MIN-IRENトピックス

2012年7月23日

「エネルギー・環境に関する選択肢」へのパブリックコメント

全日本民主医療機関連合会
会 長   藤末 衛

<意見の概要>

 原発を再稼動せず0%とせよ。視点に、憲法25条に則り国民の健康権を守ることを加えること。100%再生可能エネルギーへの大胆な転換と省エネ政策の強化、火力のLNGへの燃料シフトで2030年温室効果ガス25%削減政策をめざせ。

<意見の理由>

 今回示された「選択肢」は3つあり、それぞれ、2030年の発電電力量における原子力発電の割合を軸に選択にするというものになっています。
1.0%にする(ゼロシナリオ)
2.15%にする(15シナリオ)
3.20~25%にする(20~25シナリオ)
ゼロシナリオでは、2020年の温室効果ガス排出削減数値目標は0%とされ、原発ゼロを選べば、地球温暖化対策の放棄を選ぶことになるようになっていま す。しかし地震多発国の日本で、ゼロシナリオ以外に国民の命と健康を守り、経済を発展させ、雇用を増やすシナリオはありません。
以下に私たちの意見に関わる論点を6点にわたり示します。

論点1.今後のエネルギー政策の基本に国民のいのちと健康を守ることを明確に掲げるべきではないか。すなわち視点の第一に憲法にもとづき、国民の健康権(注1)を守ることを明示することを求める。

(注1)健康権は、日本も批准している国際人権規約、WHOの健康戦略、社会疫学の発展の中 で明らかにされてきた基本的人権である。いのちの尊厳、到達可能な最高水準の環境、安全な食糧の確保、安全で家族が安心して生活できる居住、労働、教育、 プライバシーの保護などを無差別平等・公正に享受する権利である。福島第一原発事故は、被災住民を始め多くの国民の健康権を根こそぎ奪ってしまった。

論点2.原発を再稼動せず0%にする(注2)ことを求める。原 発は、クリーンエネルギーではなく、CO2を大量に発生させる(注3)。日本では、1970年以後原発の増設による発電量の増加とともにCO2の排出量は 大幅に増えてきた。原発は他の発電と違い、常にフル稼働が求められ夜間に発電をとめることが出来ないため、夜間電力の活用の名の下に「24時間社会」や、 「オール電化」などエネルギー多消費構造が推進されてきた。原発が多消費構造社会の軸になっているのである。15と20~25シナリオは今後いずれも新た な原発の建設に向かう計画であり、CO2の排出量を増加させる計画である。

(注2)2010年現在の原子力発電は26%として提示されている。2011年の福島原発事 故後、福島第1・第2原発、女川原発、日本一危険とされる浜岡原発などが当分の間動かないこと、発電開始後40年以上たった原子炉は廃止するという前提で 考えると、15%シナリオでも新たな原発の建設に向かうシナリオであると考えられる。従って、我々の選択肢は0%シナリオしかない。
(注3)ウランの核分裂自体はCO2を出さない。(1)しかしウラン鉱山からウラン鉱を掘り、精錬して天然ウランとし、3~4%の低濃縮ウランに濃縮する 過程で大量の化石燃料を必要とする。また、使用済み核燃料を冷やし、キャスクにつめて処理場まで運ぶ過程でも多量のCO2を出す。(2)さらに出力100 万KWの原発は、300万KWの熱出力を生み、電気として利用できるのは100万KWで残りの200万KWは海に捨てている。毎秒70トンの海水を引き込 んで、その温度を7℃上げている。海水の温度を上げるときに海水に溶けている炭酸ガスを多量に排出する。

論点3.脱原発と地球温暖化対策は両立することを前提とした選択肢を立案せよ。脱 原発と地球温暖化対策は両立できる。今後CO2:25%削減を視野に、(1)エネルギー多消費社会構造を改め、(2)発電ロス、産業、運輸、業務、家庭の 全ての分野毎に省エネ目標を明示すること。(3)また、省エネ技術の開発(省エネ家電や低燃費車など)の促進など省エネルギー政策の強化をおこなうべきで ある。

論点4.脱原発、かつ100%再生可能エネルギーをめざす選択肢を設け、その道筋を示すべきではないか。太 陽光、風力、バイオマス、地熱、中小水力など再生可能エネルギーへの転換についてIEA(国際エネルギー機関)加盟国の最近20年間の変化をみると再生可 能エネルギー比率が後退し、かつその比率が3%と最も低いのが日本である。100%再生エネルギーにむけた大胆な政策転換が不可欠である。

論点5.電力の地域独占をやめ、はっきりと地域分散型の発電とすることを明示すべきではないか。また、「脱化石燃料」で100%再生可能エネルギーを目指していく過渡期の火力での調整に、当面CO2の排出を出来るだけ減らす火力発電の強化と燃料については石炭からCO2排出の少ない天然ガスへの燃料シフトを明示することが不可欠である。

論点6.以上の取り組みで、雇用を増やし、経済を発展させつつ、CO2:25%削減が可能となる政策とすること。

(PDF版)

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