所、職場の役割や存在意義を問い直す機会となりあらたな力となっています。今後は、宣言を年度の活動方針や日常の運営に具体的に反映させていくことが求められています。
- また、管理運営の重要性も今までになく問われた2年間でした。大きな転換の時期には、我流やこれまで通りのやり方だけでは通用しません。目標と情報を共有し、決めたことをやりぬく組織づくりが重要です。民医連運動のロマンを語ることを含め、民医連運動・事業所の舵とり役である理事長、院長はじめトップ管理の管理水準を引き上げることが急務です。今期、管理運営の強化のためになにが必要か、課題整理をすすめるとともに、自らのとりくみを客観化・相対化するために第3者による評価を積極的に受けることを呼びかけました。全国の多くの病院で病院機能評価※5受審がすすみ、ISO※6取得や地協、県連での相互点検・診断も始まっています。これらのとりくみをいっそう強化しなければなりません。全日本民医連として、医師、看護、事務などトップ幹部を対象としたトップ管理者研修会を開始しました。
- 2004年度からはじまる新医師臨床研修制度の充実と民医連としての受け入れの準備をすすめ、民医連で研修を開始する医師が184名と90年代以降最高になりました。この2年間、民医連での医師養成に成功させることができるか、まさに正念場です。
- この2年間、医療改悪反対のたたかいや医療事故問題などの課題で、医師会はじめ4師会、病院関係団体や患者団体、学者、大学関係者、専門家、ジャーナリストとの連携を意識的に追及してきました。第6回学術・運動交流集会(以下、学運交)に参加したアメリカで活躍する著名な医師・著述家は「民医連の医療事故への真摯なとりくみを見て、日本の医療がかわりつつあることを実感した」「民医連でのとりくみに期待したい」と感想を寄せています。「より開かれた民医連」として、さらに共同を広げていかねばなりません。
- 経営困難に陥った法人・事業所への援助支援のありかたを定めた「経営困難支援規定(案)」を第3回評議員会で提起しました。この半年間の各地での討議を踏まえ、一部補強し提案しています。経営困難に陥った法人への支援は、対策委員会を設置しての具体的な指導や援助、人的派遣、資金面での支援など多様です。こうした規定を平時からきちんと整備しておくことは全日本民医連としての経営分野における危機管理の具体化であり、全国的な支援や連帯のあり方を規定化するものです。
- 全県連や多くの法人など162団体と若手の学者会員などの参加を得て「非営利・協同研究所いのちとくらし」(総研※7)が2002年秋に発足しました。この間、「診療・介護報酬のあり方」の委託研究や「アメリカの医療」などの公開講座、研究誌5号の発行など活動を開始しています。今後いっそう、学者・研究者と私たち医療・福祉の現場が一体となった調査・研究が必要とされています。
- 全日本民医連は創立50周年を記念して「写真で見る民医連の50年」「医療福祉宣言ビデオ」「私と民医連」の手記募集など記念事業、記念集会などを行いました。
- 今期、全日本民医連災害対策特別基金より水俣水害、宮城地震、宮古島台風、北海道台風・水害に当たり義援金を送り、全国的にカンパを募りました。またアフガニスタンとイラン地震に医薬品、義援金を送りました。
- 全国各地で平和運動、原爆症集団訴訟※8支援、ハンセン病裁判支援、医療改悪反対、歴史を探るツアーなどで奮闘する元気な青年職員のとりくみが見られました。こうしたとりくみを結集して2003年10月沖縄で「平和と民医連」をテーマに1000人以上が集い第30回全国青年ジャンボリーを成功させました。戦跡めぐりの説明役を果たすために、70名以上の沖縄の青年職員が何回も何回も学習を繰り返し、参加者は同世代のガイドのもとガマや基地を見学し、いのちの重み、平和の大切さを実感し、成長していった姿は感動的です。全国各地で学び、集い、連帯し、成長をする青年の姿に民医連の未来を見ることができます。
- 【各論】
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- (1) 人権を守る医療・福祉活動と医療・経営構造の
- 転換の課題はどこまですすんだか
- 1.医療・経営構造の転換
- (1)転換にとりくむ視点
- 全日本民医連として、転換成功のための全国検討会を開催しました(2002年6月:診療所、7月:病院)。会議では、転換の「基本的視点」として、(1)国民・地域の要求に根ざした時代の要請、(2)民医連の発展の中で生じた諸課題、克服すべき課題と結びつけての実践、(3)社会保障制度解体という攻撃に自らの存在と国民の権利を守るためにたたかう「たたかいと対応」、(4)地域の医療機関や福祉施設や諸団体との連携・連帯、(5)それぞれの歴史と到達、地域状況や役割による個別性の重視―の5点を提起するとともに、推進上の「重要課題」として、(1)医師問題と医療技術建設、(2)医療の質と評価、(3)経営問題の克服、(4)地域連携、(5)法人、県連・地協の調整機能の強化―を提起しました。あわせて、転換をすすめる上で、情勢認識の一致(政策動向、自らの事業所のポジショニングや主体的力量)、「視点と方向」を確認し合うこと、豊かな「内容」としての練り上げ、プロセス(医師集団、職員集団、地域と共同組織での議論)の重視を強調しました。
- (2)第4次医療法対応を中心とする転換の推進
- 第四次医療法※9に基づく病床届出は、民医連では最終的に一般73.9%、療養26.1%となり、全国値よりも一般病床の比重がやや高い結果となりました(全国は一般72.7%、療養27.3%)。民医連の一般病床、療養病床※10の合計は全国の2.0%を占めています。一般病床、療養病床の政策的な位置づけや方向性が不透明ななか、中小規模病院を中心にして、病床選択にあたっては厳しい検討が求められました。その中で、改めて地域の要求に向き合い、病院のポジションや役割を見直し、共同組織もふくめた議論を積み重ねる中で、病院に求められる機能や方向性を明らかにし、介護事業とかみ合わせて構想を具体化するなど、全体として積極的な対応がはかられました。積極的な提起とそれに応えた転換によって、困難を乗り越える力となっています。
- 一方、都市部では敷地や建設資金の手当てがつかないため、一時避難的に一般病床の届け出をした病院も少なくありません。また、医師をはじめとする人的体制や経営的側面からの検討が先行しがちな傾向や、転換構想づくりへの医師の主体的参加に不十分さを残したところもありました。診療所は、従来の医療を中心とする機能から、健康づくり、医療、福祉の「総合センター」として転換していることが大きな特徴となっています。介護事業に十分シフトできない診療所への援助、健診活動のいっそうの重視、家庭医機能や診療所を担う医師養成についての議論・検討が今後の課題です。
- 各地協では、困難をかかえている法人、病院にたいする検討や援助が行われ、転換推進委員会など特別な手だてをとった地協もありました。全日本民医連として「相談窓口」を設置し、個別に現地調査・指導援助を行いました。
- 民医連加盟病院の大部分は第四次医療法対応・病床選択を中心とするハード面での転換はひと区切りつき、今後は、病床選択後の医療機能や技術の構築、それに照応した医師政策づくり、質の見直しと向上、介護・福祉分野のより積極的な展開、人材育成、経営基盤の強化、地域ネットワークづくり、職員・共同組織の主体的参加、法人や事業所の目標と職員ひとりひとり働きがいとの結合など、時代の要請に応える「保健、医療、福祉の複合体」に向かって、本格的なソフト面での転換に正面からとりくむことが求められています。
- (3)経営を守るとりくみ
- 2002年度は、民医連経営集計史上はじめて外来患者件数と事業収益で前年実績を割りこむ結果となりました。加盟事業所の奮闘で黒字法人比率は8割を超えましたが、経常利益率が急落しています。受診抑制の進行による患者減、診療報酬マイナス改定※11による経営悪化が顕著です。2003年度上半期モニター調査(25医科法人)では、6割の法人が赤字決算であり、このまま推移すると史上最悪だった1989年の赤字比率(54.5%)を超える事態となりかねません。次期診療報酬改定は医療費ベースで薬価・医療材料1%引き下げが予定されています。経営をまもるとりくみはまったなしの状況です。受療権保障のとりくみのいっそう強化など、民医連経営を守り抜く確固とした意思統一、「経営改善の留意点」(2002年度経営委員長・経営幹部合同会議)に沿った抜本的な経営対策、経営構造の転換が迫られています。
- 全日本民医連は35期も、経営委員長会議、経営幹部会議を開催し、情勢認識の共有化、各地の経営改善の経験交流をはかるとともに、診療報酬マイナス改定、深刻な受診抑制と収益減少というきびしい経営環境の下での経営方針・経営路線の提起を行いました。全国共通の課題としては、「新統一会計基準※12」の改定案、「新部門別損益計算および管理要綱案」および「県連決算・会計処理の留意点とモデル様式」を提起しました。退職給付引当金の100%積み増し(15年)、税効果会計の見直しなど、単に会計基準の変更にとどまらない、今後の経営政策の変更という性格をもつ内容です。新部門別損益管理の要綱は職員の経営参加と病院経営改善の武器としての活用・実践が期待されます。各県連での短期日の実践が重要です。
- 全日本民医連として経営分野活動では、経営実態調査、モニター法人四半期損益調査、労働条件調査、賃金改定状況調査、一時金改定状況調査の経年的調査のほか、今期は病院・薬局経営実態調査、介護報酬改定影響調査(介護福祉委員会)、退職金制度実態調査、部門別損益集計を実施しました。こうした調査結果は毎年公表されており、自らの法人や事業所を客観化する上で有用です。積極的な活用が期待されます。公益法人交流集会、監事監査交流集会、部門別損益管理交流会、統一会計推進士講座を開催したほか、施設整備、税務調査に関する情報集約を行いました。
- 2.医療の質と安全性、医療倫理
- (1)あらためて川崎、京都の「事件」の教訓
- 川崎協同病院と京都民医連中央病院の事件は、医療人としてのモラルが問われる、あってはならない事件でした。この事件から徹底して教訓をくみとり、生かしていくことが重要です。2つの事件に共通した点として、以下の3点が教訓としてあげることができます。
- 第一は、組織と管理運営の問題です。現場で起きていることを掌握せず、現場まかせの医療、他から学ばない我流の管理運営になっていました。理事長、院長はじめトップ幹部が適切な役割を発揮できず、管理組織、管理ラインが未整備で機能していませんでした。これらは、「人権第一」を貫く管理思想が問われたということでもあります。とりわけ川崎ではトップの状況判断の過ち、現場サイドの問題提起のあり方が問われました。改めて人の生命と健康、人権を守るという社会的使命を確認し合い、管理組織(組織図、業務分掌規定、役割と権限など)の整備、トップ管理者として現場の掌握と執行の点検など管理運営の力量の向上を図らなければなりません。同時に、全職員の参画と自主・自律という視点から問題を捉え、改善を図ることが急務です。
- 第二は、「患者の権利擁護」や「共同のいとなみ」をかかげ、あるいは民主的な集団医療の実践を掲げながら、実際には形骸化していたという問題です。わたしたちの組織においても、理念を掲げるだけではだめで、患者の権利を守る具体的な内容とシステムの確立、リスクマネージャーの配置、保険診療の習熟、医療行為に関わる法律を身につけるなど、日常不断の意識的なとりくみと点検なしには、形骸化するということを如実に示しました。
- 第三には、民医連の医療機関として医師研修のあり方、各職種の倫理性や専門性、民主主義の能力がするどく問われたことです。医師のパターナリズム※13への指摘、医師同士や職種間のコミュニケーションが不足している現実が浮かび上がってきました。民主的という名のもと相互批判をさける傾向、「いっても仕方がない」というあきらめ、今までの慣例が、結局のところ「人権第一」を貫くことができない結果となりました。あらためて患者の人権を守るという立場から業務やシステムを総点検し、医療倫理の確立と職場づくり、職員育成をすすめていくことが大事であることを教えています。
