MIN-IRENトピックス

2013年6月10日

【声明2013.06.10】憲法25条を否定する「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求めます。

2013年6月10日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛

ソーシャルワーカー委員会
委員長 大出珠江

 私達「医療の現場で日々、生活困窮者の相談にあたっているソーシャルワーカー」(以下「SW」と略す)は、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「改定案」という)が6月3日の衆院本会議で可決されたことに抗議し、参議院での廃案を求めます。
 私達が受ける医療費などの経済的相談において、生活保護制度が最後のセーフティーネットと考えています。しかし、最近の生活保護バッシングも影響し、 「生活保護を受けることは恥ずかしい」「まわりに迷惑をかけたくない」など、ギリギリまで頑張って、救急車で運び込まれた時には病状は手遅れで、命を落と してしまう悲劇はあとを絶ちません。
 「改定案24条」は、委員会で一部修正され、申請書類提出について「特別の事情があるときはこの限りでない」という文言が加えられましたが、これには何 の意味もありません。「特別の事情」というのは福祉事務所が判断するため、窓口判断によって申請受理されないことも予想され、実質「水際作戦」を合法化す るものです。更に危惧されるのは、扶養義務者の関連書類の提出を求められることで、生活困窮者が生活保護申請を躊躇してしまう心理が働くことです。ただち に治療を必要とする状態であっても、患者本人が「親族に迷惑をかけるくらいなら、治療を受けない」と拒否する事態もあり得るのではないでしょうか。
 「改定案29条」では、親族の収入や資産調査を、勤務先も含めて洗いざらい調査するとしています。申請者の親族は無理をしてでも扶養を行うことを迫ら れ、保護の申請をした本人には申請取り下げの圧力になるでしょう。
 年々、非正規雇用が増大しています。 私達の所には、高齢者だけではなく働き盛りの年齢層の方も、医療費を問題にして多く相談に来られます。非正規雇用の場合は保険の加入もままならず、病気で 働けなくなれば収入も途絶えてしまいます。その為、軽度の症状があっても病院にも行かず重症になって初めて受診される方も少なくありません。
 健康保険に加入して働いていた方でも、退職後に非正規雇用で再就職し、保険未加入、無保険を続け、「受診が遅れた死亡事例」が後を絶ちません。日本では 非正規雇用の場合、「病気」という不測の事態に対して、社会保障がほとんど整備されていません。全日本民医連がおこなった「国保など経済的事由による手遅 れ、死亡事例調査」では、働きたくても働けない、また人間らしい生活ができない労働実態により、必要な医療を受けられなかった事例が多数報告されました。 「生活保護受給者の生活実態調査」では、香典が出せないために親戚の葬儀にも行けない、子どもの友だち付き合いも制限せざるを得ないなど、孤立につながり かねない生活保護受給者の苦しい生活実態が明らかになっています。
 現行の法律を改定し、最後のセーフティーネットとして機能しないものになれば、孤独死や手遅れでの死亡が増加していく事は容易に想像されます。
 更に「改定案34条3項」では、「被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うように努めるものとする」とありますが、 後発医薬品(ジェネリック薬品)については、生活保護受給者全員について一律に切り替えられるものではありません。また、どの薬を使うかは医師と患者の信 頼関係にもとづくものであり、患者の自己決定権をも奪う不当なものです。
 以上をふまえて、私達SWは、憲法の理念である基本的人権を守る立場で国民誰もが健康で文化的な生活が保障される制度のさらなる充実を目指して、法案の廃案を求め、全力をあげてたたかいます。

(PDF版)

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