民医連新聞

2005年7月4日

あなたの職場におジャマしまーす(15) 秋田・中通リハビリテーション病院

患者さんの回復が私たちの喜び

 「患者さんの回復が目に見えると、看護師はがんばれる」。秋田・中通 リハビリテーション病院(二二〇床)では、長年にわたり蓄積した「オムツはずし」の経験を生かし、いま自然排便を促して「摘便をやめる」とりくみもすすめ ています。また各職種間で「患者の目標」について認識がズレないよう、カンファレンスのあり方も検討を重ねています。(小林裕子記者)

 ナースステーションでは滝浦陽子さんが、患者さんの口にスプーンを運び「さあどうぞ」。トロミをつけた水を飲む訓練中でした。
 廊下では新人の菅原美香さんが、歩行訓練の付き添い。通りかかった主任の加賀早苗さんが「もう少しお尻を引っ込めて。ゆっくりね」と声をかけました。
 ここは四階・回復期リハ病棟(五五床)。看護師二〇人が、三交替で働いています。日勤帯は六人のチームが二つ。看護師一人が患者四~五人を受け持つ患者 担当制です。平均在院日数は、一六〇日前後です。
 廊下は広く、歩行器や車イスで行き交う患者さんに職員の目が注がれています。これは「できるだけ病室から出てもらう方針」で。
 医師二人、介護士一〇人、OT、PT、ST、SWが計一四人という配置です。セラピストは病院全体で四五人。リハ専門病院ならではの人数です。

病院あげて「オムツはずし」

 「脳卒中などの急性期を脱して当院にくる患者さんの、六割に排尿障害が、五割に排便障害があります。ここで初めて自分の障害を認識します。だから心理的なサポートが欠かせません」。こう言う佐藤章子看護師長は、院内「排泄ケア達人委員会」を担う一人です。
 励まし、見守り、しんぼう強く関わって可能になる「オムツはずし」。同院はそのエキスパートで、一九九九年度に民医連表彰されたほど。「トイレで用を足 す気持ちよさ、その感覚を大切にします」と佐藤さん。
 「オムツはずしプログラム」には、排尿間隔の把握、排尿サインのキャッチ・伝達、トイレ誘導など三段階の目標と、手だてが簡潔にまとめられています。経 過表をつけて評価し、看護計画を修正します。機能的な失禁を対象とし、成功率は日中で八割ほどにも。

患者の回復が見えると看護師はがんばれる

 さらに「摘便をしない」とりくみで成果を上げています。摘便を受ける患者は苦しい。便秘がひどくなる前に、手のひらのツボ押し、あん法で腹部を温める、 マッサージするなどで自然な排便を促し、下剤も減らせました。
 しかし、これらは根気も労力もいる仕事です。看護師にかかる負担は相当なものでは?
 「辛いこともあります。でも、患者が良くなっていくのが見えると、看護師はがんばれるんですね。尿意を教えられるようになった、と患者以上に看護師が喜 びます。やりがい、意欲につながっているんです」。佐藤さんは、「そこが看護師のすごいところ」と目を細めました。

看護師の喜び苦しみ

 回復期リハ病棟の看護師長、佐藤信子さんも、章子さんと同意見。「責任も権限も持つ担当看護師は、個別性に応じ、創意工夫も盛り込め、患者さんに深く関わる。これが喜び、誇りです」。
 一方で、担当看護師こその悩みも。在宅復帰率は六割ほど。高齢化、核家族化がすすみ、独居老人、老老介護、キーパーソンがいないなど、せっかく良くなっ ても自宅では暮らせない。マンパワーが不足する老人病院に入れば、ADLは後戻りしてしまいます。介護施設は費用が高い。
 「介護保険改悪が実施されたらどうなるか。本当に困る」。信子さんの顔が曇りました。「帰る先に困ってうつ症状になってしまった患者、家に迎えられない家族を前にして、いっそう悩みも深い」。
 患者と喜び苦しみをともにする看護師の姿が大きく見えました。

チーム医療が土台

 「ジョイント・ミーティング」。この名称の歴史は一〇年。いま同院の全病棟で行われ、月一回、仕事上の問題意識を出しあう。四階病棟の六月の議題に「新 たなカンファレンスを設けること」がのぼった。今もあるのに、さらに設ける理由は、スタッフ間で患者さんの目標についての認識のズレを極力なくすため。 「五階病棟のやり方がいいよ」との副院長の提案から論議に。
 他に、セラピストの「口腔ケアを体験したい」との要望、事例検討会を具体化することが決まった。

(民医連新聞 第1359号 2005年7月4日)

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