- 全日本民医連理事会として川崎、京都の事態を深く受け止め、アピールを出し、また川崎の事件では内部調査委員会・外部評価委員会報告を4万部作成し、学習と自己点検を呼びかけました。今期理事会で「患者の権利」を守ることを自ら宣言し、医療団体としてはじめてカルテ開示の法制化を求める運動をすすめることを確認したのは、教訓から学び改善にむけての私たちの決意です。
- これら京都、川崎の事件は、決して特殊な問題ではなく、全国の事業所に多かれ少なかれ共通した問題を内包していると認識しています。各地で自己点検と見直しが始まっていますが、痛恨の経験から、何を学び取り、改善するのか、民医連組織としての自己再生力を発揮していくことが求められています。
- (2)医療の安全性
- 第35期総会方針では、医療安全の高めるために「公開」「徹底分析」「教訓の共有」「患者の参加」が民医連の原則的立場として強調し、持続的・総合的な対策の必要性、事業所長を中心とした管理部の指導性および職員集団の組織的取り組みと安全文化の向上をよびかけました。医療安全集会以後、「医療事故に対応した危機管理の考え方」に沿って、「患者の人権を最優先する姿勢の確立」「共同の営みの医療の確立」(患者参加の重視)「事実に謙虚に向かい合う姿勢の確立」など医療活動の基本理念が徹底され始めています。民医連内でも最近は100床規模病院での事故が報告されています。改めて、方針に沿い、ひとつひとつの事例を大切にし、対応を早め、習熟することが求められます。医療安全モニターを通じてまとめられた転倒転落事故防止パンフレット(2万部)、注射事故防止パンフレット(1.5万部)、改訂版院内感染予防パンフレットを発行し内外に普及しました。また静脈注射ガイドラインの作成やKCLや10%キシロカイン注射の保管についての注意点、腹腔鏡下胆嚢摘出術の合併症、内視鏡的胃ろう造設術、人工呼吸器の電源チェックについてなど速やかに伝えるべき警鐘的事例についてリアルタイムに発信を行ってきました。医療事故をなくす上で重要なことは失敗やニアミスの教訓から学び、繰り返さないということです。関甲信、九州沖縄地協では地協内での相互診断のとりくみが開始されています。今後、病院長のメーリング・リストを作ることやリスクマネージャー交流会の開催など、医療の質・医療管理と一体のものとして医療の安全性に対する共通認識を広げていくことが必要です。「医療事故に対応した危機管理の考え方」が確認され、その後の医療事故への対応、警察対応、公表の指針として運用されています。医薬品の副作用モニター報告をインターネットで行える様にし、過去4万件のデータベースを整理しました。第6回学術運動交流集会では、これらの成果を受けて「医療における安全文化と人権」をテーマにセッションが企画されました。全国的な共通の認識をもつために、「医療の安全性」に関わる調査活動を行うことが必要です。
- 全日本民医連として、医療事故防止のための第三者機関の設置を求める要望書※14を2回にわたってまとめ厚生労働省に提出しました。柱は、国がイニシアチブを発揮して被害者の救済、調査・原因究明、紛争処理、医師法21条との関係整理など実効ある対応を求めるものとなっています。日本医師会はじめ医療関係団体や患者オンブズマンなどへ働きかけ、実施にむけた運動が重要となっています。
- 重症急性呼吸器症候群(SARS)について、全日本民医連として、関係情報や現場での対応方針を発信するとともに、厚生労働省に対して、集団感染を防ぐあらゆる手立ての強化、受け入れ体制の整備を中心とする緊急要請を行いました。
- 「安全文化」の水準を高め、医療事故、事件を克服する道を示すことは「安全な医療の提供を」と願う圧倒的な国民の声に応える民医連に課せられた社会的使命です。
- (3)医療倫理
- 2003年2月に実施した「倫理委員会※15活動アンケート」(回答113病院・74.8%)では、委員会を「設置していない」病院が90病院(79.6%)あり、その理由の第一位には「力量的に無理」(44.4%)があげられ、小規模の病院では委員の構成をふくめさまざまな困難があることが伺えます。また「イメージがわかない」(36.7%)、「倫理的な問題が生じたことがない」(17.8%)など、医療倫理問題が、現場からかけ離れた問題としてとらえられていることも明らかになりました。しかし、先に述べた川崎や京都の事件を通じて、医療倫理問題とは、終末期医療やインフォームドコンセントなど、日常の医療活動に密接した課題であるとの認識が拡がり、倫理委員会の設置や活性化への取り組みが拡がっています。03年11月の学運交でも、全職員参加の臨床倫理検討会や臨床倫理4分割法※16の活用などが報告され、事例検討での職員討議の重要性が確認されました。また、法人レベルの倫理委員会でのガイドライン作りなど、活動のあり方でも経験が蓄積されてきています。これから「患者の権利」や臨床倫理の視点を医療介護の現場に根づかせていくためには、すべての病院で倫理委員会をつくり、その役割・機能を高めていく必要があります。
- また、民医連でのカルテ開示の到達点をふまえ、厚生労働省による「診療情報提供に関する報告書(ガイドライン)」の問題点を整理し、「患者の権利を守る「カルテ開示※17」」の方針を発表し、法制化をすすめる運動を提起しました。今後、「患者の権利法をつくる会」などの市民団体とも連携しながら、法制化に向けて、国民的な議論をまき起こしていくことが求められています。
- (4)民主的集団医療の新たな実践
- 各疾患グループや病棟での多職種型の委員会活動やカンファランスは民主的集団医療の実践として取り組まれてきましたが、院内感染、医療の安全、高齢者医療・介護など医療をめぐる横断的課題が事業所全体の医療の質を向上させるために重視されるようになりました。この中で褥瘡委員会、医療安全委員会、栄養サポートチーム、クリニカルパス検討チーム、臨床倫理委員会などが作られ、積極的に現場に入りながら活動する経験も生まれています。今後、このような活動の経験を積みながら、さらに普及発展させることが大切です。また、これらの分野にも、医師が積極的に関わることが求められています。
- (5)第三者評価のとりくみ
- 現在、旧バージョンで10病院、新バージョンで5病院が病院機能評価の認定を受けており、引き続き、40前後の病院が受審を予定しています(03年12月現在)。ISO9001(品質)は3法人、ISO14001(環境)で1法人認証されました。中でも医療生協さいたまは2つとも全37事業所で取得しました。全日本民医連として、第三者評価受審支援のためのセミナーを開催したほか、受審病院(立川相互、城北、京都中央)から資料の提供を受け、今後受審を予定している病院に配布し活用をよびかけました。厚労省は、当初の計画を2年早めて「平成16年度中に2000病院の認定をめざす」としており(更新の対応などから将来的には3000病院が上限との議論もある)、各地で受審申請が殺到しています。医療の質・安全性の向上、患者の権利保障の上でも、第三者による客観的な視点からの点検と評価、病院の理念や機能の開示はとりくむべき重要課題です。受審に向けた全日本民医連の相談・サポート体制に関する要望が出されており、検討します。
- (6)IT化(電子カルテ導入)への対応
- 電子カルテの導入・検討が急速にすすんでいます。病院では、すでに18病院で稼働しており、02年10月時(6病院)から3倍になっています。業務の効率化などで成果をあげている事業所もありますが、多額の投資を必要とするものの、導入して困難を抱えている事業所や、法人や院所としての検討が不十分なまま、SE、業者任せで導入をすすめているところが見受けられます。今期、基本方針として「医療情報システムの導入にあたっての検討課題」を提起し、導入時のサポートを目的に「調査団派遣制度」を立ち上げました。IT化は、医療安全や医療の質の向上、透明性の確保など医療を社会が民主的にコントロールするための技術的基礎となるものです。今後の課題として、法人IT化構想づくりのためのガイドラインの作成や患者情報の保護と活用(セキュリティ問題)、「標準化」やDPC※18対応をにらんだ対策を強めることが重要です。
- 3.高齢者医療・福祉の総合的展開
- (1)高齢者医療のとりくみ
- 全日本民医連として、「老年医学セミナー」「回復期リハ※19・療養病棟交流集会」を開催しました。高齢者医療は、治癒・完治をゴールとする医療ではなく、生活機能を重視した医療として、発想の転換、チーム医療、地域連携やネットワークづくりが重要です。高齢者の総合機能評価の考え方は、リハカンファレンスなどに取り入れられています。今後、民医連として研究、実践が必要です。
- 各職種間での高齢者医療の中心を担う療養病床は、第4次医療法対応を機に急速に拡大しました。ADLなどの改善、地域連携の前進、医師労働、経営の改善などの前進面の一方、一般病棟との連携、看護職と介護職の連携などが問題として指摘されています。重度・重介護の患者が多いことが共通した特徴であり、医療機能の向上、終末期医療への対応、民主的集団医療・介護の重視、地域連携の強化が課題です。
- 回復期リハ病棟は、一般病床、療養病床に次ぐ「第3の選択肢」とも位置付けられ、民医連が全国の病床の1割近いシェアを占めています。24時間365日リハの実施、専任医師の確保とリハ職員の体制強化、リハ看護・介護の力量アップ、チーム・アプローチ、急性期病棟や在宅・施設との連携などが課題です。
- 北海道での「高齢者医学・医療研究会」、九州・沖縄地協の「九州・沖縄高齢者医療をになう医師の会」など、地協・県連として医師を中心に高齢者医療に対する組織的なとりくみがすすめられています。これらのとりくみに学ぶことが重要です。第6回学運交では、老年医学・高齢者医療をテーマとしたセッションが企画され、総合機能評価、高齢者疾患の特徴や医療上の留意点について深め合いました。
- (2)介護・福祉分野の到達点と課題
- 在宅事業の複合化、施設をふくめた総合的な展開、医療との連携、地域ネットワークづくりなど、地域の介護・福祉の要求に応えた多様な事業、とりくみが各地ですすめられました。老健やグループホーム※20、在宅総合ステーション※21、単独の通所・入所系施設の開設など新たな事業展開のほか、高齢者住宅の建設や介護予防・寝たきり予防事業に着手した法人もありました。配食・移送サービス、宅老所づくり、助け合い活動など、共同組織による多様で幅広い生活支援のとりくみもひろがっています。各地の事業所・職員は、制度の欠陥や介護報酬のマイナス改定など、矛盾や困難に立ち向かいながら、利用者・高齢者の立場に立って大いに奮闘してきました。介護保険が実施されて4年を経過し、居宅サービス事業所数、施設数の伸長、法人の事業収益に占める介護収益の伸び、社会福祉法人やNPO法人※22など多様な経営主体の増加など、民医連での介護・福祉分野の比重が増しています。地域の中で民医連に対する期待や信頼が高まっています。
- 質の向上と安全性、医療との連携強化をはかる実践が各地で積み重ねられています。県連や法人でも介護事業の交流会、職員の研修・養成が旺盛にとりくまれています。第6回学運交では、入院から在宅をつなぐ切れ目ないしくみづくり、利用者を中心においたチームケア、転倒転落に対するリスク評価や事故防止対策、口腔ケアでの歯科との連携、グループホームの第三者評価など多彩な日常実践が報告・交流されました。第3回施設交流集会では、施設の運営だけではなく、介護の内容について交流しました。施設では、ユニット化などの流れの中で、あらためて「民医連のケアとは何か」「まわりの水準からみて自らのケア内容はどうか」など、施設ケアのあり方についての議論が始まっています。介護事業に対する第三者評価事業を独自に開始した自治体もあり、民医連の施設、在宅事業所でも「自己評価」がとりくまれはじめています。
