民医連新聞

2005年6月6日

あなたの職場におジャマしまーす(14) 東京・大泉生協病院

医科・歯科連携で無呼吸症候群を治す

 「歯医者さんで『いびき』を治そう」というキャッチフレーズにひかれて、東京・大泉生協病院におじゃましまし た。国内に二〇〇万人いると推定されている睡眠時無呼吸症候群。いびきで家族や同室者を悩ませるだけでなく、高血圧や心疾患などの合併症をはじめ、睡眠が 充分とれずにおこる日中の眠気は、社会生活に影響を与え、事故につながる恐れまで。二〇〇三年に開設した同院では、院内の医科・歯科連携を、睡眠時無呼吸 症候群の治療に生かしています。(木下直子記者)

歯科でできる “いびき”治療

 無呼吸症候群の多くが、上気道がふさがって起きる「閉塞性」のものです。その治療には、就寝時に鼻マスクを装着 し、一定の圧をかける(CPAP療法)、骨格そのものを外科手術で変えるなど、上気道をひろげる方法がいくつかあります。歯科で行える治療は、下あごの位 置を前に引き出した形を保つマウスピース(「スリープスプリント」)を作り、眠る時に装着して、上気道の閉塞を防ぐというもの。
 「睡眠時無呼吸症候群の治療を始めたのは、歯科の方が早かったんですよ」と、内科の王徳権医師。「閉塞型」と診断された同院の患者さんが選択する治療 は、CPAPとスリープスプリントが、ほぼ同数です。
 「コンパクトなので、『いびきが気になって行けなかった旅行もできるようになった』と、喜ばれています」と、歯科の石口雄一医師。「本来なら、治療のメ インは医科で、歯科のスリープスプリントは補足的なものなのですが…口腔の上・下の型取りをするだけでできるうえ、『イヤだったら外せば済む、後戻りがで きる』という治療なので、患者さんにも受け入れやすいのでしょう」と、同じく歯科の赤石岳雄医師。
 効果のほども上々です。「マウスピースを作った後でもう一度検査をし、症状が改善したかどうか、確認するのですが『いびきゼロ』にはならなくても、改善 しています」と、王医師。「良くなって気が済むと、後の検査に来てくれない人もいるので困るんですけれど…」とつけ加えました。

治療・連携の流れは

 これまで、スリープスプリントの治療の難点だったのは、「保険が使えず、患者さんが五万円の全額自己負担」ということでした。が最近、保険適応になりました。「これで、医科・歯科連携はますます欠かせなくなった」と、石口医師。
 治療の連携は…? まず、歯科と医科、どちらに相談にきた場合でも、いったんは一泊入院の検査へ。この結果、「中等度以下」の無呼吸症候群と診断された 人は、紹介状を持って歯科に行く、という流れです。ただし、自身の歯が二〇本に満たなかったり、かみ合わせの状態が適当でない、鼻疾患があるなど、歯科で 対応できないケースは内科が引き受けます。

* * *

 医科と歯科の連携は、無呼吸症候群の治療から、あらたなひろがりをみせています。最近病棟ではじめた口腔ケアの 回診には、歯科衛生士もいっしょにまわっています。「口腔内に問題があることで嚥下が困難になる患者さんもいるのです。歯科のアプローチが必要な方はいな いだろうか? と、入院患者さんをみると、歯科治療を必要としている方がけっこういます」と王医師。
 「スタッフの体制がととのえば、往診もやりたい。在宅でも歯科を必要としている人が多いと思うので」と、石口医師もこれからの目標を語りました。

(民医連新聞 第1357号 2005年6月6日)

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