民医連新聞

2005年1月3日

会長から青年職員へ 新春インタビュー 明るい未来は可能だ

吉田 おめでとうございます。
肥田 おめでとう。希望の持てる年にしたいですね。
 イラクから各国が撤兵を始めているのに、日本は自衛隊派兵を延長しました。憲法九条を変える動き、増税、社会保障の切り下げと、日本の悪い政治だけ見ていると、未来がないように思えます。
 しかし世界を見ると、もう米国一辺倒ではない。流れは変わっています。スペイン、韓国、南米諸国、EUの動きをみても、軍事的な力で他国を支配する米国は孤立しはじめています。米国に追随する政権は世界では少数派なのです。
 軍事力で他国を押さえる国は、国内では国民の権利よりも国家を優先し、強い者を優遇し弱い者をないがしろにします。こうした新自由主義の政策に、世界で反対の動きが強まっています。ぜひここを見てほしい。
 「世界社会フォーラム」が「もう一つの世界は可能だ」とメッセージを示しました。弱肉強食の論理で戦争し環境を破壊する世界ではなく、人びとが安全に豊かに暮らせる世界が可能だというメッセージです。

本当の情報で考えて

吉田 正しい情報が必要ですね。
肥田 いま一方的に政府や企業側の考えが流されていますから、「それは本当なのか」と疑うことが大事ですね。「一方的な情報をうのみにして、戦争に巻き込まれていった」のが戦争体験者の教訓でした。今はその気になれば、インターネットや良心的な紙誌から、情報は得られます。
 たとえば年金生活の実情を知っていますか? 五万円ほどで生活している人たちが多いのですよ。いま政府が考えている介護保険「見直し」では、そういう人 がはじき出されてしまいます。医療と介護で二万円もかかり、残り三万円で送る生活が想像できますか?
 若者も高齢者も生きいきできる社会にするには、大企業と国が無責任じゃだめです。日本の大企業は、過労死するまで働かせたり、「欠陥隠し」したり、不道 徳的です。税金も社会保障の負担も先進国に比べて、実に少ないです。日本の大企業は「社会的責任」を果たしていません。
 いま「構造改革」で、もっと大企業の負担は減らし、国民の負担を増やそうとしています。
 医療の中にも「混合診療」などをもち込み、国民皆保険制度を壊そうとしています。私的医療保険が中心の米国では、無保険の人が四〇〇〇万人、六人に一人です。米国のようにしてはいけない。

安全を文化にする

吉田 「医療の安全」で、全国の病院と協同がひろがりましたね。
肥田 民医連のパンフレットを全国の病院に送ったところ、たいへん反響がありました。日本の医療安全の確立に貢献したのではないでしょうか。その点に確信をもって良いと思います。
 毎日忙しくてたいへんだと思いますが、みなさんの仕事は、医療界にも、地域の人たちにも影響を与え、日本の医療を一歩一歩すすめて、医療の安全を文化にまで高めているのです。
 患者さんの医療への参加も、医療安全をすすめる要素になっています。たとえば注射の時、患者さんと「どんな注射ですか?」「こういう治療です」といった やり取りがあれば、看護師が点検できるわけです。名前を毎回確認することも、患者さんの協力があってこそです。これが当たり前になると、国民と医療従事者 との信頼関係が強くなると思います。必ず変化しますよ。
 一致点で多くの人びとと手をつなごうと呼びかけてきました。医師会も、イラクの自衛隊派兵に反対し、混合診療に反対しました。国民の医療を守ろうとの、 共通項がひろがっています。単純ではありませんが、おもしろい時代になっていると思います。

外に向って手をつなぎ

吉田 平和と福祉が課題ですね。
肥田 国民の大多数が戦争には反対です。生活と生命を大事にする政治にしてほしい、税金の使い方を変えてほしい、国のあり方を考え直そうという方向になる可能性も大いにあります。どう団結していくか、だと思います。
 日本は加害の反省から、平和憲法をもち「絶対戦争しない」と誓いました。他国と比べると分かりますが、「戦争を放棄する」と書かれている憲法は他にありません。日本中の、世界中の「平和を願う」気持ちがここに凝縮されています。
 この平和憲法を守り、生かすことができるか、いま大きな岐路に私たちはいます。この時代に生きる一員として、「憲法を学び、感じ取り、生かしていく」。そういう二〇〇五年にしていきたいですね。

(民医連新聞 第1347号 2005年1月3日)

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