- 第35期はとくに、運営基準の改定を受けた法的整備、事業の見直しを重視しました。厚生労働省がすすめている介護給付の費用、内容の抑制を目的とした「適正化」対策のもとで、細部にわたる是正指導や開設時までさかのぼった事業点検報告を求めるなど、法人・事業所に対する実地指導・監査が従来になく徹底して行われています。引き続き遺漏なく整備をはかる必要があります。運営基準の改定以降、制度の矛盾がケアマネジャーに集中しています。業務量が増える中で、ケアマネジャーの体制強化や業務整備が後追いになっています。事業の拡大、質の向上の上でケアマネジャーの役割は決定的に重要です。個々のケアマネジャーの力量アップとともに、計画的な配置・養成、組織化など抜本的対策が求められます。ケアマネジャー集団の中で、日常的な援助や教育にあたるリーダーの養成をはかる必要があります。全日本民医連としてスーパーバイザー養成講座を企画しました。ヘルパー労働について、法令に基づく整備を進めると共に「ヘルパーの専門性や身分保障の確立」に向けて「登録型ヘルパー※23」の計画的・段階的な改善・解消に向けた法人・事業での議論を呼びかけました。
- こうした前進面の一方で、ケアプランの作成を断らざるを得ない、サービスを受けきれないなど利用者の要求と事業内容との乖離、法人間でのとりくみ上の格差の拡がりがみられ、克服すべき課題です。この間の事業の到達点をふりかえり、地域要求とのミスマッチはないか、事業規模に見合った事業整備がはかられているか、法人事業計画の中での位置づけが明確か、現場まかせ・担当者まかせになってないかなどの視点からの検討・見直しが必要です。その際、困難をかかえている小規模法人・小規模事業所への援助など、県連や拠点法人の役割が重要です。
- 全日本民医連では、制度改善に向けた方針として3つの制度見直し(介護保険事業計画、介護報酬、介護保険料)をめぐる動向の分析と改善運動のポイントについて提起しました。介護事業の基本方針(「期待される民医連の介護事業の総合的な発展に向けて(案)」)を提起し、各地協ごとに議論と事業の交流を行いました。
- 4.保健・予防、労働者の健康問題
- 健康不安が拡大し健康要求が高まる一方、自己負担の拡大によって医療機関の敷居が高くなる中で民医連の医療機関への共同組織や民主商工会、労働組合など働く仲間から健康管理や健診への要望が高まっています。共同組織が行う青空健康チエックには列をなす状況が生まれています。2001年度全日本民医連医療活動調査では、年間110万人が民医連で健康診断を受けています。
- 東京民医連では東京土建から健診基準の統一や健康づくり運動での共同などの要望に応えるとりくみや東京商工団体連合会(東商連)と大腸癌健診を通じて、県連と労働組合などとの組織的関係の強化をすすめています。ヘルススコープおおさかでは組合員の中から「手遅れのがん患者を出さない」「早期発見で安心の健康生活を」を合言葉に2002年度7万組合員のうち1万人以上の大腸がん検診、4千人の前立腺がん検診を組織して大腸がん13名、ポリープ43名、前立腺がん24名を早期発見しました。また、健康ウオーキングや健康体操など多彩な健康づくりのとりくみをすすめています。このように健康診断や健康づくりの運動は、働く仲間や共同組織の人々の健康と生活を守る具体的なとりくみで、民医連に期待されている分野です。いっそう、重視していくことが求められています。
- 「生活と労働の視点の強化」を深めるため、『民医連医療』で現代版「働く人びとの病気」シリーズに引き続きとりくみ、現在は精神疾患について連載を行っています。「予防の重視」は、健診活動交流集会(2004年1月)の大きなテーマですが、「保健・医療・福祉の複合体」として保健・予防活動を抜本的に前進させていくことが重要です。厚労省の保健・予防政策、主要な労災・職業性疾患の動向の調査と対応では、肝炎ウイルス検診、じん肺法施行規則の一部改正(じん肺の合併症に肺がんを追加)、「労基法施行規則第35条・専門検討委員会」の動向の問題について検討しました。振動障害の問題については、大分県内でおきた不正受給問題を通じて、「建交労」(建設・交通一般労働組合)と協議の場をもつとともに院所代表者会議を開催し自己点検をすすめました。
- 「働くもののいのちと健康を守る全国センター」からは「過労死・過労自殺の全国調査と研究集会に向けてのお願い」を受け、(1)過労死・過労自殺の調査への協力、(2)研究集会の呼びかけ人、実行委員への参加について確認しました。九州・沖縄地協に引き続いて、関東甲信越地協で、働くものの健康を守る医療活動交流集会が開催されました。保健予防・労働者の健康問題への医師、職員の関わりは期待も多く、積極的な位置づけが必要です。
- 5.慢性疾患医療
- 2001年度全日本民医連医療活動調査では慢性疾患管理患者は53万4千人となっており、病院が29万8千人、診療所が23万6千人で管理総数が前の調査の102,2%となっています。疾患数では多い順に高血圧、糖尿病、高脂血症、心疾患、喘息、肝疾患となっており、この傾向は全国的な疾患統計と変わりはありません。1985年から始まった高血圧追跡調査は全国の民医連140箇所の医療機関が参加し、積極的治療期間では、それ以前に比べて「脳心事故が半減した」との成果を得ています。1998年に追跡調査会が開設したホームページ「患者さんのページ」には1年9ヶ月の間に7600件以上の書き込みがあり、患者さん同士のはげましの場となっています。全国や県単位での患者会活動、また事業所内での患者会活動が果たしてきた役割も重要です。民医連運動の積極性を表す運動の典型といえ、学会からも注目されています。コントロールの結果では生命と健康、労働と生活に重大な影響をあたえかねない慢性疾患医療は外来患者の多くを占め、合併症の予防やがん予防、痴呆予防にとっても重要な「共同のいとなみ」の医療の実践です。民医連は歴史的にも慢性疾患医療を重視してきました。健康増進法が成立し、WHOの新しい疾病概念、治療概念が確立されようとする中で、今一度、慢性疾患医療に焦点をあてたとりくみが重要となっています。「脳心事故、癌、痴呆で倒れないための大運動」のよびかけが高血圧追跡調査会からされています。積極的に受けとめ、具体化していきましょう。
- 高血圧、糖尿病など民医連の各研究会ごとの交流会は開催されていますが、民医連の外来診療の重要な柱としての慢患診療の総括的な全国交流会は数年開催されていません。全日本民医連として、インフォームドコンセントの重視、自己負担増加と受診抑制、包括化、生活習慣を重視した指導、専門外来と総合診療、高齢者外来、近接診への規制などの変化に対応した外来診療のあり方について経験交流や政策化が必要な時期にきています。
- 6.県連医療活動委員会の現状と課題―アンケート結果から
- 今期、日程の都合で医活委員長会議が開催できませんでしたが、各県連の医活委員会の現状、かかえている課題について調査を実施しました(2003年9月実施、全県連より回答)。全日本の旧医活委員会が医療福祉経営委員会と改編したのを受けて、7県連が医活分野の機構を組みかえています。医活委員会の課題(複数回答)では、医療・経営構造の転換(16県連)、医療の安全性(39県連)、医療倫理(28県連)、高齢者医療(17県連)、医療整備(12県連)、県連学運交の企画運営(28県連)、医療統計の整備・活用(11県連)、労働者の健康問題、保健・予防活動など(20県連)があげられています。委員会の運営上の悩みとしては、委員会の決定を遂行する受け皿がない、課題が幅広く絞り込みが難しいなどが共通して出されています。
- 医療活動が、福祉分野への広がりと連携、医療・経営構造転換の激動期にあって管理運営や経営や医師問題と直結する状況が生じる中、各県連や事業所の医活委員会の活動内容も見直しが迫られています。従来の慢性疾患診療、保健予防、労働者の健康、環境公害、被爆医療などに加え、医療・経営構造転換や医療の質と安全、医療倫理、高齢者医療・福祉、医療統計・分析、IT化など多くの横断的課題を旧来の委員会体制のままでそこに委任することには無理があります。医活委員会をそれに相応しい体制に強化するか、県連や法人事業所の理事会自身がその役割を担う、あるいは答申した各専門委員会への指導と調整をしっかり行う必要があります。
- (2) 医師養成と確保はどこまですすんだか
- 1.新医師臨床研修制度への「たたかいと対応」
- 2004年度より実施される新医師臨床研修制度※24の情勢を踏まえ、より充実した制度を求めるとともに民医連として積極的な受け入れ整備をはかる方針を示し、とりくみ強化をよびかけてきました。医学生や多くの医療関係者とともに、私たちは保険医インターン阻止を掲げてたたかいと対応を進めてきましたが、新医師臨床研修制度は「地域医療を担う総合的な力量を養成する」ことを掲げて中小病院にも枠が拡大されることになりました。また、過労死問題により研修医の労働条件問題が社会問題化するなかで、不十分ながらも研修医の身分保障など予算の増加もかちとることができました。
- 民医連での臨床研修管理型病院取得はこれまでの18病院から44病院・プログラムとなり、九州・沖縄、近畿、関東・甲信越など地協レベルで臨床研修施設群をつくるなど民医連内ネットワークも生まれ、初期研修開始のスタートラインにつきました。2年間で300名の新卒医師受け入れ目標に対し、2003年度99名、2004年度171名、合計270名(11月末現在)を受け入れることが出来ました。1年生から6年生までの民医連の奨学生は444名となりました。36年ぶりとなる医師養成制度大変革の流れの中で、医師としてのスタートを民医連で開始することを選んだ医学生が184名と90年以降最高となりました。このことに大いに確信を持つことが重要です。受け入れ成功のためには指導医の役割強化や病院あげての受け入れ態勢、プログラムの整備などが重要です。全日本民医連は「臨床研修交流会」を日本生協連医療部会と共同して開催してきました。臨床研修病院の多くは民医連内外の病院や医療機関との連携で研修をすすめていくことになります。地域の医療機関との連携をこれまで以上に重視したとりくみが重要です。その意味では臨床研修群「群星(むりぶし)・沖縄」のとりくみが注目されます。群星は6管理型研修病院と9協力医療機関が思想・信条を超えて「沖縄の医療を担う医師、ひいては日本の地域医療を担う医師養成」を目標に掲げ、合同研修委員会や指導医セミナー、合同回診などを積極的にすすめています。沖縄民医連・沖縄協同病院もその一員として積極的な役割を担っています。同時に地協ごとの民医連内ネットワークの動きをいっそう強めていくことが重要な意味を持っています。
- 2.医学生対策
- 卒後研修の充実や平和問題などへの医学生の関心が高まりを背景に、医学生運動での新たな前進がはじまっています。研修条件改善にむけて医学連がとりくんだ署名は、大学の教官などの賛同も得て医学生で1万筆(全医学生の約2割)、合計2万筆をこえ広範な医学生の要求を結集し、運動を通じて不十分ながら予算がつきました。このような全日本医学生自治会連合(医学連)の活動の中で新たに医学連へ加盟を検討する自治会ができるなど、その活動が広がっています。「Drコトー」「ブラックジャックによろしく」などのドラマが大ヒットしています。ここには国民が期待する医師の姿が描かれています。医学生は今、医療制度や研修制度の大改革と医療事故報道などで「どんな医師になるのか」模索を始めています。民医連は医学生に対し民医連の医療現場での実習機会を積極的に提供するとともに全医学生を対象とした『メディウイング』の発行(年3回、各5万部)、「民医連の医師研修についてお話しします」(メディウイング臨時増刊)を通じて、国民が求める医師への接近への援助と、民医連での研修をよびかけてきました。また、医学生の自主的な学びの場である全国医学生ゼミナールへの後援をおこなってきました。全日本民医連が主催する「第24回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい※25」は「平和」をテーマに広島でおこない、126名の医学生が参加しました。それぞれ出身大学を超えた医学生の連帯と交流の場で、「医療と社会」「医療と民医連」などを考えることを通じて民主的医療人としての成長の機会となっています。こうしたとりくみの中から「原爆症集団訴訟を支える医学生の会」がうまれるなど、医学生の自主的な運動が広がっており、今後一層の援助が必要です。多くの県連で高校生一日医師体験などにとりくみ、また合格した学生の入学前実習、新歓への援助と実習機会の提供などを積極的にすすめており、1年生、2年生など低学年での民医連の奨学生が誕生しています。一方、医学生対策担当者が新医師臨床研修制度発足に伴う準備や卒年次の受け入れに追われ、奨学生への援助や集団化、3・4年生への働きかけが弱くなるような状況も出ています。全日本民医連として、あらためて2003年8月「民医連の医療と運動を担う医師後継者をつくる運動を低学年からすすめよう」とのアピールをだしました。奨学生活動への援助や高校生一日医師体験などにとりくみ、合格した学生の入学前実習、新歓への援助と実習機会の提供などを一層の強化が重要です。
