いつでも元気

2010年1月1日

(得) けんこう教室/「便秘」って病気ですか?/お通じで悩んでいるみなさんへ

吉川周作 奈良・土庫病院 大腸肛門病センター

 「お通じ」で悩んでいる患者さんを多く見かけます。しかし、こと「シモの話」なので誰にもいえなかったという人も。まずおもな便秘の原因を表1に示します。
 今回は私が作成したお通じのフローチャート(表2)を参考に、自分に一番近い症状を選んで「便秘」を考えてみましょう。私が独自に考えたものですので、ぴったり合わない人もおられますが、ご了承ください。
 医学的に、便秘とは排便の回数が3日に1回以下をさすことが多いようです。少しずつでも毎日便が出る人や、1日に何度も便にいく人は当てはまりません。まず、スタートから矢印を左へたどっていきましょう。

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食事、適度な運動、水分補給を

【(1)の人】つらくて薬を飲むほどでなければ、基本的に治療は必要ありません。
 ところで、次の方法は試しましたか?

生活上の注意(生活習慣の見直し)

■食事…3食きちんと食べましょう。パン食・麺類は便秘になりやすいため米飯を。食物繊維を十分とるには煮炊きした野菜がオススメ。朝食時間のない人はブランフレーク、オールブランのような商品が有効。水溶性の食物繊維も効果的です。
■運動…適度な運動で足腰を動かし、背骨を刺激すると腸管 はよく動きます。食後の散歩も効果的です。1日の目標を男性は8000歩、女性は6000歩に定め、リラックスして歩いてみましょう。過度の緊張や精神的 なストレスも便秘の原因になることがありますのでリラックスが大事です。
■水分の補給…便の硬い人は水分不足が多いようです。季節や気候、汗のかき方、水分のとり方で便の硬さや排便の状態が大きく変わります。水分を多くとっても頻尿で困るだけの人もいるので無理強いはしませんが、お風呂あがり、寝る前、朝一番の水分補給は有効です。
以上のことを試して、よくならなければ、かかりつけの医師に相談しましょう。
【(2)の人】いまのままで問題ありません。便の回数が少ないのは、便を肛門の方に押しだす大腸の力が弱いだけです。(1)でふれた生活上の注意を実行しても出ないときは、下剤を服用するといいでしょう。

下剤服用時の注意

 下剤にもいろいろ。酸化マグネシウムなど硬い便を軟らかくするもの、刺激性下剤といって排便を促す薬、漢方薬などがあります。自分の症状にあったものを適量、服用しましょう。
 下剤を続けて使うと効果が弱くなることも。薬を増やしても、便は軟らかくなるが逆にスッキリ出ない、何度も便意をもよおす、という人がいます。下痢のと きに便が残り、スッキリしないのと同じことです。注意しましょう。
【(3)の人】(1)の生活上の注意を、まず試してください。下剤の量や、服用する回数を減らすことができます。

浣腸が有効な直腸型

【(4)の人】浣腸(かんちょう)で排便のある人・下剤よりも浣腸の方が出る人は、直腸型の便秘です。婦人科や直腸・肛門の手術をしたことがある人、寝たきりの高齢者によく見られます。常に直腸内に便が貯まるため、直腸の感覚が鈍くなり、さらに排便が悪くなります。
 「浣腸は癖になる」というのは、大きな誤解です。直腸型の便秘は下剤を飲まずに2~3日に1回の割合で浣腸をするほうが理にかなっています。また、病院 にかかっている人なら、浣腸と同等の作用がある坐薬(レシカルボン、テレミンソフト)がありますので、これを処方してもらうのもよいでしょう。

下剤とうまくつきあって

【(5)の人】下剤の量を増やさずに現状を維持、あるい は(1)の生活上の注意を守り、下剤を毎日飲まないようにしてみましょう。漢方のお茶(センナ)を飲んでいる人は、下剤としての分量がわかりにくいため、 知らないうちに服用量が増えることも。分量がわかるように薬剤の服用をおすすめします。
【(6)(7)の人】大きく2つの理由が考えられます。1つは大腸にがんやポリープができていて便が出にくいのを下剤で無理に出している場合。大腸の検査を1度受けましょう。
 もう1つは下剤、とくに便を軟らかくする薬の量が多すぎる場合です。薬は飲みすぎても逆効果のことが。効き目が悪いときは、医師に相談してください。
【(8)の人】甲状腺や糖尿病などの病気がある場合は、腸の動きが低下し便秘になることがあります。もとになる病気が悪化していることが多いので、その病気をしっかり治療しながら、下剤を服用します。
 糖尿病で米飯を制限されている人も便秘になることがあり、ダイエットでお米を食べない人にも便秘が多くみられます。
 腹部の大きな手術をした場合、手術後の癒(ゆ)着や神経の損傷で腸の動きが弱くなることがあります。婦人科の手術、とくに子宮全摘に加え放射線治療など をおこなうと、骨盤内の臓器が硬くなり直腸型の便秘になることがあります。
 また脳や脊髄の損傷で、神経の働きが鈍ることで、腸の運動が弱まり、便秘になることもあります。
 これらの病気のある方は、下剤をうまく使いましょう。

 便秘だけでなく、便通の異常は大腸の病気の前兆かもしれません。
 (1)便潜血検査を毎年、(2)便潜血検査で陽性が出た場合には必ず精密検査を、(3)大腸内視鏡検査や注腸X線検査などの精密検査を2~3年おきに受け、大腸がんを予防しましょう。

いつでも元気2010年1月号

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