民医連新聞

2005年3月7日

あなたの職場におジャマしまーす(11) 青森 社会福祉法人「花」

<“だれにも福祉の花を”と精神障害者ささえる

 「だれにも福祉の花を」と、青森県・弘前市で精神障害者の社会復帰を支援する社会福祉法人「花」。精神単 科の藤代健生病院の近隣に建つ生活訓練施設さくら荘、生活支援センターすみれ、院内売店たんぽぽ、四つのグループホームを運営しています。「地域へとけ込 めるように」願い、精神保健福祉士・PSWなどの職員二二人が働いています。雪深い津軽を訪ねました。
(小林裕子記者)

 さくら荘(二〇室)は、退院した精神障害者が社会へ踏み出す前に生活訓練する場です。訪問した時は、三〇~六一 歳までの男女一九人が生活していました。病気や長年の病院暮らしで失った生活感覚や、人との付き合いかたなどを取り戻し独り立ちする準備に二年、延長で三 年暮らします。

 退院・退所後、実家に受け入れられない、アパート入居の保証人がいないなど住居がなかったり、ひとり暮らしが不 安な人の頼りが、グループホーム・ひまわり、ひばり寮、あすなろ、みやぞのです。「ずっと住める所がほしい」「親が高齢になったり、亡くなった後の居場所 を」という障害者と家族の切実な訴えでつくられました。

 これらグループホームや地域で暮らす人の日常的な相談役が、生活支援センターすみれです。三種の施設の連携の輪を示すように、さくら荘とすみれの事務室は共用。各グループホームの世話人さんも机を並べ、「花」の事務局にもつなげています。

 火曜日の朝九時は、さくら荘の「小遣い銭の払い出し」の時間です。金銭管理が苦手な人に、一週間分、慣れれば三 週分と渡されます。生活保護受給者も多いので、決まった収入でやりくりし、借金などのトラブルを避ける訓練です。風呂やトイレ、館内の共用部分の清掃、居 室の整理、ゴミの分別など日課や決まりごとを守れることも目標です。

 職員は二~三〇代が多く、勤務は二交替、日勤は八時半~四時半です。夜間当直を三事業所の男性職員五人が担います。

優しいまなざしで

 PSWの成田聡子さん(25)は「不安や悩みを理解し、自分で解決するための援助が仕事。いわゆるお世話ではあ りません」と説明します。生活保護申請や退所後の制度利用のため役所にも足を運びます。「行政の無理解についカッとするの」といいながら、「病気を受け入 れようと懸命に努力し、気遣いをする人たち」と、入所者には優しいまなざしを向けます。

 施設長の成田清春さんは「対人関係が苦手な人たちには、職員がいれば頼りです。でも、いない時間に自分で決める ことも必要です」。入所者との関係づくりを語りました。毎日の「交換日誌」もその一つ。言葉にすることが大事で、内容はなんでも良い、「面白い」という声 もあります。一職員が数人を担当し、問題を抱え込まず複数の目を注ぐため、担当は月替えします。

 月一回の「評価会議」は入所者参加です。当月の目標に対し自分はどうだったか、事前にシートに記入してきます。スタッフのほか、嘱託医、病院のデイ担当看護師も加わり、顔なじみの話しやすい関係で、次月の目標を立てます。

 「花」では、料理教室、花見、餅つきなど、レクリエーションが盛ん。入所者を元気づけ、地域にとけ込む上でも大 きな役割を果たします。住民といっしょに側溝を掃除したり、「雪灯籠」など、まちの行事にも参加します。毎月七〇〇部ほど発行する『はなだより』は、パソ コンによる手作り。地域に住む障害者のエッセイや漫画も載せ、町内会、小中学校、交番、消防署はじめ他県の関連施設に配布しています。

 編集を担当する中畑晋さん(39)は、グループホームひまわりの世話人です。見回りの車中で、一軒の家に数人で 住むスタイルの「ひまわり」、アパート形式の「あすなろ」を説明してくれました。「どちらに住むか、選択できる人はまだ幸せ。行き場のない人がたくさんい る。施設はまったく足りない」と。四つのグループホームは、ほぼ満室でした。

働く場・住む所を

 「私たちの事業はまだまだ陽が当たらない分野。事業運営の厳しさは、なまはんかじゃない」と、花・事務局長の榊 藤男さんは強調します。運営費の九五%を占める補助金が〇三年からカット続き。就労訓練を兼ねている病院売店の収益や、寄付金を充てても苦しい。しかも、 レクリエーション費、銀行利息、火災保険などには補助金を充当してはならない。個室にかかる電気・暖房代はもちろん、共用分は按分で「利用者負担に」とい う行政…。説明する榊さんは苦い顔です。

 「国は全国の精神病院にいる患者七万人を地域に出すという。弘前市では二〇〇人。しかし住居、働く場所、医療、生活できる保障がない。さらに悪くするなんて、けしからん」と怒ります。家族や医療・福祉関係者のネットワークを三月に立ち上げます。

(民医連新聞 第1351号 2005年3月7日)

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