民医連新聞

2004年11月15日

命によりそう(2) 介護保険 「見直し」 軽度要介護者は?

ヘルパー利用でなんとか生活維持できる人も
長野(2) ケアマネジャー 酒井清美

 前号に引き続き、「軽度要介護者調査」をした長野民医連の職員の声です。

 要介護度が軽くても、介護保険の在宅サービスを利用し、かろうじて暮らしが成り立っている人は多数います。もし保険給付が外されたら、すぐにも困難に陥ってしまうでしょう。Aさん(79)の事例です。

 彼女は要介護1・自立度A2、軽い痴呆(Ⅱa)があります。家族は夫(82)と息子(52)です。二年前に脳梗塞を起こし、右側がやや不自由になりました。一年前に左右大腿部骨折で、両側ともに骨頭置換術を受け、歩行器歩行になってしまいました。

 夫婦の年金は合わせて七万円弱です。長男も収入は多いとはいえず、長男の妻が二年前に他界してからは、Aさんが家事をしていました。

 今年五月、手術をした病院を退院し、住まいに近い当事業所に紹介されました。入院・手術というストレスからか、当初はやや痴呆気味でした。気丈な性格も あり、介護認定の調査員に「できます。大丈夫」と言っていました。「家事ができない」という事態を自分で受け止めきれなかったのかも知れません。

 しかし実際は家事は困難で、夫とともに介護認定を申請し、二人とも介護度1になりました。夫の方もたいへんです。変形性膝関節症に、痴呆による意欲低下 もあり、一日中寝ているような状態です。長男は朝から夜遅くまで仕事、その間は老夫婦だけです。

 ヘルパーを昼一時間、夕三〇分利用し、食事づくり・掃除、夫の尿パッド交換、安否確認を担当してもらっています。週二回デイケアを利用し、リハビリと入浴。これで何とか在宅生活を維持しています。

 Aさんのサービス利用料は月に一万四一四五円。夫婦合わせて二万七九五九円です。もし介護保険が利用できなく なったら、多額の自費が生活費を圧迫し、おそらく暮らしていけないと思います。またAさんの状態ではベッドは不可欠です。これが借りられなくなったら寝起 きにも支障が出ます。市のミニデイに行こうにもバス乗り場まで歩けません。ヘルパーがいなかったら、誰が食事を作り夫の失禁パッドを交換するのでしょう か。

 Aさんばかりではありません。当市には高齢者世帯が多く、日中独居もたくさんいて目が離せません。介護保険を 「見直す」のならば、問題のある「痴呆が低く出る認定」を改善すること、高齢者に対して外部とのふれあいの場を保障することなど、たくさんあるはずです。 高齢者を引きこもらせ、暮らしを困難にする「見直し」はゴメンです。
(老人保健施設はびろの里)

(民医連新聞 第1344号 2004年11月15日)

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