民医連新聞

2005年3月21日

赤ちゃんに安全なBCG接種を 小児科医が市に働きかけ 長野 松本協立病院

 結核予防法の改定により、本年四月から公費によるBCG接種は「生後三カ月~四歳」から「出生直後~六カ月、特別の事情ある時一歳まで」となりま す。日本小児科学会などが懸念を表明。長野・松本協立病院の小児科は二月中旬、松本市に対して適切な処置を求める要望書を提出。三月三日、回答を持って訪 れた市の担当者と懇談しました。行政担当者も苦慮の表情を隠さず、予防についての認識をともにしました。(小林裕子記者)

「接種は3カ月から。安全に配慮した」(松本市)

「病院も自治体も心配は同じ

 「これでは接種率が落ちてしまいます…」「乳幼児がかかりやすい粟粒結核などを減らしたいと思うのですが…、心配です」「乳児検診時に接種する方向は検討されましたか?」「国の結核予防の対応が弱まっているように感じます」…。

 南希成医師はじめ四人の小児科医から発せられる意見に、市の保健課の担当者二人は、困惑の表情を浮かべながらも、時どき「同感」というふうにうなずきました。

 小児科医たちが菅谷昭松本市長あてに手紙を出し、伝えた懸念と要望は二点です。一つは、四月の時点でBCG接種 を受けていない一歳以上の子どもは、今後公費で接種するチャンスがなくなってしまうこと。もう一つは、生後三カ月未満では顕在化しない先天的な免疫不全の 子どもが、もしBCG接種を受けると、重篤な副反応をおこす恐れがあることです。

 この日、市はすでに〇四年度でいくつかの方策を取った、と回答しました。四歳までの未接種者全員に通知して接種を呼びかけている、乳幼児健診・健康相談などでも確認し、広報活動の最中であるとのこと。

 しかし、〇五年度以降の接種期間については、「国が定めた以上に延長することはできない」と回答。理由は、「予防接種の健康被害に対する救済制度が、国が定める期間以外に実施した場合には使えない」ためです。「BCGの副反応はかなり多いので…」と説明しました。

 もう一つの懸念については、従来どおり「生後三カ月から接種する」と回答。国が定める「出生直後から」では、接種部位の潰瘍など他にも副反応の恐れがあることや、赤ちゃんを連れて外出しやすくなる時期を検討した結果だそうです。

 また毎月、四会場で集団接種を行うほか、入院などで集団接種ができない「ハイリスクの子ども」に対しては、指定病院で個別接種できるようにし、接種の機会を増やす努力をすると表明しました。

お互いに意見交換を

 南医師は「市はがんばっている方だと思います。しかし、そもそも国は六年前に出した『結核非常事態宣言』を撤回したのでしょうか? 今回の変更は矛盾だ」と首をかしげました。市の担当者も「BCG接種率が下がると、どうなるか」と不安顔。問題は国の対応です。

 「他に要望があればお聞きします。こちらの要望も出させて下さい」と市の担当者。結核の家族健診のルールづくり、個別接種は可能か、など意見交換も短時間行われました。来訪の目的は回答の説明だけではなかったようです。

 「わざわざ来てくれるなんて、ちょっとビックリ」と南医師。小児科医四人が集まれる時間帯を知らせると、市は快く応じました。

 「こうした変化は、昨年三月に市民派で医師でもある菅谷市長が誕生してから」と言うのは、塩原秀治さん。「菅谷 さんを勝手に支援する会」をつくって応援した職員の一人です。「市の次期予算には、入院給食負担金への補助や、平均八・二%の保育料引き下げ、保健師の配 置など、きめ細かく盛り込まれた」と。

 市長選で病院は、候補者三人に医療・福祉に関する公開質問状を提出。菅谷さんの回答が優れていることは一目瞭然でした。

 「職員も応援したのだから、国の対応がひどくなる中では、いっそう市政をささえなくては。小児科の医師たちのような活動はとても大切です」と、塩原さんは話しました。

(民医連新聞 第1352号 2005年3月21日)

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