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甲状腺の病気/意外に多い、機能亢進症・機能低下症

放置すると心臓にも負担が

写真
丸屋 純
岡山・水島協同病院内科

 甲状腺とは、からだ全体の新陳代謝を促進するホルモン(甲状腺ホルモン)を出すところです。喉ぼとけの両側にあり、ラグビーボールのような形をしています。左右に1個ずつあり、真ん中でつながっています(図1)。片側の大きさが幅15{、長さ30〜40{で、親指ぐらいです。
 甲状腺ホルモンは生きてゆく上では欠かせません。このホルモンがなくなると1〜2カ月ぐらいしか生きられないといわれています。

 甲状腺ホルモンの量は、fT3やfT4という血液検査で測れます。このホルモンのバランスは、脳の一部(脳下垂体)から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)で調整されています。
甲状腺ホルモンとTSHはちょうどシーソーのような関係にあります。甲状腺ホルモンが多ければTSHは減り、逆に少なければTSHが増えます。甲状腺ホルモンの量が多いか少ないかは、甲状腺ホルモンよりもTSHに敏感に現れます。ごくまれに、脳下垂体の病気で両方のホルモンが減ることもあります。

図1 甲状腺の位置
図

しこりがあったら

 甲状腺の病気の分類には、ホルモンのバランスがくずれる「機能亢進症」「機能低下症」など機能から見たものと、甲状腺腫といって腫れの具合から見たものがあります。腫れ方にも「びまん性甲状腺腫」(全体が腫れる)、「結節性甲状腺腫」(一部分がしこりになる)があります。
 結節性甲状腺腫は良性の腫瘍や嚢胞(水たまりの袋)のほか、がんも含まれます。乳がんと同じように甲状腺がんも自分で触って早期に発見できることがあるので、首に気になるしこりがある方は早めに専門の内科か耳鼻科を受診しましょう。
 甲状腺の病気は意外に多く、男性では50〜100人に1人、女性では30〜60人に1人の割合です。ここでは甲状腺の病気でもっともよくみられる「機能亢進症」「機能低下症」についてお話ししましょう。

甲状腺機能亢進症

イラスト
ひょっとしたら甲状腺の病気かも…
イラスト・いわまみどり

 甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが出過ぎて働きがつよく出る病気です。多い症状は、甲状腺が腫れる、頻脈(脈が速くなる)、手の指が震える、汗をかきやすくなる、たくさん食べるのにやせる、イライラする、疲れやすい、ときどき手足の力が入らなくなる(周期性四肢麻痺)などです。多くの場合、甲状腺は腫れて大きくなりますが、腫れの程度と病気の強さは必ずしも一致するわけではありません。また、眼球が突び出したようになる眼球突出は有名な症状ですが、実際にはそれほど多くありません。さらに、若い人は症状が出やすく、中年を過ぎると出にくくなります。

原因は――
 甲状腺ホルモンは、TSHが甲状腺の細胞表面にある甲状腺ホルモン受容体(レセプター)に結合することで刺激を受け、分泌されます。
 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンではないのに、同じように受容体を刺激する蛋白質(抗甲状腺受容体抗体)ができて甲状腺ホルモンが多くなりすぎるものがほとんどで、「バセドウ病」とも呼ばれます。免疫の働きがおかしくなり、体内の正常な組織まで排除する「自己免疫疾患」のひとつです。なぜそのような反応が起こるのかは、いまだに原因がよくわかっていません。
 甲状腺を顕微鏡で見ると、甲状腺濾胞といういくつもの小さな袋にホルモンを貯めている、「ため池」のようなつくりになっています。慢性的に起こっていた甲状腺の炎症が急に強くなった場合などにも、ホルモンが「ため池」から血液の中へ一度に流れ出して機能亢進を起こすことがあります(無痛性甲状腺炎や橋本氏病の急性増悪)。まれに、やせ薬や漢方薬に甲状腺ホルモンが入っていて機能亢進になる場合もあります。
 甲状腺機能亢進を放っておくとどうなるでしょうか。頻脈が続くと心房細動などの不整脈が起こりやすくなり、ひどくなると心不全となって寿命が縮むといわれています。骨粗鬆症なども起こりやすくなります。

