民医連新聞

2004年11月15日

安全・安心の医療をもとめて(30) 岐阜・みどり病院薬剤部

薬局が防いだ転倒事故――

 転倒事故と薬剤の関係について着目し、工夫を行った、岐阜・みどり病院の薬局のとりくみを紹介します。

転倒事例の約8割が睡眠薬服用

 一〇カ月間(二〇〇一年一一月~二〇〇二年八月)に、みどり病院の医療の安全性委員会に報告された転倒事例は九 一件でした。このうち痴呆・脳血管障害の患者様が八五・七%、転倒歴のある人は、七四・二%。九一件中、七〇人(七七%)の患者さんが睡眠薬・抗不安薬な ど、精神神経用剤を服用していました。特にトリアゾラムの服用が最も多いことが分かりました。また、二剤以上を服用していた人は二七人(三九%)にのぼっ ていました。

 この結果を受け、薬剤部は、睡眠薬の使用基準「第一選択薬は、筋弛緩作用の少ない酒石酸ゾルピデムにする」「トリアゾラム服用患者様は、可能な限り酒石酸ゾルピデムに変更する」ことを院内にあらためて徹底しました。

 結果、翌一〇カ月間(〇二年九月~〇三年六月)の転倒事故を振り返ると、睡眠剤が関わっていると思われる転倒を減らすことができました。

 また服用睡眠薬の種類も変化し、剤数も減って三種以上の服用はゼロになりました。

患者さんの変化に薬剤を確かめ

 この睡眠薬の使用基準を提案したのは薬剤部が薬剤と転倒との関係に、着目していたからです。同院の薬剤部は、か ねてから病棟の活動に深く関わっていました。毎日病棟に行き「今日はぼうっとしている」「昨日なかった傷ができている」など、患者さんの変化に気づいたと きは、まず薬剤の追加の有無や副作用を確認。すると、不眠時の訴えで、睡眠薬が投与されているケースが目立ちました。

 「トイレに行こうとして夜間に転倒」という報告書にも注目しました。睡眠薬の運動神経に対する作用を調べたところ、トリアゾラムは運動神経系に対する抑制作用(骨格筋弛緩作用)が強く、酒石酸ゾルピデムは少ないことがわかりました。

 「睡眠薬による転倒が減らせたのは、薬剤師が関わったから」と、薬剤師の今西正人さん。「入院中の高齢者の多くが睡眠薬を服用しているのには驚きもしま したが、いろいろ不安なことがあって、神経が高ぶったり、慣れない入院生活でなかなか寝付けない人は多いと思います。それを助けるはずの睡眠薬の投与が、 事故につながってしまっては困ります。睡眠薬による転倒は減らせる(なくせる)と考えました」。

(民医連新聞 第1344号 2004年11月15日)

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