MIN-IRENトピックス

2012年7月28日

【2012.07.28】生活保護へのバッシングに抗議し、権利としての制度の充実を求めます

2012年7月28日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛

ソーシャルワーカー委員会

 現在日本では非正規労働者や失業者が増加する中、今年2月には生活保護の受給者が210万 人を超え、9ヵ月連続で過去最高を更新中です。しかし、わが国の生活保護利用率はわずか1.6%で他国と比べても著しく低く(ドイツ9.6%、イギリス 9.3%)、本来生活保護の対象となる人の2割程度しか受給できていません。
 そんな中、人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していることが報じられて以来、異常なほどの生活保護へのバッシングが続いています。国会でも取り 上げられ、小宮山厚労大臣は「給付水準引き下げの検討」まで言い出しています。報道や国会論戦によって、現在生活保護を受給している方の多くが傷つき、怯 えています。生活保護を受給することは恥ずかしいことだと思わせる世論が国やマスコミ等により作り上げられています。しかし恥ずべきは生活保護を受給する ことではなく、弱者を標的にして自己責任を強調し、国民の生存権を守る責任を破棄している姿勢です。
 私たちソーシャルワーカー(以下SW)が受ける相談の中でも、医療費・介護費という経済的問題の相談は大変多く、内容も深刻さを増しています。例えば 「自宅でコンピューターの仕事をしていたが、仕事がなくなり、借金をせざるを得なくなった。そのため受診することさえできなかった。病状が進行して受診し たときには癌の末期で、生活保護申請して治療を開始したが、2ヵ月後に死亡した55歳男性のケース」などです。2010年4月から2011年3月まで全国 の民医連のSWが相談にのった医療費調査3029件の中でも、生活保護を利用して医療費や介護費の問題を解決したケースは871件ありました。生活保護が もっと充実した制度であれば、早期に問題解決し救えた命もたくさんありました。
 自民党は「生活保護給付水準の10%引き下げ」「生活保護期間の有期制導入」等の生活保護政策を今年4月に発表しています。厚生労働省は「不正受給」を 口実に警察官OBを各福祉事務所に配置することを全国の自治体に指示しました。このような生活保護抑制の動きにより、ますます、生活保護を申請するハード ルが高くなり、餓死や孤立死・自殺するケースが増えるのではないでしょうか。雇用や医療・年金等の社会保障が貧弱なわが国では、生活保護は最後のセーフ ティネットなのです。
 今必要なのは、「貧困」問題の解決であり、憲法25条1「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、2「国は、すべての生活部 面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」を具体化した生活保護制度を守り、充実させていくことです。私たち民 医連のSWは、患者、利用者の人権を守る立場から、社会保障と税の一体改革に反対するとともに今回の生活保護へのバッシングに断固抗議し、権利としての生 活保護制度を守り、充実させていくことを強く求めます。

(PDF版)

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