治療法は――
 治療には3つの方法があり、それぞれに長所と短所があります。

〈内服療法〉
 甲状腺の働きを抑える薬を飲みます。症状が強いときには1日6錠から、軽ければ1日3錠から薬を飲みます。ホルモンのバランスを見ながら徐々に薬を減らしていきます。2年程度は薬を続けないと、薬をやめた後の再発率が高くなるので、症状がなくなっても根気よく薬を続けなければなりません。寛解率(薬が要らなくなるまでに治る割合)は、2年間で30%程度です。
 この治療の長所は、薬を飲むだけなので簡単なこと、比較的お金がかからないことです。短所は時間がかかること、ときにじんましんなどのアレルギーが起きたり、白血球が減ってしまう副作用があることです。肝機能障害や関節炎、血管炎などが起こる場合もあります。
 白血球が極端に減った場合(無顆粒球症)は扁桃腺炎が起きて喉が痛み、高熱がでます。このような症状が現れたら、直ちに服薬を中止して病院で血液検査を受け、白血球の数を調べる必要があります。早期に対処すれば、問題はありません。この症状は薬の飲み始めの2〜3カ月で起こることが多いので、この期間は2週間おきの血液検査がすすめられています。

〈外科療法〉
 大きく腫れた甲状腺を手術で切って小さくする治療法です。
 手術前には、内服薬で甲状腺ホルモンのバランスを整えておく必要があり、その後に手術をします。入院で全身麻酔が必要です。寛解率は40〜60%ぐらいですが、手術後に甲状腺の機能が低下し、薬を飲まないといけなくなる場合もあります。
 この治療の長所は、治療にかかる時間が短いこと、治療後の再発が比較的少ないことです。短所は傷跡が残ること(美容上の問題)と、入院しなければならないことです。

〈放射性ヨード内服療法〉
 放射性ヨードをカプセルに入れて内服します。放射性ヨードは甲状腺にとりこまれ、大きくなりすぎた甲状腺を放射線で焼いて機能を抑えます。外来で治療できますが、妊娠の可能性のある女性には使えません。
 また、放射線科のある大きな病院でないと薬が処方できません。寛解率は約50%ですが、機能低下になる場合もあります。
 アメリカなどでは一番多く使われる治療法ですが、日本人は放射能というと原爆をイメージする人が多いためか、あまり好まれないようです。
 この治療の長所は、薬のアレルギーなどがあって、内服療法ができない人でも治療ができることです。手術後の再発などにも有効です。
 短所は薬の処方ができる病院が限られ、近くに大きな病院がない場合は遠くまで通院しなければならないことです。また、放射線による副作用・がん発生の危険性などはないとされますが、若い人にはすすめていません。

甲状腺機能低下症

表1 甲状腺機能低下の人が受診する理由
診察科 症状
内科 循環器科 徐脈、狭心症、心不全
消化器科 便秘、食欲低下
神経科 筋力低下、めまい、筋肉痛、けいれん
血液内科 貧血
腎臓内科 顔面浮腫(むくみ)
整形外科 関節痛、筋肉痛
精神科 うつ状態、認知症
皮膚科 毛髪脱落、皮膚の荒れ
耳鼻科 めまい、嗄声(しわがれ声)
婦人科 月経過多、無月経

 甲状腺ホルモンのバランスが崩れるもう一つの代表的な病気が、甲状腺機能低下症です。
 ホルモンが不足し、新陳代謝が衰えます。血液検査ではコレステロールが高くなることが多いので、コレステロールの高い方は一度は甲状腺ホルモンの検査も受けておくほうがよいでしょう。
 主な症状は、元気がなくなり寒がりになる、むくみが起きやすくなる、便秘になる、白髪が増える、髪がぬける、声がしわがれてくる(嗄声)、疲れやすいなどです。
 しかしはっきりした症状がなく、内科以外の診療科へ受診してしまうような症状が強く出る場合もあり、注意が必要です(表1)。

原因は――
 とくに原因がはっきりせずに甲状腺の働きが落ちてしまう場合(原発性といいます)や慢性甲状腺炎(橋本氏病)による場合がほとんどで、まれに下垂体に原因がある中枢性甲状腺機能低下の場合もあります。
 放っておいてむくみがひどくなると心臓の周りまで水が溜まることがあり、心機能が低下します。また、コレステロールが増えて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった病気が起こりやすくなります。

