民医連新聞

2005年1月17日

安全・安心の医療をもとめて(32) “お食事カンファレンス”で誤嚥・窒息のリスクに対策

 京都・北病院では、誤嚥・窒息の危険を少しでも回避するために、多職種が参加して「お食事カンファレンス」を毎日行っています。同院リハビリテーション室主任の福田千代さんに聞きました。

 介護療養型の当院では、利用者が自分で、楽しく食べることをできるだけ尊重し、援助しようという方針でとりくんできました。しかし、障害を持つ高齢者の 食事には、常に誤嚥・窒息の危険が伴います。「入院直後からの迅速な評価と対策、多職種での評価・共有、確実に対策を実行するには、どうすれば?」と、話 しあい、考えだされたのが、すべての利用者が対象の「お食事カンファレンス」です。〇三年三月にスタートしました。

カンファレンスの流れ

 同カンファレンスは毎日、昼食の配膳後に行っています。対象は、その日入院した方。入院時、病棟管理者が食事カ ンファレンス書記録に、窒息・誤嚥性肺炎の既往があるかどうか、食事情報など事前情報を記入してあります。加えて、前日の判定で再評価が必要な人、入院中 に問題が生じたと提起があった利用者さんなどがその対象です。
 誤嚥・窒息のリスクは「正常」「青」「黄」「赤」という四段階で(左項)判定し、食事面での安全対策の目安にします。対象者には所定のテーブルについ て、食事していただきます。参加するのは、医師、病棟スタッフ、管理栄養士、リハビリテーションスタッフです。
 スタッフは食事の様子を観察し、誤嚥・窒息リスクを判定。つづいて個々の方に必要な対策を立て、その内容をすぐに、カルテや各人の食器・トレイなどに表示します。
 その後さらに一日、食事観察を行い、立てた対策が適切だったかどうかを確認することにしています。
 ちなみに、対策内容というのは、トロミ・ゼリー食などのような食事形態の変更、介助方法の確立、食器・食具の変更などです。
 また、おやつのような持ち込み食のチェックもしています。ご家族にも、リハ総合実施計画を交付する時に、院内の嚥下の学習グループがつくったオリジナル のパンフレット『安全な食事をするために』をいっしょに渡し、利用者さんの状態の説明や方針の確認、差し入れに適したおやつの例を説明するなど、情報提供 します。
 「リスクはあっても希望を優先する」というケースでは説明内容と合意内容を医師記録に残します。

実践した結果

 このカンファレンスを始めて数カ月後、分析を行いました。二カ月間でのべ一一八人の判定・対策を行い、そのうち「赤」判定の方が四人、「黄色」判定は二四人でした。
 同時に職員の意識調査も行いました。食事カンファレンスについて「多職種で意見交換できる」、「リスクのある利用者を把握しやすくなった」、「入院後す ぐ対策がたてられる」、「職員の知識・関心が高まる」といった意見が多数を占めました。開始のねらいだった「迅速な評価と対策」が可能になっただけでな く、職員のスキルアップにもつながったように思います。


【誤嚥・窒息リスク度】

正常

…誤嚥・窒息の既往があるが、姿勢・食事形態の工夫などによって、ムセなく食事ができている

…姿勢・食事形態の工夫などを行っているが、常に見守りが必要な状態である

…何らかの対応を行っているが、1回の食事中に数回以上ムセがある

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