憲法を守ろう

2005年2月21日

9条は宝 軍隊は人を殺すもの「戦争イヤ」は実感覚

 「『九条の会』アピールを支持する医師・医学者の会」の賛同者は九五〇人を超えて広がっています。医療人の平和への思いを聞いていきます。今回は、呼びかけ人の一人「たぬき先生」こと毛利子来さんです。

 憲法九条を変えようという動きがすすんで、いても立ってもいられない気持です。

 私は戦争の体験者ですからね。母は早く病死し、父が太平洋戦争が始まった翌年招集されて、ビルマで戦死したの で、孤児になってしまいました。岡山の祖父母に引き取られたのですが、祖母が大空襲で焼夷弾を受けて、背中に大やけどを負いました。膿んで…蛆がわいて、 よく生きのびたものです。

 食うものがないし、軍人は威張っているし、生活の実感覚から、戦争はイヤでした。学徒動員で飛行機工場に行かされましたが、腹がへってね。「食いものよこせ」ってストライキまでやったものです。

 機銃掃射を受けて、私の目の前で、幼児の体が吹き飛ぶのを見ました。手も足もバラバラになって…。空襲は恐いし、ひもじい。こういう体験があるから、今でも軍隊と聞いただけで怖気(おぞけ)がふるいます。

「北風と太陽」のイソップ物語のように

 それに小児科の医者ですからね。子どもの命を守るのが仕事ですから、戦争はやめてほしいと思います。

 大戦後も朝鮮・ベトナム・アフガン・イラクと戦争が続いて、控えめなテレビ報道からでも、ずいぶん悲惨な場面を 見せられました。「民主主義や平和のため」と言ったって、人を殺しているわけです。軍隊というのは人を殺すものですからね。軍隊を持つのは「やめてくれ」 と単純に思います。

 北朝鮮の工作船や拉致事件から「自衛の軍隊が必要だ」という意見があります。しかし、大切なのは外交で、話し合いです。韓国の「太陽政策」、イソップ物語「北風と太陽」のように。

 いきなり刃物を突きつける、軍事力で威嚇するのは危険です。子どものケンカだってそうでしょう。げんこつを振り かざしたり、まして刃物を持ちだすのは、絶対やめるべきです。話を聞く姿勢を示せば、殴り合いや戦争にはなりません。もし外国が文字通り侵略してきたな ら、みんな戦いますよ。ベトナムやイラクのように。民衆が抵抗すれば侵略者の思い通りになりません。軍隊を持っていれば、それを口実に軍事基地を攻撃され て、逆に危険です。ないほうが安全です。

 私は、米軍基地も恐くてね。キューバ危機の時、日本の米軍基地が核攻撃されるかもしれないと思って、眠れなかったです。

いま考えるチャンスだ

 九条を変えることの危険性が、若い人にはピンときてないと言われます。それは九条があったおかげで、直接戦争に 巻き込まれることがなかったからでは? 僕らの世代が戦争の悲惨さを十分伝えてこなかったせいかも知れません。日本がした悪いこと、加害の面も伝えきれて いません。従軍慰安婦の問題も、まるで「なかった」かのように、マスコミがねじ曲げています。これでは分からないのは当たり前です。

 でも今、またチャンスが来たのです。六〇年七〇年の安保闘争、ベトナム戦争の時のように、戦争や軍隊についてみんなで考える機会なのです。遊び心、音楽、携帯など、いろいろなメディアを使って、きっかけを多数つくりたいですね。

 若い人に広げたいと思い、香山リカさんたちと協力して、三月にWEBマガジン「WEB九条」を立ち上げます。楽しみにして下さい。

 (民医連新聞 第1350号 2005年2月21日)

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