- 3.医師集団をめぐる現状と課題
- 2003年10月1日現在の民医連常勤医師数は3,225人、歯科医師315人となっています。日本全体では26万2千人ですから、およそ民医連医師はその1.2%にあたります。この2年間の増加は104人に留まりました。まだまだ期待される分野に配置が出来ていない状況で、民医連の医療を担う医師の確保と養成を強めなければなりません。
- 今、課題となっている医療安全のとりくみや医療・経営構造の転換の課題、経営問題などいずれをとっても医師や医師集団の関わり抜きには語れません。地域の医療・生活要求に立脚した医療目標の確立が求められていますが、現状では施設的、人的にもきびしく、専門分野の医療の継続もまたプライマリ・ヘルスケアの長期的な展望も作り出しえていないのが現状です。民医連の事業所が、政策動向や地域の要求、主体的な力量の見極め、地域医療・福祉の中でのポジション・役割を明確にし、実現すべき体制を科や各医師個人のレベルまで具体化し、共通の目標としていくことが重要です。また川崎、京都などの「事件」を通じて医療倫理の問題やチーム医療における医師の役割にもう一度焦点をあてた見直しと改善が迫られています。経営の困難を無理な医師労働に頼る経営構造からの脱却もまったなしに迫られている課題です。
- 「医師問題」は医学生対策と医師研修問題にとどまらない医療・経営構造の転換にかかわる路線の問題であり、管理運営における重要なテーマです。
- この間、指導医、研修医が直接、地域や共同組織の声や期待、評価を聞く機会をつくったり、共同組織の方々が模擬患者となって医師研修に関わっている経験、「医師・医療従事者の社会的責任・役割を考えるシンポジウム」を医師集団が中心となって連続的に開催している経験、医師集団と一緒に医療・福祉の構想を練り上げる作業や仕組みを日常的につくる努力も始まっています。女性外来などの試みやこれまでの疾患単位でのチームから褥そう予防チーム、緩和ケアチームなど臨床現場で医師のリーダーシップを発揮しているとりくみもすすみつつあります。また各医師と定期的な育成面接を行い、課題や目標を共有しようとする試みや医師人事評価制度をつくる試みなどが始まっています。イラク戦争に反対する全国的な医師のアピールや運動、過労死問題や環境公害問題への関わり、高齢者医療を担う医師の会、原爆症集団訴訟を支える医師の会、など「民医連ならでは」のとりくみも各地で広げられています。端緒的ではありますが、これらの経験に学び、生きがい、働きがいが実感でき、育む環境をともにつくりあげることを重視しなければなりません。
- そのためにも、無理な医師労働に頼った経営構造では医師の健康を損なうことにつながり、期日を決めた改善がまったなしです。事業所の中で自らの医師としての役割を見出せなくなったとき、孤立感や孤独感を感じたとき医師退職が発生します。民医連の医療と研修に共感し、民医連に参加した医師の退職は、民医連運動にとってかけがえのない財産を失うことになります。県連医師委員会任せにせず、県連、法人、病院のトップ管理と職員集団が力をあわせて、医師及び医師集団と正面から向き合うときです。
- (3) たたかいと共同組織の強化の課題はどこまで到達したか
- 1.共同組織強化の到達点
- 1992年の第30回全日本民医連総会で提起した構成員300万目標(当時182万)に対し、2003年12月、300万を達成し、「いつでも元気」は8月の第3回評議員会までに5万部達成(この2年間で5014部増加)することができました。
- 1999年の第5回共同組織活動交流集会(洞爺湖)で提起された「安心して住み続けられるまちづくり」の運動は、2003年9月に東京で開催した第7回共同組織活動交流集会で大きな広がりを見せていることが確認されました。第7回集会には、これまでの倍以上の2700人以上の共同組織の人びと、職員が集い、共同組織が、確実に地域で健康づくり、医療福祉のまちづくりの担い手として成長していることを示しました。また、友の会、医療生協などの組織の違いを超えて、学び合うという進展が見られたのも特徴です。
- 共同組織の活動の広がりの特徴は、以下の5点にまとめることができます。
- 第一は、街かど健康チェックや健診活動など民医連事業所とともに進める健康づくり、健康増進の活動が大きく広がっていることです。50周年記念の共同組織企画として、「青空健康チェック」や「健康ウオーク」のとりくみが全国的に大きく広がりました。特に健康チェック(健康相談)活動は、深刻な受診抑制の影響もあり、各地で大きな反響を巻き起こしています。また、大腸癌検診のとりくみを始め健康フィットネスなど、健康増進に対する要求に応える活動が広がっていることも特徴です。
- 第二に、高齢者・障害者・子育てなど地域で助け合い運動とネットワークづくりなどまちづくり運動が大きく広がっていることです。配食サービスや様々な工夫を凝らしたたまり場作り、機関誌や「元気」誌の宅配活動で安否の確認、デイ、在宅支援、移送、環境整備、ホームレス支援などへのボランティア活動として、あるいは助け合いの事業※26として展開している石川、岐阜などの経験、共同組織の会員の中での新たな仕事興しの活動※27(福岡・中友)などが注目を集めています。
- 第三は、暮らしや医療、福祉、教育、文化などの国や自治体への改善を求めるとりくみです。とりわけ「街並みチェック」などの取り組みは各地で行われ、道路の段差解消、点字ブロックや信号機設置などの具体的な要望に対して、自治体も積極的に応えつつあることが報告されています。また、自治体が進める街づくりへの具体的な参加もはじまっています。合わせて、国保や介護保険、乳幼児医療や身体障害者の医療費助成制度などの制度改善を求める運動も広がりを見せています。地域社保協の中軸を担う組織への成長も見られました。
- 第四に、環境と平和を守る活動です。大気汚染やダム建設、有明海を守るたたかいなど環境問題での関わり、戦争体験者が語り部となって、班会や職員、子供達に平和学習会を積極的に行う活動と核兵器廃絶、劣化ウラン弾の危険についての被害の実相についての学習と啓蒙活動も進んでいます。
- 第五に、「まちづくり」運動の拠点でもある、民医連の事業所を守り発展させる活動です。この間の事件・事故に端を発した民医連と共同組織に対する攻撃に反撃すると同時に、安全・安心の医療・介護、建設運動や出資金・基金などの経営を守る運動、そして医師をはじめ後継者確保と職員育成に、共同組織がこれまで以上に積極的に参加し、関わる活動の交流が行われました。
- 「300万・5万」に向けた私たちと共同組織構成員のとり組みは、こうした活動の飛躍と発展を生み出してきています。同時に、組織活動の点で、友の会型の組織が大きく前進してきているものの、更なる飛躍が求められています。民医連と共同組織をつなぐ「いつでも元気」誌は、支部・班会などで積極的に活用され「まちづくり」運動の交流に大きな役割を果たしており、いっそうの普及が求められます。
- 2.平和・医療・社会保障を守るたたかい
- (1)健保本人3割負担導入など医療改悪阻止のたたかい
- 医療改悪阻止のたたかいは全国で3千万筆署名、民医連で350万筆の署名を集約し、国民世論を背景に国会最終盤まで成立をはばむたたかいを作り上げました。成立後もさらにたたかいと世論は高まり、凍結・撤回を求める運動がまきおこしました。さらに4月実施後も野党4党共同提案による撤回法案を参議院に上程させました。医療改悪を阻むまでには至りませんでしたが、3千万筆、国民4人に1人が改悪に反対する国民の運動を背景に日本医師会など医療四団体※28が共同して凍結撤回を求める声明を発表、野党も世論に応えて、こぞって反対を貫くことができ、最後の最後まで追いつめ、また国会通過後も、実施中止・撤回を求めて運動が更に拡がったことが大きな特徴です。運動の広がりが国会をも動かすことを示した点でも今後の教訓、財産としなければなりません。日本医師会はじめ4師会はその後、アメリカのイラクへの侵略戦争に対して反対を表明しています。全国各地でも医師会はじめ医療関係団体、自治会や地域の中小企業に積極的に共同の申し入れを行い、初めて医師会の集会に招かれるなど、あらたな共同の広がりが生まれました。その後、山梨では民医連内医師総会に県医師会長があいさつにくるという大きなも変化が生まれています。
- 全日本民医連は、このたたかいにあたって闘争本部を設置して医団連※29・社保協※30との共同を重視して大闘争をすすめてきました。医団連・社保協・春闘共闘を中心に取り組まれた「(2002年)2・14安全安心の医療を求める国民大集会」は、運動を進める大きな発火点となり、全国各地で学習、宣伝、署名、共同の大闘争が広がりました。その結果世論を大きく動かす変化をつくり出しました。
- 中央集会と国会請願行動には全国から多くの代表が参加し、委員会傍聴、議員要請、国会集会などで世論を動かす力となりました。とりわけ最終盤、首都圏の共同組織を中心にとりくんだ国会座り込み行動は運動を励ましました。また、この行動は共同組織や職員の成長を促す機会ともなっています。とりわけ東京や群馬などの民医連が取り組んだ「新入職員の国会研修」の企画は職員の成長の機会としても大きな成果をあげました。
- 大運動闘争募金には1億7千万のカンパが寄せられ、ラジオCM(14ヶ月)、新聞広告(朝日、読売)、ステッカー、署名用紙、学習宣伝物などに活用され闘争を支えました。
- 2003年3月に小泉内閣が閣議決定した、今後の医療改悪にむけた「基本方針※31」に対し「国庫負担を増やさない『医療改革』は改革の名に値しない」会長見解を明らかにし、全日本民医連として全面的な反論をパンフレットにまとめて議論と運動をよびかけました。
- (2)国保および受療権を守る運動
- 全日本民医連が第三回評議員会で提起した「すべての職場から人権のアンテナの感度を高め、具体的に受療権を守る運動をまき起こそう」は積極的に受けとめられ、地域に打って出る活動が全国各地でとりくまれました。そして、気になる患者訪問、中断患者訪問などのとりくみや具体的な受療権を国保制度改善、高齢者医療窓口支払いの軽減、在宅酸素患者への支援など自治体で具体的な制度改善を実現する成果も生み出しました。在宅酸素療法の患者さんの実態調査を元に対県交渉をすすめている長野の経験、難病患者さんの状態調査を自治体の保健師などの協力を得てとりくんだ東京の経験、無料低額診療制度を活用して「まず受診を」と診療のつなげている北海道などさまざまな教訓が生まれています。このとりくみは民医連の事業所の存在意義をいかんなく発揮するとりくみとなりました。地域訪問の中で参加した職員からは「『何でこないの?』と簡単に電話していたけど『来てくれたんだ』と思えるようになり、患者さんの見方が変わった」との声が寄せられています。宮城・坂病院と成人病クリニックでは「気になる患者訪問」を全職員で継続的に取り組むことを目標に勤務表に組み込んで病棟スタッフ全員が訪問活動に参加するなど、日常的・持続的な活動がはじまっています。
- 国保世帯の実態※32は深刻です。保険料の取り上げと資格証明書、短期保険証※33発行など大量・無差別の制裁措置によって、受療権が奪われる事態が広がっています。中央社保協は02年6月に北九州市と福岡市で現地調査をおこない、資格証発行が国保料収納率向上にも役立たず、人権侵害につながっている実態を告発しました。その後奈良県大和郡山市や大阪摂津市などでも実態調査が取り組まれています。
- また、各地で保険料の引き下げや集団減免の運動がねばり強く取り組まれ、姫路市や鳥取県倉吉市などでは大幅な引き下げを実現しました。とりわけ、国保法44条※34に基づく窓口負担の減免を沖縄豊見城市で実施要項を制定させたのをはじめ、広島市、京都市、新潟市、東京都などで取り組みが大きく広がっています。
