民医連新聞

2004年12月6日

新医師臨床研修だより―4― 高松平和病院

“病院全体で研修医を育てよう!”

臨床研修症例発表会

 【香川発】高松平和病院では、新しい臨床研修制度のもと、二人の新入医師が研修中です。内科の導入研修を終えた 一〇月、印象に残った患者様の症例をまとめ、「臨床研修症例発表会」で報告しました。「研修医が通るところすべてが研修の場」と、全職員が意識して研修医 に関わってきました。発表を聞き、その意味と重要性をあらためて確認しました。(末澤理恵、事務)

 医師研修委員会が開いた発表会は、病棟スタッフなど約八〇人が参加し、指導医が司会をしました。

 循環器病棟で研修した原田真吾医師はSさんの症例を発表しました。

 Sさんは呼吸困難、下肢・顔面の浮腫を主訴として入院、重い心不全と診断されても心カテなどの検査を拒否、薬と 安静で経過を見ることになりました。長年自営業をしていたSさんは倦怠感に耐えられず、「覚悟」して店舗兼住居を引きはらい、入院しました。病状が安定し た一カ月後のカンファレンスで、退院後の行き先も、生活手段もないことが分かりました。

 原田医師は、看護師やMSWとともに、「まずは生活基盤の確立を」と、在宅酸素の導入、身障手続き、住宅さがしを支援。意欲的なリハビリで歩行が回復したSさんは退院することができました。

 原田医師は、Sさんと深く関わり、「健康観や人生観の違う一人の人間に、どう向き合っていくかを学んだ」、と結びました。

 プライドが高く、高学歴で医師の知り合いも多く、「こんな若い医者に任せていいのか」とまで言ったSさん。しか し原田医師の誠実さに、だんだん心を開きました。退院後に訪問した看護師長にSさんは、「若いのに人間がしっかりしている。ぜひ育ててほしい」と原田医師 をほめるほどでした。

 もう一人、白成光(はくなりみつ)医師は、肝硬変から肝癌になったTさんに告知し、抗ガン剤治療を行った経験を報告しました。

 癌の告知を気丈に受け止めていたTさん。しかし、長引く入院生活に不安感を募らせるようになった心情を理解し、ていねいに接した白医師は「疾患へのマネージメントだけでなく、患者様を理解し、接する態度を学びました。患者様はすばらしい教師です」と発言しました。

 二人の研修医の発表について、指導医は、患者と信頼関係が築けていたことを評価しました。

 会のまとめで藤原高明院長は、「指導医だけが指導するのではなく、病院全体が研修の場になることをめざしましょ う」と述べました。参加した職員も、発表に感動するとともに、臨床研修指定病院としての歩みを確信しました。研修医から「温かく見守られていると感じた。 今後も続けてほしい」と要望が出され、発表会を位置づけていくつもりです。

(民医連新聞 第1345号 2004年12月6日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