民医連新聞

2004年11月1日

命によりそう(2) 介護保険 「見直し」 軽度要介護者は?

生活支援あれば社会とのつながり保てる
長野 SW 鮎沢ゆかり

 二〇〇五年の介護保険制度の「見直し」で厚生労働省は、要支援・要介護1など軽度要介護者について、ヘルパー利用などを制限し、ゆくゆくは保険から外す ことをねらっています。各県連が緊急に事例調査を行い、「暮らしが立ちゆかなくなる人たちが多数」と報告しています。調査に携わった職員の怒りの声を連載 します。

 「過剰なサービスが利用者の自立を妨げている」という厚労省の見解は、私たちが調査した事例に照らしても、事実とまったくかけ離れているとの印象をもち ます。長野民医連は今年六~七月の三週間で、軽度要介護者八三〇人に面接調査しました。うち一人の事例を紹介します。

 Aさん(九四・男性)は要介護1で独居です。当事業所とは九八年ころからの付き合いです。そのころ 高血圧の治療を中断していたAさんを訪問したら、重度痴呆の奥さんを一人で介護していました。その後ヘルパーを一日に三回利用しながら昼夜ずっと介護し、 三年前に看取りました。今は自分がヘルパーと通所サービスを利用しています。ヘルパーには午前一時間、午後二時間で、買い物・調理・洗濯・掃除・入浴の見 守りを依頼しています。

 Aさんの目標は「一〇〇歳まで生きること」。諏訪名物の「御柱まつり」は次回二〇一〇年に行われます。それを「もう一度見たい」と願っています。毎日、 新聞を読み、ときに俳句の会に出たり、鉢植えの手入れをして暮らしています。不燃物を捨ててくれる隣人、別に住み毎週訪れる娘さんもいて、自立した生活を 送っています。

 介護は、食べることや排泄・入浴など清潔など生活の基本のところを支援します。その支援が受けられない場合、高齢者の生活はそれだけで精いっぱいにな り、閉じこもりがちになるでしょう。基本的な部分をヘルパーが支援することによって、社会とつながりがもてるのです。

 サービスを受けながら生活しているAさんは「今日も楽しかった」と思い、「だから明日も元気でいたい」と考えることができます。彼の介護度はこの四年間 変わっていません。しかし支援がなくなれば、Aさんの生活は、いっぺんに危険度が増し、社会性も失う恐れがあります。

 長野民医連の調査では、軽度要介護者の約三分の一が独居で、必要なサービスを利用することで介護度を重度化させず、他者とのふれあいや社会性のある生活 をその人らしく維持しています。低い年金暮らしでも、保険であればこそ、なんとか支払いが可能です。「見直し」で、この条件を奪ってはなりません。

 当事業所のある下諏訪町の「ケアマネ研究会」で、私は「実態調査をして、厚労省へも意見を出そう」と提案してみました。すると「保険から外されたらやっ ていけない人ばかり」「署名をしたい」など、みな積極的に受け止めてくれ、緊急調査し広報をすることになりました。三〇五ケースが集まり、その結果は、 「軽度要介護者は全体の六~七割で、その五割は一人暮らし、介護保険の利用で生活を成り立たせている」など、県連の調査と同様であることが明らかになりま した。(下諏訪町在宅介護支援センター)

(民医連新聞 第1343号 2004年11月1日)

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