- 現在国保加入者は5000万人を超え、国民皆保険制度の中で最も大きな公的医療保険となっています。政府はサラ金まがいの取り立てを内容とする滞納者対策マニュアルを作成し、滞納者への差し押さえなどペナルティ強化をすすめていますが、国保問題の根本には政府の負担を削減してきたことがあり、国の責任を果たさせるたたかいが重要となっています。
- (3)平和と民主主義を守る運動
- 平和運動は民医連が一貫して追及してきた課題です。この間、有事法制反対・イラク戦争とイラク特措法反対、イラクへの自衛隊派兵反対のたたかいが大きく広がりました。全日本民医連が作成したポスター、ワッペンも好評でした。また毎年の原水禁大会には1000人以上の職員と共同組織の仲間が参加し、平和大会にも全国から代表が参加するなど運動の高まりをつくり出しています。とくに、イラク戦争反対のたたかいやイラク派兵反対のたたかいでは平和自転車リレーはじめ青年職員の多彩な取り組みがおこなわれ、地域の青年とも共同して大きな役割を果たしています。03年3月に行った平和活動交流集会ではそうした全国の活動が交流され、イラク派兵反対のたたかいや原爆症認定集団訴訟支援の取り組みなどを推進する大きな力となりました。
- (4) 組織改革と団結の現状と課題
- 1.福岡・健和会、山梨、大阪・同仁会の再建運動の到達点と教訓
- 福岡・健和会の再建が大きく前進しました。金融情勢の変化もありますが、福岡県連、九州・沖縄連絡会の組織的な支援と職員集団の奮闘で能動的に医療・経営構造の転換をすすめ年間10億円近い黒字を出し続けていることが原動力となっています。再建途上で銀行からの借り入れができない中で、昨年は中原病院の新築移転をやり遂げました。
- 山梨勤医協は1983年の倒産以来、民医連的再建にとりくみ1997年債務を解消し経営再建を完了し、2002年度には新病院を完成させ、あらたなとりくみを開始するに至っています。大阪・同仁会は1998年の前倒産の危機、2000年の院内感染問題など大きな危機に直面しましたが、全国的な支援、地域や共同組織の支えを受け、事態を正面から受け止め、医療安全の問題では、地域の病院による市内病院院内感染対策ネットワークの組織やリスクマネージャーの配置など先進的なとりくみをすすめています。また病院機能評価の受審、急性期特別加算の取得、緩和ケア病棟開設など意欲的に医療・経営構造の転換をすすめてきました。再建を支えた同仁会基金は地元での地域協同基金へのきりかえ運動をすすめ、全国的に寄せられた基金は2004年春に返済予定です。しかし、まだ債務超過解消には至っておらず、耳原総合病院建て替えの課題も控えており、今後さらに抜本的な経営改善の取り組みを強化することが必要です。
- 厳しい医療経営環境のもとで、差額を徴収しない、「非営利・協同」の民医連の法人・事業所が困難や経営危機を乗り越えてきたことは特筆すべきことです。あらためて、これらの再建運動から引き継ぐべき教訓として、第一に、民医連的再建として位置づけ再建の理念と目標を明確にしたこと、第二に、トップ管理の責任ある行動を含むリーダーシップの発揮、職員や労組の再建運動への主体的な参加、地域活動や共同組織強化を積極的に位置づけ強化に取り組んだこと、第三に、弁護士、公認会計士など専門家集団による援助を含む、全日本民医連の組織あげた支援の力、とまとめることが出来ます。
- 2.川崎、京都の到達と課題
- 今期、あらたに川崎、京都対策委員会を設置し、再生に向け現地のとりくみを援助してきました。川崎協同病院はこの事件から自らの再生の課題を、3つの再生(医療の再生、組織の再生、経営の再生)として位置づけ、事件の内部・外部調査、倫理委員会の設置と終末期医療のあり方についての組織的検討、指摘事項の見直しをすすめました。また、事件を通じて明らかになった病院管理や法人指導のあり方の見直し、事件を契機に表面化した経営危機の克服にむけてのとりくみをすすめました。全日本民医連は弁護士など専門家の協力を得て、神奈川県連と一緒に対策本部を設置し、現地調査と懇談、常駐対策本部員の派遣、医師、看護婦の支援、地域訪問行動への支援などにとりくみました。前年比10%近い患者減に表れているように、事件の影響も少なくなく、警察、行政対応、執拗な攻撃、立て直しと一度に多くの対応が迫られる事態の中でしたが、川崎医療生協は新指導体制のもとで、2002年度および2003年度もこれまで黒字を計上するなど前進を作り出しています。医師集団のいっそうの団結と役割を強め、医療・経営構造の転換や2004年度4名が入職してくる医師研修の成功、看護体制の強化など再生運動を確実にすすめていくことが焦点です。
- 京都民医連中央病院は事件から一年がたちました。共同組織をはじめさまざまな人たちに支えられ、「管理組織の見直しと改善」「患者の権利章典」策定、「事件の自己分析」「病院機能評価の受審」「電子カルテ導入」「地域訪問行動」「保険診療の整備」など再生をめざす努力が続けられています。全日本民医連対策委員会は、この間、現地との懇談、協議すすめ、この中で、特に事件に至る要因についての自己分析と自己点検運動をすすめること、行政および原因究明委員会から出された管理運営を含む指摘事項に基づく改善をすすめること、経営困難を乗り越えること、地域の信頼を取り戻すための活動を推し進めること、県連と法人の関係の見直しと法人機能強化をすすめること、を指導援助の中心にすえてきました。2003年5月、京都府・市から具体的な指摘と改善要望が出され、12月には社会保険事務局から、不請求に関わって行政指導にあたる「戒告」を受けました。事件が経営に与える影響もきわめて大きなものがあります。病院をつぶすことを狙った執拗な攻撃も続けられました。ようやく近接診療所の開設許可のメドがたってきましたが、失った信頼を取り戻すことは並大抵のことではなく、確実に、改善を地道にすすめる以外にありません。役職員の奮闘を期待します。
- 3.診療報酬問題、180日超問題のたたかいと対応
- 2003年4月の診療報酬改定では長期療養患者の病院追い出しにつながる180日超35の患者の入院管理料を減額し、それを特定療養費化※36で患者の自己負担となる改定が行われました。また、人工透析患者さんの給食の自己負担がはかられました。全日本民医連は、医療本体部分の特定療養費化は今後、更なる負担の拡大につながり、保険診療と自由診療の2本立て、すなわち混合診療に道を開くものである旨見解を示し、第2回評議員会で、民医連の病院での徴収を見合わせ、除外規定の拡大、制度の撤回を求めて運動をすすめようとの方針を提起しました。この間、厚生労働省交渉を通じて、除外規定の拡大など一定の成果も生み出しました。調査の結果、実際の適用対象外は180日越患者の12%程度(159人)となっています。これらの人たちの存在は在宅療養の困難、施設の受け皿も乏しく国の貧困な施策を反映する結果となっています。福岡民医連の調査では回答のあった県内91病院中12病院が徴収していないことも明らかになっています。また多くの医療関係団体が制度撤回・除外規定の拡大を求めており、撤回を迫る運動が重要です。医療行為本体の保険はずしである特定療養費化は差別医療に外なりません。全日本民医連は、支払い能力のない人の病院からの追い出しにつながりかねないこの制度撤回を求めて運動をいっそう強め撤回をせまります。同時に、職員、共同組織に積極的な討議をよびかけ、引き続き、徴収しない方向でとりくむことをよびかけます。そのためには、無料低額診療制度の活用や助けあい基金※37の制度創設など排除される人が出ないよう具体的な検討も必要です。
- 次期診療報酬改定では更なる特定療養費の拡大が計画されており、一層のたたかいが重要です。診療報酬が公的医療の後退や医療機関の選別化などの政策誘導に使われてきています。全日本民医連は2003年6月、国民医療を守る立場から診療報酬のあり方について「総研」へ研究提言を委託し、このほど研究「医療・介護の報酬制度のあり方」について提言を受けました。この研究提言は、患者・国民の視点からまとめられており、安全・安心の医療実現のためにも医師、看護婦をせめて欧米並みの人員配置に、それを保障する診療報酬をといった論調となっており、積極的な内容となっています。提言の内容について学習運動をすすめるとともに、パンフレットとしてまとめ、医師会や日本病院会、保険医団体連合会、日本医労連、患者団体に積極的によびかけ、市民シンポジウムや運動をおこなっていきます。
- 4.50周年記念事業
- 50周年記念事業として、(1)記念シンポジウムの開催、(2)記念レセプション、(3)学術・運動交流集会50周年企画、(4)共同組織を中心とした企画、(5)青年職員に呼びかける企画、(6)「私と民医連」手記募集、(7)出版物として「写真で見る民医連50年」「全日本民医連運動方針集31回総会〜35回総会年表付き」「医療・福祉宣言ビデオ」、(8)民医連海外視察団の派遣、(9)前進座公演、(9)記念グッズの作成、が企画されおおむね実施しました。第6回学運交では、国際部を中心に「アジアの医療」と題して、韓国の梁吉承医師の講演と各地で取り組んでいるアジアを中心とする国際交流のシンポジウムをおこないました。共同組織交流全国連絡会では「50周年記念青空健康チェック」「健康ウオーク」を全国に呼びかけ、各地で創意工夫してとりくまれ大きく広がりました。青年職員による「民医連のROOTSを探ろう」は法人や事業所の草創期の運動を青年職員が先輩を訪ね、調査、取材するもので、多くの県連・事業所でとりくまれました。その成果は第30回全国青年ジャンボリーに持ち寄られ、冊子の準備が進んでいます。「わたしと民医連」と題しての手記募集を行い、入選作品を表彰しました。それぞれの「わたしと民医連」が率直に語られており、感動的で民医連の確信が深まる内容となっています。民医連医療に掲載しました。『写真で見る民医連50年』は3000部印刷し民医連内外に普及しました。2004年度にアジアへの海外視察を実施します。第36期全日本民医連理事会として50周年記念誌編集委員会をたちあげます。
- 5.全国理事会、地協運営と県連機能強化
- 「より現場際で、より総合的に」をキーワードに全国理事会運営や地協運営委員会※38を設置し改善に努めてきました。地協活動を通じてそれぞれの県連の課題や問題点の共有や援助がすすんだこと、地協単位での医師養成方針の整備や指導医会議の開催、医療安全相互点検・診断、各種研修会の開催などがすすみ一定定着しました。今の時代には県連強化とともに地協レベルでの交流や連携、相互援助がますます必要とされる状況が広がっています。
- 県連機能のあり方について第2回評議員会で「求められる7つの機能」((1)全日本民医連方針の討議と具体化、それができるような県連機能と職員参画の機構整備、(2)県連長期計画の策定と具体化、法人事業計画の掌握と指導援助、共同事業の推進、(3)県段階での運動組織、(4)共同組織の拡大と交流、いつでも元気の普及、(5)職員育成と後継者養成、(6)医師・医学生の確保と養成、(7)内外から民医連を弱める攻撃に対し、民医連組織を守り発展させる)について問題提起を行いました。県連はそれぞれの都道府県を代表する民医連組織であり、各県で民医連運動を総合的に前進させる単位です。全日本―地協―県連―法人・事業所の連携で県連機能を意識的に強めましょう。
- 県連における事業協同組合をはじめとした県連共同事業の役割がますます重要になっています。医薬品・医療材料の共同購入にとどまらず、加盟事業所に貢献できる事業活動を旺盛に展開しましょう。
- 第6回学運交を2003年名古屋で開催しました。史上最高の1391名が参加し、「はばたけ未来へ、平和・人権・非営利〜いのち輝く社会めざして〜あらゆる人びと連帯して、生命と人権を守る安全・安心の保健・医療・福祉を」をスローガンに学びあい、交流しました。たくさんの貴重な経験、成果が報告されています。これらの経験、成果を全国各地の実践に生かし、さらに飛躍をはかりましょう。
- 各分野の研究会活動は継続的にとりくまれ活動の交流の機会となっていますが、現場の多忙、経営の厳しい中での自主的集会のため停滞傾向も見られます。学術調査は集計の不正確さや活用されないなどの理由で今期なくしましたが、それに変わるものがなく、民医連(特に医師)の対外的学術活動の把握、援助・振興策が不十分です。再検討します。
