民医連新聞

2005年2月7日

新医師臨床研修だより―5― 埼玉協同病院

こまめな面接でつくる豊かなコミュニケーション

 埼玉協同病院は、94年に、民医連としてはじめて臨床研修指定病院を取得しました。新医師臨床研修制度が スタートした04年度は、7人の研修医を受け入れています。同院は、医師養成カリキュラムに共同組織との懇談を取り入れ、研修医とこまめに面接して到達を 確認しあっています。

(鐙(あぶみ) 史朗記者)

 「私たちは、組合員さんとつくる病院、診療所という理念を大切にしています。それを、医師養成の中にも取り入れています」というのは、同院の医局担当事務次長の本戸文子さん。
 医師採用試験には、「模擬患者」が登場します。模擬患者を研究している組合員さんが患者役になって、診察を想定した面接をします。「患者さんとコミュニ ケーションがとれるか」「診療態度」「説明のわかりやすさ」など、採用試験に組合員さんが加わります。
 入職後は、研修医が組合員さんの存在を知り、ふれあう機会を設けます。外来や病棟で患者さんのお世話をするボランティア組織「ひとつぶの会」のメンバー との懇談会もカリキュラムのひとつです。懇談会では、患者さんから実際に聞いた医師への期待・要望が語られます。組合員さんの活動を知り、組合員さんにさ さえられて医療が成り立つことを学びます。研修医はまた、先輩職員とともに、班会や健康チェック、医療懇談会にも積極的に参加しています。
 研修医の大吉信子さんは、インターネットで埼玉協同病院の研修を選びました。「組合員さんのおかげで、普通の病院ではできない経験をさせてもらっていま す。組合員さんとの話で、『ああ、そうなんだ。患者さんたちはこういうふうに思っているんだ』と理解できます。昨年、病院内で結婚式をしたんですよ。59 歳の末期の胃ガンの女性患者さんに息子さんの晴れ姿を見せたくて。お嫁さんはウエディングドレスを着て、牧師さんも連れてきて。看護師さんもいっしょに ベッドのまわりを囲みました。みんな泣いて喜んでいました。こんな経験は大学ではできませんよね」。

指導医講習会でスキルアップ

 研修医は、はじめの2年間、内科を中心にいくつかの科をまわり、入院、外来、在宅医療を研修します。3年目は、医療生協さいたまの地域拠点病院で研修します。
 1・2年目の医師10人で構成する研修医会は月2回、ほぼ全員が参加します。症例検討や学習会をメインにし、研修を改善するための提案もこの場で行われます。
 04年度の研修医はこの9カ月間、3病棟に分かれ内科総合研修をすすめています。各病棟に研修担当医が1人ずつ配置され、病棟間で格差が出ないように、研修の進捗をみてしています。
 指導医のスキルアップのため12月には16人が参加して、厚労省認定の臨床研修指導医講習会を行いました。タスクフォースをはじめ、自前の講習会を行うことができました。

研修医の希望きき、病院の将来プラン話し

 「当院の最大の特徴は、病棟単位で定期的に面接を行っていること」と本戸さんはいいます。
 研修医の面接はこの間、1・2・3・6・8カ月の節目に行ってきました。病棟単位で研修担当医、病棟医長、看護長、研修医の4人で行います。研修医の自 己評価に基づき、こまめに「ふりかえりの場」をもったことで目標への到達と成長が確認され、ねぎらいや励ましの言葉がかけられます。また、課題や要望を研 修医が直接話すことで、次の目標が明確になりモチベーションが高まります。
 朝は、研修医の「今日も1日よろしくお願いします」のかけ声で診療がスタートします。職場の雰囲気にも、研修医とのコミュニケーションにもプラスになっています。
 研修医の青山しおりさんはいいます。「看護師体験もしました。看護師は、患者さんや家族について、医師が知らない情報をたくさん持っています。情報を共 有し合うことが大切ですね。私は、朝早く来て患者さんのところをひと回りします。はじめはあまりしゃべってくれない患者さんが、だんだんうち解けてくれま す。先輩医師が患者さんと話をしているとき、できる限り同席して、会話のしかたなどを見習っています」

(民医連新聞 第1349号 2005年2月7日)

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