治療法は――
 不足している甲状腺のホルモン剤を飲んで補充をします。
 甲状腺ホルモンは、もともと体の中にあるものですから、量さえ間違わなければ副作用の心配なく飲める薬です。普通1日に1〜2錠を飲み、ホルモンのバランスを見ながら薬を加減していきます。多くの場合は、根気よく生涯にわたり薬を続けなければなりません。
 ホルモンのバランスがとれれば、3カ月から半年おきの血液検査で十分ですから、飲み忘れなどがないように継続して内服しましょう。

ヨードの摂取に気をつけて

 治療をおこなう場合には、ホルモンのバランスを調整するために、はじめは1週間〜1カ月おきに血液検査が必要です。薬の副作用が出ていないかどうかを調べるためにも必ず受けましょう。
 そのほかに、甲状腺超音波、CT(断面撮影)などのレントゲン検査、シンチグラフィー(注)などの検査を必要に応じておこないます。
 規則正しい生活をして、適度な運動と適度な休養をとることが大切です。喫煙やストレスは、甲状腺の病気に悪影響を及ぼします。
 最も気をつけてほしいのは機能低下の人の食事です。機能亢進の場合は検査前などにヨードを制限した食事にすることがありますが、日常生活では大きな制限はありません。日本人はヨードが含まれるのりなどの海産物をよく食べていて、1日0・05〜0・15{程度という必要量に対し、0・2〜1・5{もとっているとの報告もあります。
 ヨードは甲状腺ホルモンの原料になるため、取りすぎるとホルモンが増えて機能亢進になりそうなものですが、体がバランスを取ろうとして逆にホルモンの分泌量を抑えてしまいます。
 分泌量が抑えられても、通常は徐々に戻りますが、機能低下症の人はそのまま低下の状態が続いて病状を悪化させる場合があるため、ヨードを控えた方がよいとされます。具体的にはのりやわかめは食べず、昆布だしは週に1回程度にしてかつおだしにするなどです(表2)。

表2 食べものなどに含まれるヨードの量

●非常に多いもの、 ○比較的少ないもの
●昆布(乾) 1.7mg/g
●ひじき(乾) 1.5〜2.0mg/g
●のり1枚(3g) 0.21mg/枚(0.06〜0.08mg/g)
●わかめ(乾) 0.1mg/g
●寒天(乾) 0.018mg/g
○のり佃煮(乾) 0.0004mg/g
●ヨード卵 0.04〜0.07mg/個
○ふつうの卵 0.00025mg/個
○いわし 0.00026mg/g
○豚肉 0.000017mg/g
○白米 0.000039mg/g
●昆布だし 1.15〜2.26mg/ml
●昆布茶 0.19〜8.01mg/ml
ポン酢しょうゆ 0.0005〜0.5mg/ml(種類による)
●イソジンガーグル 14mg/2ml(1回分)
(うがい液)

 魚類はやや多いが取りすぎなければ問題ない。肉、野菜、果物などは少ない。牛乳や椎茸なども少なく、●を避ければほぼ大丈夫。

 

妊娠・出産の注意

 最後に、甲状腺の病気は若い女性にも比較的多く見られるため、妊娠・出産時の注意をお話しします。
 機能亢進でも機能低下でも、妊娠しにくくなります。医師と相談して、甲状腺疾患の調子のよい時期に計画妊娠するようにしましょう。
 機能亢進の場合は、妊娠中に薬の種類を切り替える場合があります。また、妊娠中には体内に必要な甲状腺ホルモンの量が3〜5割増しになります。妊娠中に甲状腺ホルモンが少なすぎると、胎児の神経発達が悪くなるといわれていますので、妊娠中は機能低下症のホルモン補充量をやや増やすこともあります。
 出産後は、免疫機能が高まるため甲状腺機能亢進や機能低下になる率が高く、産後の肥立ちが悪いなどといわれている方に、甲状腺機能のバランスが乱れている方がふくまれていることがあります。体調が悪い場合には、甲状腺ホルモンの検査も受けてみましょう。

気になる人は受診を

 甲状腺の病気は頻度が高いわりに症状が軽いことが多いため、見逃されたり、放置されていることが多いものです。簡単な血液検査でホルモンバランスも測定でき、各種の治療方法が確立されています。気になる点がある方は、ぜひ病院を受診してみましょう。

(注)シンチグラフィー 甲状腺の腫れた部分に取り込まれる性質を持つ微量の放射線物質を使用して特殊な装置で撮影する。


【訂正】前号19ページ3段2行目「ALTが正常値でも血小板が31万を」を「ALTが正常値でも31を」、同じく4行目「30万未満」を「30未満」におわびして訂正します。

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