- (5) 個別分野のとりくみ
- 1.歯科
- 第35期、「新しい時代の扉を開こうー21世紀初頭の歯科の役割と課題―」をまとめ討議と具体化をよびかけました。「全県連、全事業所に対応する歯科を」の大きな目標をかかげ、地協を軸に石川、長野、大分の歯科建設を援助してきました。歯科はこれまでの抜歯や補綴中心の医療から歯周病の予防や保健予防の重視、高齢者の口腔ケアの重視が大きなテーマとなってきています。「歯磨きセミプロ養成講座」のとりくみなど共同組織と共同の活動もはじまりました。少子高齢化社会の中で、共同組織を有し、医科、歯科が連携できる民医連の歯科が歯科往診、口腔ケアの実践、保健・予防活動など民医連歯科の優位性を発揮できる分野はまだたくさんあり、期待されています。あらためて疾病構造の変化、地域や共同組織の要求を的確につかみ、民医連歯科の事業と運動を強めましょう。そのためにも、以下の課題を重視しましょう。
- 2006年から歯科医師の臨床研修制度が発足します。積極的に指定医療機関としての受け入れ準備もすすめ、後継者対策を強めましょう。
- 歯科分野は黒字を出している事業所はおよそ半分で苦戦しています。赤字は存在そのものの否定につながります。進んだ経験には教訓があります。これらの経験から学び、全ての事業所が黒字体質へ転換をはかりましょう。
- 医療安全、医療整備の課題では、人権を守る立場からの接近が重要です。「安全・安心・信頼の歯科医療前進のためのチエックリスト」をまとめ自己点検をよびかけました。受療権が侵害されているときだからこそ、「保険でよい歯科医療を」の運動が重要です。比較的規模の小さい歯科の分野での前進のためには県連、地協、全国レベルでの情報交換や経験交流をいっそう重視していきましょう。
- 2.保険薬局
- 民医連加盟の保険薬局も288ヶ所と42ヶ所増加しました。わが国における医薬分業は2002年12月に史上初めて分業率50%を超え、あと数年以内にいわゆる完全分業(分業率80%台)時代に入ると言われています。こうしたなか、調剤報酬は歯科を上まわり、今後は総医療費抑制政策の下で調剤報酬の伸びを抑えることが大きな政策課題とされています。これらを反映して、これまでの「かかりつけ薬局」から新たに「かかりつけ薬剤師」としての職能発揮を求める政策も出され、保険薬局および薬剤師の「質」がさらに大きく問われる時代に入ります。
- こうした情勢のなか、民医連の保険薬局も第36期内には300ヶ所になろうとしています。この2年間、民医連事業所との医療連携のみならず、他医療機関からの処方箋応需や介護保険の分野でも新たな患者・利用者の広がりを生み出し、地域の新たな拠点として民医連医療の発展に大きく貢献しています。さらに専門性を生かし、まちづくり運動や地域での生活相談機能としての役割発揮も期待されます。
- この間の医療改悪で調剤延件数・処方箋枚数とも減少していますが、長期投薬等の影響で処方箋単価の上昇で収益は逆に増加しています。価格交渉の前進や、薬剤師確保が困難で人件費が抑えられた結果、一定利益が出ています。しかし、決して予断できる状況にはありません。
- 厳しい情勢を打ち破り、民医連の保険薬局として前進するためには、「人権のアンテナ感度」を高め民医連事業所と連携して地域に出かけ民医連保険薬局の存在意義を高める活動が重要です。人権、患者第一を貫く職場風土をつくり、医薬品の専門家として安全性を重視し、民主的集団医療を担う一員として奮闘します。また、薬害根絶など社会的な問題にも積極的に関わるなど、民医連の薬剤師として成長を保障していくことが重要です。そして、それを保障する上でも県連に結集し、薬剤師の確保と次世代の民医連薬局を担う幹部の育成にとりくみましょう。また、保険薬局としての医療・経営構造の転換の課題、安全性の向上のとりくみを含む薬局機能の見直しをすすめ、薬局機能評価やISO9001にも挑戦しましょう。保険薬局の共同組織の関わり方について探究をすすめましょう。
- 今後、医療・経営構造の転換の実践や医療安全の課題において、診療所における医薬分業は引き続き大きな課題となっており、薬剤師確保と管理者の養成は急務です。薬剤師の確保・育成、民医連保険薬局の管理運営の指導援助、強化が重要です。
- 3.小児医療
- 引き続き、子どもたちと小児科をめぐる状況はきびしいものがあります。25年にわたって「子どもの心と体」の変化について実態調査を続けてこられた正木日本体育大学名誉教授は「いつでも元気」で、アレルギー、低体温児の急増、運動能力の低下、視力不良、すぐに「疲れた」「突然キレル」、72年を境に男児死産の急増などその変化を指摘しています。その原因として、子どもをとりまく社会と環境の悪化を上げています。不登校、いじめ、児童虐待なども社会問題化しています。子どもを生み育てる環境の貧困さから引き続き出生率が低下しています。子どもをめぐる問題は社会の病根の反映であり、その解決にむけ根本的なとりくみが重要です。一方、小児科をめぐる状況は、低い診療報酬、対象人口の減少の中で、経営的に厳しく縮小傾向がある半面、夜間・救急などへの期待も大きく、激務となっています。民医連の小児科をめぐる状況も同じです。民医連で小児科に携わっている小児科医師の約3分の1弱が1人体制です。その中でも、民医連の小児科は全国的な支援や交流にとりくみました。また、スタッフとともに、休日夜間救急への協力、共同組織の中での子育て支援や保育所、学校、保健所などと連携しての子どもを守るとりくみ、外国人母の会での講演、病児保育への関わりなど多彩にすすめています。平和へのアピールや乳幼児医療無料化運動への関わりや電話予約、マイ・カルテの実施など診療上の工夫もすすめています。困難な中でも医師を初め多くの職員の努力で、先進的に小児医療を切り開いてきました。
- 子どもを大切にしない社会は未来を大切にしない社会です。
- 今ほど、民医連小児科が長年培ってきた視点やとりくみが国民的課題としてクローズアップされてきている時期はありません。安心してこどもを生み育てられるまちづくりとしての母子保健政策の確立を展望しつつ、診療の充実と診療報酬の引き上げ、小児救急体制の整備、子どもを守るネットワークづくりと子育て支援などのとりくみを他の医療関係者や子どもにかかわる団体などと連携しながら問題解決にむけてとりくみを強めていきましょう。産婦人科との連携を強めることも重要です。新医師臨床研修制度での民医連小児科の経験は、今後の後継者養成にもつながります。小児科医師の多くが40歳以上となり、後継者対策が大きな課題です。地域にとっても、また医師にとっても魅力あり、経営的にもやっていける小児科づくりをすすめていきましょう。
- 4.被爆者医療
- 民医連の被爆者医療の継承と発展のための課題整理、原爆症集団申請・集団訴訟の理解、JCO事故での被曝患者の医療から学ぶことを目的に、約6年ぶりに被爆問題交流集会を開催しました(2003年6月)。また被爆2世との懇談、被爆者検診の内容充実を求めて厚生労働省交渉をおこないました。減少傾向にあるとはいえ、28万5千人を数える高齢期に入った原爆被爆者の医療、被爆2世の健康管理、20万人を超えるといわれる原発労働者の被曝問題に関わる若手医師・職員の研修や育成が今後の課題です。高齢を迎える被爆者は「人生をかけた最後のたたかい」として2002年、原爆症認定集団訴訟を起こしました。第一回集団訴訟支援・全日本民医連医師団会議(2003年5月)で、民医連として被爆者団体協議会の集団提訴方針を理解し、医療的側面での全面的な協力とともに運動面でも支援する方向を確認しました。その後各地で行われた全国弁護団会議への参加などを経て、「集団訴訟統一意見書ワーキンググループ会議」もはじまり、原因確率論による認定切り捨てへの医学的反論をまとめることや、各地協レベルでのきめ細かいとりくみがはじまっています。今また、核兵器開発が叫ばれ、アフガニスタン、コソボ、イラクでおびただしい劣化ウラン弾が使用され深刻な被害が広がるなか、あらためて、被爆者医療、原爆症認定集団訴訟支援のとりくみを重視していきましょう。
- 『被爆者医療の前進のために―医療活動の手引き』を改定しました。被爆者医療の継承のためにも、集団訴訟への理解と支援活動の前進のためにも普及し活用しましょう。
- 5.環境公害
- かつて公害問題としてくくられた環境問題は、いま、地球規模での環境破壊問題と地域の公害問題として進行しています。人類の未来と深く関わり、生命と健康、生活を守る問題として、関心を高め、系統的にかかわっていくことが求められる分野です。今期、医療廃棄物処理の問題では長野民医連の「医療廃棄物と処理の改善」のとりくみ、ISO14001(環境管理)取得については医療生協さいたまの経験などすすんだ経験から学びあいました。民医連の事業所が環境破壊をしない意識的なとりくみが必要です。かつての公害裁判、患者救済運動を中心にした課題だけでは壁に突き当たっています。一方、身近な環境問題はいっそう深刻になってきており、暮らしの改善やまちづくり運動の中での位置づけ行い、共同組織と一体となった地域型運動への転換が求められています。同時に、東京大気汚染裁判や有明海訴訟などの支援を引き続き強めます。
- 第36期全日本民医連として、全国各地で起こっている様々な環境公害運動へのかかわりや問題意識について集約し、交流をすすめます。
- 6.薬害をなくすとりくみ
- ひきつづき薬害が発生し重大な人権侵害を引き起こしています。全日本民医連は薬害の根絶、被害者救済の立場でとりくんできました。
- ヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)、フィブリノゲンなどの薬害問題にとりくんできました。ヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)は、脳外科などで使われたヒト由来医薬品で薬害ヤコブ病をもたらしました。全日本民医連は、2002年5月のこれを使用した院所を中心に会議を開催し、(1)使用状況の把握、(2)使用が明らかになった患者さんや家族に事実を明らかにする、(3)患者追跡調査を責任持って行なう、(4)不幸にして発症した場合、治療や保障について患者・家族とともにたたかうことを呼びかけ、裁判を支援しました。
- フィブリノゲンによる肝炎患者は2万人ともいわれています。フイブリノゲンとは、止血用に産科、外科などで使われていた血液製剤ですが、ウイルスの不活性化がおこなわれていなかったため、C型肝炎に罹患した患者が相当数いるとみられ、患者ら数十名が原告団を結成し裁判にとりくんでいます。薬害肝炎原告団・弁護団から本年6月に全日本民医連に要請があり、それにこたえ2003年10月に再度調査をよびかけました。患者、被害者の人権を守ることを積極的に表明するとともに、薬害根絶にむけこの裁判に協力、支援していきます。
- またこの間、抗がん剤であるイレッサの副作用による死亡事例も問題となりました。イレッサは安全性、有効性の検討が不十分なまま承認された医薬品であり、製薬メーカー、厚生労働省の責任が問われています。民医連の事業所においても新薬を採用する場合の慎重な検討が求められています。
- 7.各職種の活動の到達点と課題
- (1)看護分野
- 「准看護師を看護師への移行教育」をめぐって情勢の大きな変化がありました。「准看護師から看護師への移行教育の早期実現をめざす中央情報センター」を中央5団体(日本医労連、全国看護を良くする会、全国准看研、自治労連、全日本民医連)で結成(02年3月)し、早期実現にむけアピールへの著名人の賛同、国会内で国会議員の参加をえての決起集会開催、厚生労働省はじめ、各関係議員要請行動など多彩な行動を行いました。厚生労働大臣から「平成16年度に開始」の答弁を引き出し、新たな「移行教育」として、「通信制2年課程」が打ち出されました。しかし、国の責任が明確にされておらず、2004年度開校は3校に留まっています。引き続き「すべての准看護師を看護師に」のとりくみを強めます。
