民医連新聞

2005年5月16日

安全・安心の医療をもとめて(36) 日常の手技を見直し 血流への感染を防止 山形・本間病院

 山形・本間病院では、院内感染・感染予防対策にとりくんでいます。学習にもとづいた業務の見直しで、成果も。同院の看護師佐藤美子さんの報告を紹介します。

 今回のとりくみのきっかけになったのは、病棟の患者さんから血液培養検査で酵母様真菌(カンジタ)が検出されたことでした。感染ルートとして中心静脈カ テーテルが疑われました。最近、国内でも頻発しているカンジタ感染の多くが、静脈カテーテルによるもの、とされています。この背景には、高齢者を含む免疫 学的弱者の増加、医療の高度化、抗生剤などの薬剤の多用、などがあげられています。
 数カ月の間にカンジタが検出された患者さんに共通していたのは、「高齢である」、「抗生剤の多用」、「IVHの挿入」、「尿路留置カテーテル挿入」、 「頻回な喀痰吸引を実施している」という点でした。

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 そこで、CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドラインに基づいて、私たちが日常行っていた手技を見直してみることにしました。
 すると、「手洗い」では「一処置一手洗い」が、確実に行われていたか、「輸液調合・注射詰め」では、調合方法と、実施方法が適切だったか、「IVH管 理」では、交換方法や接続部の消毒が適当だったか、「血液培養」の採取方法が病棟内で統一されていたか、など、見直し・検討の必要な問題が、いくつも浮か び上がってきました。

実践的な職員学習で

 手技の改善をすすめる一方で、職員の学習も重視しました。病棟として呼びかけ、連続学習会を行いました。
 学習内容は、消毒薬の種類と効果や、滅菌・消毒・殺菌の違い、リスクカテゴリー、アルコール散布に効果がないこと、アルコール綿の適切な作り方、環境表面の消毒について、などです。
 こうして、学習と業務の見直しをすすめた結果、菌も検出しなくなりました。

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 今後も病院内の感染対策委員会と連携し、菌の発生状況の把握、他病棟での対策などの情報交換をしながら、継続し て感染予防を行っていきたいです。また、個々のスタッフが院内感染に関して危機感を持ち、気づきを大切にし、問題が発生した場合、すぐに対応ができる柔軟 な姿勢が必要だと考えています。


改善した点は

[手洗い]
・一処置一手洗いを行う
・せっけんと流水による手洗い後、ウエルパス(すりこみ式の手指消毒剤)による手指消毒の徹底

[輸液調合・注射詰め]
・手洗い後、マスク、手袋(未滅菌)の着用
・注射詰めに使用する注射器や、連結管は1人分ずつ交換し使用する
・アルコール綿の作り置きはしない

[IVH管理]
・IVH刺入部の消毒(週1回)
・ライン交換(週2回)時の消毒はヘキザックアルコールを使用
・刺入部が容易に観察できるよう、固定には透明なフィルム材を使用

[血液培養の採取方法]
・直接採血者、間接介助者2人で行う
・採血部位をヘキザックアルコールで消毒
・採血者は滅菌プラスチック手袋着用

(民医連新聞 第1356号 2005年5月16日)

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