健康の豆知識

2008年9月1日

(得)けんこう教室/ドライマウス/口の中のさまざまな不快感の原因に

久野よし乃 愛知・北生協歯科

 「ドライマウス(口腔乾燥症)」と診断される方の症状の訴えはさまざまです。ズバリ、「口 が乾く」「のどが渇く」というものから、「口の中がネバネバ、ザラザラした感じがする」「しゃべりにくい」「舌がヒリヒリ痛い」「食べ物が飲み込みにく い」「味がおかしい」「口臭がする」などまであります。口の中の不快感の多くは、ドライマウスが原因でおこっているともいえます。

 しかし実際は、「病気」としての認知度が低く、医療機関を受診するに至らないことが多いため、ドライマウスの潜在患者は、いまや数百万人とも数千万人ともいわれています。

だ液には多くの役割が

 ドライマウスとは、「だ液の量が少なくなり、だ液の質が変化する病気」です。そもそも、だ液には実に多くの役割があります。

 主なもので、(1)消化を助ける(消化酵素を含んでいる)、(2)食べ物を飲み込みやすい 形に整える、(3)舌に味を伝える、(4)お口の中の汚れを洗い流す、(5)殺菌作用、(6)歯や歯肉の表面を保護する、(7)歯にカルシウムを供給する (再石灰化)、などです。最近では、抗がん物質が含まれているともいわれています。

 そのため、だ液が少なくなってしまうと、前述したような不快症状のほかに、虫歯や歯周病が進行しやすくなる、口内炎ができやすくなる、入れ歯で粘膜を傷つけやすくなるといった、口の中の健康低下を引き起こすことになるのです。

だ液量は十分ですか?

 自分のだ液量が十分かどうか、簡単に調べる検査方法があります。

 (1)座った位置で安静にし、あごは動かさず自然にでてくるだ液をコップに出してためていきます。検査前に、喫煙や、口を強くすすいではいけません。

 15分後、たまっただ液量を測ります。一・五ミリリットル(小さじ1/3弱)以上あれば正常、少ないとドライマウスの疑いがあります。

 ドライマウスの原因には、表1のようなものがあげられます。代表的な原因疾患としてシェーグレン症候群があります。更年期前後の女性に多く、目や皮膚の乾燥を同時におこし、関節リウマチなどを合併することもあります。

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 一般的に多くの人が感じるのが、「年をとると、だ液の出が悪くなる」という、いわゆる「加齢現象」としてのドライマウスではないでしょうか。

 加齢により、だ液をつくるだ液腺がしぼんでいくため、だ液量自体が減ってしまうということもあります。また内科的な病気をあわせ持つ人が多くなるうえ、その治療のために薬を服用することで、副作用としてドライマウスになってしまうことが重なります。

 さらに、歯が抜けてしまったり、あごの筋肉が衰えてきたりすると、しっかり噛むことができなくなり、だ液を出そうとする刺激が減ってしまうのです。

予防にもなる対症療法

 治療は、原因疾患がある場合は、その治療を進めることが必要です。しかし実際は、複数の原因があってドライマウスになっていることが多いため、対症療法が欠かせません。

 薬物療法や漢方治療などもありますが、ここでは日常の「お口のケア」、簡単な「お口の筋肉トレーニング」を紹介したいと思います。この方法はドライマウスの予防にも効果があります。

 ■お口のケア(口腔ケア)

 まずは口用の保湿剤を使って、口の中の乾燥をやわらげましょう。保湿剤には液状のものや ジェル状のものなど、多くの種類がありますので、使い方などは歯科医にご相談ください。粘膜を十分に湿らせ、歯ブラシや歯間ブラシなどを使って汚れをとり ましょう。保湿をしてから食事をすると、飲み込みもスムーズにできます。

 口の中が乾燥すると、舌の上に食べかすや細菌がたまって白い膜がはったような状態、「舌苔 (ぜったい)」ができやすくなります。舌苔は口臭や味覚異常の原因になるため、とりのぞくケアが必要です。専用の舌ブラシを使い、できるだけ舌を前に出し て奥から前へ向けてかき出すように、弱い力でゆっくりブラシを動かしましょう。

 ■お口の筋肉トレーニング

 噛む力を維持、向上させることで、だ液腺を刺激してだ液を出す力をつけることができます。簡単なものを紹介します。

 (1)舌の先で上あごを弾き、「タンッ、タンッ」と音をだします。(ポッピング)

 (2)口を閉じて、にっこり微笑むように口角をあげ、奥歯でしっかりと噛んで3秒間「イー」と声を出します。その後、「ウー」と口をとがらすようにすぼめます。

 (3)頬を空気でふくらませて頬っぺたの筋肉をストレッチします。

よく噛んでお口に潤いを

kenkou_2008_09_02  大切なのは、だ液がよく出るようにすることです。だ液を出す、刺激となりやすい食品(梅干、酢の物など)を積極的にとりましょう。そして何を食べるにも、 まずしっかりと「噛む」ことが大切です。噛めば噛むほどだ液が出てきます。噛む回数については表2を参考にしてください。

 また十分に噛むためには、しっかりとした歯、きちんとあった入れ歯が必要です。定期的に歯科医院でお口の健診も受けてください。お口の中に潤いを取り戻し、おいしい食事、楽しい会話のできる、いきいきとした生活をおくりましょう

いつでも元気2008年9月号

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