- 医療の安全性のとりくみを重視し、安全な技術の構築、リスクマネージメントの向上に努めてきました。第6回看護活動研究交流集会(横浜)では、全国統一テーマとして「転倒・転落防止」を位置づけました。その後「転倒・転落事故を予防するために」のパンフも発行され、全国規模でチャレンジし看護・介護集団の意識の向上に大きく寄与しています。また、「静脈注射の安全実施に関するガイドライン」は看護師だけの問題ではなく、医師をふくめた病院・事業者の施設内基準をあらためて作成し看護職から積極的に提案していくことが重要です。
- 「『看護師養成(卒後初期研修)に求められる視点と課題』が提起したもの」を発表しました。これは97改訂新カリキュラムのもとで大幅な実習時間削減で臨床現場とのギャップが広がってきており、討議と具体化をすすめましょう。
- 看護師・保健師・助産師の確保はこの2年間新卒受け入れが毎年1000名を超えました。04年卒確保をめぐる需給状況は地域格差が一層広がっています。看護師確保は都市部で苦戦しており、全国的連携も必要です。
- DANSは第7回(鹿児島)をもって全国開催は終了し、各地協に開催を移行しました。
- 介護分野の職員養成の課題は、各県連によって介護職を(介護・福祉事業)担当する委員会が多様化してきており、まだ圧倒的に「看護委員会」のもとに置かれています。県連では活発に「研修会」「交流会」が開催され、また「県連の看護・介護看護活動集会(学会)」の開催もふえてきています。
- (2)薬剤
- 2003年10月に第4回薬剤部門県連代表者会議を理事会の主催で開催し、第3回以降2年間の実践の上に立って、薬剤師をめぐる情勢や現状についての認識の一致、民主的集団医療の薬剤部門での取り組みの交流と課題を認識すること、後継者問題・育成問題、保険薬局をめぐる情勢と経営問題の認識の共有化などを目的に交流しました。また、医療安全交流集会での問題提起をふまえ、薬剤部門の課題として、(1)医薬品の専門家としての職能と責任を改めて問い直し、事業所内での薬剤師の役割をさらに高める、(2)薬事に関する民主的集団医療としての薬事委員会の機能を高める、(3)薬剤師としての処方点検のレベルアップと、これを保障する仕組み作りを強める、(4)新薬評価を定着させる、(5)副作用モニターの取り組みを強めながら副作用を回避する対策を講じる課題が提起されています。
- 薬剤師不足は、依然として深刻であり、2002年6月に開催した「薬学生対策担当者交流会」の到達点をふまえて、とりくみを強化することが大切です。薬剤師確保の困難性(とりわけ保険薬局での困難性)を地協・県連で共有し、体制もとり、大学との連携、低学年対策、実習受け入れや就職説明会などを旺盛に取り組むこと、就職説明会、実習・見学でのつながり名簿を情報化し活用し、外部情報メディアの活用をすすめることなど具体化が必要です。
- 病院薬剤師に求められる課題は、チーム医療のメンバーとして医療安全への貢献、リスクマネージメント、病院機能評価、感染対策など多くあります。薬剤供給から薬学的な管理面で技術を発揮できる力量、体制づくりが急務です。
- (3)放射線
- 2003年8月末の病床区分の選択(一般病床か療養病床)以来、放射線技師の業務も2極化する傾向にあります。一般病床を多く選択した病院は業務量が増え、療養病床を多く選択した病院は撮影件数が減少しています。その中で、放射線分野では機器のデジタル化や高性能化(マルチスライスCT)が進み、オーダーリング、電子カルテの普及に伴い画像管理システムの検討・導入がすすみつつあります。
- 放射線技師は医療IT化の中で院内のシステムづくりに積極的に参加し、各院所に見合ったシステムの構築や運用を考えていく必要があります。
- 医療の安全性に関して、各施設では安全管理マニュアル、院内感染防止マニュアル、医療事故防止マニュアル、ヒヤリハット報告の活用などがおこなわれてきていますが、放射線部門の経験交流を全国または地協単位で行っていく必要があります。
- 県連部会、地協の活動に格差が出てきています。今期、地協放射線代表者会議が開催されず、交流集会・研修会等が北海道・東北、中国・四国と二つの地協でできませんでした。地協の中で活動する意義、役割を再確認し活動を強化していく必要があります。
- ここ数年放射線科の管理者(科長、技師長)が、病院管理部に転進していく例もあり放射線科内の世代交代が進んでいますが、後継者養成が重要です。1991年に作られた「放射線技師政策」の見直しをあらゆる分野から行うことが必要です。
- 全国的に交流すべき課題として、(1)医療情報システム、(2)医療機能評価、(3)職能団体の取り組み、(4)放射線技師政策の見直しなどであり、到達点の確認と経験交流のために全国放射線交流集会を第36期に開催します。
- (4)検査
- 京都の「事件」が検査部門から発生したものであったこともあり、今期は検査における部門管理のあり方や質・安全性の確保の問題が特にクローズアップされました。2003年12月に開催された検査部門の全国交流集会では、検査部門の第三者評価としてISO15189の認証経験が報告され関心を集めました。また、京都での行政指導をふまえた全日本民医連理事会の見解発表を受けて、県連や法人内での特定事業所への検体検査委託のあり方の整備がすすめられました。検体検査の外注化は一層拡大し、それに伴う検査部門の縮小や再編が進んでいます。そうした状況の中で「検査機器にしがみついている時代ではない」(交流集会まとめ)という認識のもとで、検査技師の職能を生かした新たな活動分野拡大の取り組みが全国各地で展開されています。病棟、健診、医療安全室などでの検査技師活動が始まっており、多くの職種の接点で活動してきた経験を生かして経営幹部として活躍する技師も増えています。一方、検査技師の新規採用は抑制されており、技師の平均年齢は上昇し続けています。後継者育成についての方針の確立が必要です。
- (5)栄養
- (1)患者・利用者の立場に立ったおいしい食事づくり、(2)栄養指導の重視、(3)安全性の重視、(4)医師・看護師など他職種との協働などを重点に栄養部門の活動に取り組みました。
- とくに地域の要望に応えた配食サービス、調理師の病室訪問活動、嚥下食の工夫、チーム医療の中で主体的な栄養アセスメント活動などが各院所で進んでいます。
- 一方、入院時食事療養費の引き下げ、給食の保険外しの動きなど、栄養部門を取りまく情勢は大きく変化してきています。こうした中で給食のセンター化の経験もうまれ、新たなとりくみを準備するところもでてきています。栄養部門をめぐっては転換期を迎えています。栄養サポートや地域での食事への関わりなど、新たな課題も提起されています。その際、今後の栄養部門のあり方に関わって主体的な議論・検討が重要です。民医連らしい栄養部門のあり方を考えあいながら、たたかう栄養部門として地域でのとりくみが大切です。
- (6)臨床工学技士
- 近年、臨床工学士の業務が透析以外にME機器の管理などへ業務が拡大してきています。このことは医療安全の水準を引き上げる上でも重要な課題です。4年ぶりに臨床工学士の業務内容や実態調査を行いました。期待される役割が発揮できるよう、交流をすすめます。
- (7)リハビリ
- 医療再編や診療報酬の改定、介護保険制度の実施などリハビリをめぐる状況が大きく変わる中、リハビリ技術者の位置と役割も変化を求められています。
- 第35期、リハビリ技術者委員会では、全国の院所・施設に向けてアンケート調査を実施しました。いくつかの院所を指定して「診療報酬アンケート」を行ない、経営改善の方策を探りました。また、地域リハビリ活動研修会を開催し、回復期リハ病棟の分科会をもつなど、多彩な企画で学びあいました。
- リハビリ技術者は、リハビリへのニーズの高まりにこたえ、専門知識や技術を生かして多様な分野で活動しています。介護分野をはじめその職域もいっそう拡大しています。PT・OTの常勤職員数は、前期との比較でPT、OTともこの2年間大幅に増加しています。しかし、高齢者や障害者が地域で安心して暮らせるように質の高いリハビリサービスを提供するためにはPT・OT数はまだまだ不足しており、在宅分野での専任化や複数化が課題です。STの開設や精神科作業療法を重視します。継続したリハビリ技術者確保や育成のとりくみや研修が全国的に大きな課題となっており、県連、法人でのリハビリ分野の方針化・政策化が重要です。介護、リハビリ分野での質の確保、安全性について積極的に追求する必要があります。とりわけ、医療事故の四割を占める転倒・転落事故の予防策の確立が求められており、リハビリ技術者の役割を強めていかねばなりません。県連の部会活動がいっそう重要です。県連代表者会議の定例化など地協レベルでの活動を検討します。
- (8)針灸・マッサージ
- 「保険診療に対する意識アンケート調査表」の検討と調査の実施を2003年12月に実施し、部門として安全マニュアル(案)の作成にむけて検討を開始しました。鍼灸部門においては、鍼灸療養費制度が緩和され、制度活用により鍼灸治療患者数を大幅に改善させた施術所が現れました。物療部門では、理学療法U施設基準内でVの請求が出来るマッサージ師がいる一方、消炎鎮痛等処置では一部後退も生まれています。部門ニュースも継続的発行を行いました。第36期は、鍼灸マッサージ部門をめぐる状況の情報交換、地協・県連・院所などの活動交流とともに、鍼灸・マッサージ部門の安全性向上、「安全マニュアル」の作成と徹底、鍼灸マッサージをめぐる保険診療をめぐる運動を重点にとりくみ、活動交流をすすめます。全日本民医連として総会議案など民医連方針の点訳化をおこないます。
- (9)保育
- 保育交流集会を2回開催しました。2002年度初めて小児医療研究会との合同での開催し、保育・小児の両分野でも改めて父母への子育て支援が今後の重要な課題になっていることが確認されました。
- 民医連の院内保育所の縮小や廃園がすすんでいますが、一方で民医連の優位性を生かして、地域の子育てネットワークに参加する実績を積み重ねるなかで、認可保育園を目指す動きもでています。
- 保育団体連絡会と共同し厚労省交渉など、民医連の院内保育の運動のみならず地域を基盤に保育運動を前進させる取り組みにも力を入れてきました。
- 今後の課題として、(1)民医連内の院内保育所のあり方「民医連保育の基本」に立ち返り、院内保育所としての役割を大いに検討すること、(2)共同組織や地域の支援団体と連携した地域の「子育てネットワーク」づくりをすすめる、(3)「院内保育所運営補助金」の要綱改善・充実を求める運動とあわせて、院内保育所の特別保育(夜間、病児、医療との連携の子育て支援)を自治体や国に認めさせる運動、(4)保育世話人会を中心に、県連や地協ごとの交流をすすめることなどです。
- (10)SW
- 情勢の反映から、相談内容は深刻さを増しており、患者・地域住民の人権の守り手として、情報の発信と権利擁護など「打って出る活動」を呼びかけ、地協を軸に交流をすすめてきました。
- 民医連のSWは600名を超える集団となっています。経験5年目未満が5割を超えており、今期も2回目の初任者研修会をおこない、「権利としての社会保障」「民医連SWの役割」を学びあいました。今後は、過去2回の研修会をテキストにまとめ、SW集団を構成できない県連も多いことから、地協を軸に初任者研修会を開催できるよう準備をすすめます。
- 「SW政策指針」を発表し、各県連での政策づくりを呼びかけました。4県連で作成され19県連で検討が進められています。ひきつづき県連政策づくりを援助し、そのもとに(1)初任者研修の充実・改善、(2)ベテラン幹部の機能発揮、(3)中堅層の研修と教育開発にとりくんでいきます。
- 社会福祉士ならびに精神保健福祉士資格取得者が5割を超えています。ひきつづき資格取得と職能団体への結集をつよめます。
- (11)事務
