民医連新聞

2005年5月2日

医療倫理で初めての活動交流集会 “医療倫理の視点を日常医療に”

 四月九~一〇日、全日本民医連は初めての医療倫理委員会活動交流集会を千葉で開きました。会議の目的は、まだ倫理委員会がない病院・法人に、委員会の活 動を知らせ、設置の助けにする、倫理委員会がある所は、経験交流で活動の充実・発展をはかる、の二点。三九県連七九事業所から、一一三人が参加しました。

***

 鈴木隆・医療倫理委員長が問題提起。三六回総会方針で「すべての病院に医療倫理委員会の確立を」と呼びかけて一 年、倫理委員会の設置は増え、活動も一定すすんだが、課題は医局での討議や、活動の継続・職員全体に委員会での議論を反映させることなどだ、と指摘。日常 の医療行為を「倫理的な視点」でとらえなおすこと、変化する医療の中で適切な判断をするためには集団討議が必要、とあらためて倫理委員会の役割をのべまし た。また、二度目のアンケート調査の特徴(別項)も紹介しました。

 学習講演は、医療情報の公開・開示を求める市民の会・勝村久司さん。わが子を陣痛促進剤の被害で亡くしたことをきっかけに、患者・市民運動にかかわっている同氏は、「患者の権利と医療倫理委員会~専門家が市民感覚を忘れないために」というテーマで語りました。

 活動報告は四カ所から(上)。イブニングセミナーは、愛知・協立総合病院の高木篤医師の「カルテ開示とIT 化」。電子カルテなど、IT化で患者との情報共有がすすむこと、一方で読みやすいカルテ記載、情報の取り扱いの配慮など、医療者に求められる努力も多いこ となどを、同院の実践から紹介しました。

 二日目は事業所の規模別で交流しました。「医療機能評価の受審がきっかけで倫理委員会をつくったが、これから、生きたものにしたい」「活動のイメージがつかめた」など、積極的な声が出されていました。

4カ所の活動報告

…京都民医連中央病院…
 細菌検査室事件を契機に設置。03年9月から隔月開催。複数の外部委員と病院職員で構成。事例検討、ガイドライン策定が主な議題。委員会での審議を職員 の倫理感に反映させることが、重要だが難しい課題。記事録はすべてHPや院内RUNで公開。関わっていない職員へのアプローチ、地域といっしょに考える機 会の確保などが課題。

…青森・健生病院…
 04年9月、医療倫理委員会を設置。医療倫理については、それまでも院内の集まりや、青年医師や看護師など若手が「臨床倫理研究会」をつくるなどで、学 習を重ねていた。03年末、職員で「医療倫理検討会」をつくり、身近な問題を検討。倫理委員会設置後も継続し、事務局の役割を担う。委員会では、症例の相 談、職員向け学習会、各ガイドラインの作成、管理部からの検討依頼(抑制問題、「患者相談室」など)医学研究に関する審査などを扱う。

…熊本・くわみず病院…
 県連に「設置検討チーム」をつくって、病院倫理委員会をたちあげた。4カ月に1度が定例会議。役割の1つに市民や共同組織を対象に「生命倫理に関する教 育・啓蒙活動」を盛り込んだ。今年2月に菊陽病院の倫理委員会といっしょに医療倫理市民講座を行った。

…東京・東都医療福祉協議会…
 病院や訪看St、特養など、医療・福祉の事業所が集まった協議会で倫理委員会をつくった。(1)ガイドラインやマニュアルづくり(2)模擬倫理委員会の 実施(3)現場からの審議依頼、をとりあげる。約2年半で24回開催。なお、委員会での議論は、『倫理委員会だより』を発行し、職員に伝える努力を行って いる。


 04年度医療倫理委員会アンケートから

実施:04年10月
回答:151中149病院

◆委員会の設置状況
…前回調査では倫理委員会を設置している病院は23。その後1年8カ月で72病院に増えた。

〈病院規模ごとの設置状況〉

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◆設置のきっかけ
…最近設置した病院(41)中、「医療機能評価を受審するため」が17病院と最多。

◆委員会は役立っているか?

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◆委員会の運営は順調か?

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(民医連新聞 第1355号 2005年5月2日)

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