- 事務委員会の活動として、青年事務職員の養成に焦点をあて優れた事業所のとりくみの教訓を深めることを中心に、電子カルテを導入した病院見学と活発な活動を行っている県連事務委員会の経験を学び、発信しました。電子カルテ導入に伴う事務労働の変化の中で、他職種への転換やあらたな業務拡大を行っている経験が生まれています。また、福井民医連の事務委員会との懇談では、青年事務職員が民医連職員としての自覚を高め、日常業務とあわせ、平和・社保、共同組織の活動に主体的に参加している活動について学びました。教訓として(1)青年職員の気分や感情を大切にし、トップが教育活動を中心に据えていること、(2)諸課題を職員全体で議論し横のつながりやコミュニケーションを大切にし、全員で行動していること、(3)意見を異にする人を放置しないで仲間を大切にする職場風土作りなどがあげられました。一方、京都の事件では保険請求にかかわる専門性が問われました。また、この間、いくつかのところで経理、保険請求、行政への届出などで実務・専門性が問題となっています。窓口や会計の対応、人権感覚も鋭く問われる情勢です。「さわやか相談カードにとりくみ、つかんだ事例の問題解決をすすめ院内への発信、一方、パート職員ふくめ全職員で私のキャリアアップ計画にとりくみ、援助し合い、成長を実感している。私の職場は日本一」(50周年応募入選作品)、といわれるような生き生きとした活動も展開されています。病院、職場あげて保険請求実務認定試験にとりくんでスキルアップに挑戦している経験もあります。事務職にとっても存在意義が問われる時代です。各地協・県連の事務委員会活動の強化し、事務政策の見直しと行動計画指針の提起、ITの活用、患者相談、サービス向上、安全性への積極的なとりくみ、地協、県連での研修会、交流会の開催などすすめていきます。経験に学び、大いに役割を強めていきましょう。
- 第二章 激変の情勢と私たちの基本的立場、
たたかいの方向
- (1) 時代認識(時代をどうみるか)と私たちの基本的立場と
たたかいの方向
- 「戦争推進・市場・競争原理至上主義」勢力がいよいよ「牙」をむき出しにしてきました。「弱肉強食」「武力と金」を最大の価値基準とし、世界と日本で、これまでのかちとられてきた権利を根こそぎ奪い社会のあり方そのものを変えようとするものです。そして軍国主義復活の足がかりをつくろうとしています。しかしこの路線が強まれば強まるほど、国民各層の要求や生活との矛盾は確実に広がります。国民の中には根強い平和主義の思想が存在します。先の総選挙での民主党への期待は、一面で今の小泉改革への批判の表れと見ることができます。しかし、民主党もまた、憲法、消費税増税など根幹において自民党・公明党政治と大差はなく国民の期待に応えうるものではありません。圧倒的な国民は医療社会保障の拡充を願っており、憲法守れ、イラクへの派兵反対です。どれだけ、ねばり強く、国民や社会に働きかけ、草の根から「共同の力」を広げていくことが出来るかどうか、この2年間重要です。
- 20世紀は戦争の世紀といわれますが、一方で二つの世界大戦への深い反省の中から確立された「武力行使・威嚇の禁止」をふくむ国連憲章の制定による平和秩序の確立という人類の重要な進歩を実現した世紀でもあります。その中で日本は第二次世界大戦で300万人以上の犠牲者を出し、アジアをはじめとして2000万人以上の生命を奪った侵略戦争を引き起こした国としての反省から平和憲法を制定し、60年近くにわたって1人の戦死者も戦争による犠牲者も出していません。戦争放棄をうたった「9条」を定めた日本国憲法は世界に先駈けた日本国民の宝です。その平和憲法の改悪がはじめて政治日程に上り、戦後初めて自衛隊が戦場へ出兵するという緊迫した情勢を迎えています。歴史の歯車を後戻りさせてはなりません。私たちは、この2年間、社会進歩をすすめる一員として、なによりいのちを守る医療人として「平和と憲法」を守るためにあらゆる組織との連帯を強めます。
- 医療・社会保障は憲法で誰もが等しく保障された「人間らしく生きる権利」です。その医療、福祉を、お金のあるなしで売り買いする「商品」としようとするもので、断じて許されません。人権としての社会保障・医療保障の改善を求める国民的運動をあらゆる団体・学者・個人・政党にはたらきかけ運動を強めていきます。全日本民医連はそのたたかいの先頭に立って奮闘します。
- 情勢を見るわたしたちの視点、立場は「この日本社会の中で、もっとも困難な人々の要求や実態をふまえ、その原因がどこにあるのかを分析し、現状を変革する立場にたつことです。あきらめないという立場です」(第35期第2回評議員会方針)ということです。私たちが、最も困難な人々の立場、目線に立つとさまざまな矛盾が見えてきます。この視点を、日常業務の中で、より研ぎすますことが重要です。
- 人々の生活の場である「地域」は政治の矛盾の縮図となっています。「地域」から「連帯と共同」を育み、「安心して住み続けられるまち」にしていくとりくみが一層重要となっています。「より開かれた民医連」として地域の医療機関、医師会、行政機関、町会や団体、市民運動と共同して「安心して住み続けられるまち」づくりの運動を広げましょう。民医連の事業所、共同組織はその推進力となり、地域からあらたなうねりを作り出していきましょう。
- (2) 平和・政治・医療・社会保障をめぐる動向と国民生活
- 1.平和と憲法をめぐる状況
- この2年間は、平和と憲法をめぐって重大で緊迫した情勢の進行が予測されます。アメリカ・ブッシュ政権によって「9.11同時テロ」を契機として進められたアフガンへの一方的攻撃と政権転覆、世界中の反戦世論を踏みにじって強行されたイラク攻撃は、「アメリカ一国主義」に基づくものです。それは、国連中心の平和秩序の確立という国際ルールを無視し平和を願う国際世論に敵対するものです。
- 小泉内閣はこのアメリカ・ブッシュ政権に無条件に追随し、その求めに応じて自衛隊派兵を強行しようとしています。イラクへの派兵は戦場への軍隊派遣に他ならず、イラク国民に銃口を向け「殺し殺される」事態が生じる可能性がきわめて高く、二重三重に憲法に違反することは明らかです。
- だからこそ、自民党は憲法そのものの改悪を公言し2005年には「改正案」をまとめるとし、民主党も2006年までには「改正案」のとりまとめを行なうとしています。2004年の通常国会には憲法「改正」に向けた国民投票法※39の提出が準備されており、教育基本法の改悪も期を一にして進められています。憲法「改正」の本質は9条の改悪にあり、国民多数の意志に背くものです。私たちは平和憲法を守り抜く立場から、幅広い層と共同してとりくみを進めます。
- 2.政治の動向
- 小泉内閣は2004年度予算案を決定しました。この案は、来年度に年金の大改悪をはじめ、庶民増税を予定し、今後10数年にわたって国民に大変な負担を強いる内容となっています。一方で、大企業奉仕や公共事業の浪費構造、軍事費は温存されています。現状でも大変な痛みをさらに激痛にする予算案です。
- 税制をめぐっても、2007年度に消費税率の引き上げる方向を打ち出しながら、一方で所得税を中心とする大増税が計画されています。すでに2004年には、「配偶者特別控除」が廃止されます。これに加えて基礎年金への国庫負担の財源を口実に、2004年の税制改革では、年金への課税控除の縮小が検討されています。また、所得税に対する定率減税(一律20%、25万円上限)の縮小も検討されています。
- 医療分野への営利企業の参入、医療機関への株式会社の参入は、長年、アメリカと日本の財界がねらってきた戦略であり、一貫して強い圧力が加えられています。この意向を受けて、総合規制改革会議が12月22日に小泉首相に規制改革に関する「最終答申」を提出しています。この答申では社会保障各分野にわたって、営利化を推進しようとしていることが特徴です。まず、労災保険の民営化を打ち出しています。また医療分野では、厚生労働省がコンビニエンスストアーでの販売を認めた整腸剤など約350品目について、2004年の早期実施を求めています。さらに「混合診療」について、「新しい医療技術」も「混合診療を包括的に認める制度の導入をはかるべき」としています。
- 3.医療・社会保障をめぐる情勢・動向
- 小泉「改革」は日本の生活・医療・社会保障を大きく後退させることを目的としています。個々の医療・社会保障の改悪に留まらず、地方交付税の大幅な削減や特例法に基づく市町村の強引な合併は、各地の自治体が住民本位にすすめてきた施策に逆行し、例えば国民健康保険料や介護保険料の引き上げなど行政の住民サービスの低下をきたしています。自治体病院の廃止などとも連動し、人びとの生活の単位である「地域」「暮らし」を破壊しようとしており、許すことは出来ません。また、問題となっている医師名義貸し問題の背景には、医師の偏在と慢性的な医師不足があります。国民医療を守る視点から、この問題を捉え直す必要があります。
- (1)医療・社会保障をめぐる情勢
- ●年金改悪
- 2004年の通常国会へ提出予定の年金「改革」案は、史上最悪の改悪計画です。今後、14年間にわたって毎年年金の保険料を引き上げ、保険料を1.35倍にするという自動引き上げ計画です。給付は、逆に1.2割から2割近く減らされます。
- 現在、支給開始年齢が65歳まで先送りされる改悪が進行中です。これによっても給付総額は大幅に減らされています。
- また今回の改悪では、パート、アルバイトなどの短時間労働者にも年金加入を広げ、保険料収入を増やそうとしています。さらに未納・滞納者への強制徴収を強化しています。
- 現在、厚生年金受給者の平均受給額は月額で17万6953円、国民年金で5万0984円、自営業者で4万4,783円です。また、将来年金をもらえない無年金者も国民の3割を超えると予想されています。これではとても憲法25条に定める「健康で文化的な水準」とはいえません。日本銀行の調査(2003年9月)では、「年金だけで日常生活費程度をまかなうのもむずかしい」が5割を超えています。「最低保障年金制度」の確立など、安心して老後を暮らせる年金制度の充実が求められています。
- ●診療報酬改悪
- 12月18日の中医協総会は2004年4月からの診療報酬改定の大枠を決定しました。このなかで薬剤費・医療材料部分で1.05%(薬剤費0.89%、材料費0.16%)を引き下げ、診療報酬の本体部分については0%で据え置くことで決着しました。診療報酬全体では2002年度に続き2回連続のマイナス改定となります。あいつぐ医療改悪により、診療所や歯科医院では医療従事者は減少傾向にあります。また、国立病院の独立法人化に伴い、職員の削減も進められようとしています。この上さらに、診療報酬の引き下げが行われるならば、医療の安全性が一層脅かされることになります。
- 2006年には抜本的な診療報酬見直しが予定されています。診療報酬の引き下げ、保険給付範囲の縮小は、保険外負担の拡大につながらざるを得ません。このことを見越して、財務省は混合診療の全面解禁、すなわち保険外負担徴収の自由化を要求しているのです。
- 診療報酬を医療従事者の確保や医療安全確保の立場からとらえなおし、診療報酬の引き上げを国民的な運動にまで高めていくことが重要です。
- ●国民健康保険
- 国民健康保険は国保組合を除く2373万世帯(2003年3月速報値)の加入者に対し、国保料・税を滞納している世帯は455万世帯(2003年6月1日現在、厚生労働省調べ、以下同じ)と、加入世帯の19.2%にものぼっています。2000年からの3年間で85世帯、123%増加しています。5世帯に1世帯が滞納しているという異常な実態です。
- こうした滞納者に対し、2003年6月1日時点の短期保険証の発行数は94万5千件で前年より17万件増加、資格証明書は25万8千件、同じく3万3千件も増加しました。双方を合わせると120万件と100万件を超える世帯が正規の保険証が渡されていません。この他にも、公式の数字は発表されていませんが、保険証の未渡し(窓口での留め置き)や、未加入など保険証のない世帯も100万世帯を超えて存在しているものと考えられます。青年層を中心に保険証のないフリーターも急増しており、実質的な無保険者が広がっています。
- 国保をめぐる問題の焦点は、日本の誇るべき皆保険制度が、形骸化し崩壊しかねないという制度の危機が進行していることです。政府のすすめる対応・対策が、住民の命と健康を守るための制度をして、広範に人権侵害を引き起こさせています。
- またこの間、各地の運動の中で、保険料減免基準の拡大、国保法44条にもとづく一部負担金の免除、資格証明書発行要綱の改善などもかちとっています。これらを全国に広げる運動が求められています。
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