民医連新聞

2005年10月3日

今月から負担アップ 介護施設利用者守ろう 施設緊急代表者会議ひらく 全日本民医連

 「改悪」介護保険法が一〇月から実施に。施設入所・通所の食費と居住費が利用者負担になりました。負担が年金を超える高齢者も多数あり、入 所者・家族は強い不安の声をあげています。介護報酬が切り下げられ、事業所経営にも深刻な影響が出ます。九月一四日、全日本民医連は施設緊急代表者会議を 開きました。

 会議は東京でひらき、一二〇人が参加しました。

 基調報告で国光哲夫さん(介護福祉部員)は、厚生労働省の事前説明がQ&Aで変わったと指摘。「負担区分の第一~三段階と第四段階以上で、徴収額は別立てにしてよい。第四段階以上では、説明と同意があれば自由契約が可」と、事実上、徴収額は「上限なし」になりました。

 「自治体や国にむけた要求運動とともに、投稿などでマスコミに訴えたり、介護一一〇番などにもとりくもう。民医連外の事業所との連携も大切。栄養ケアマネジメントには、増収とケアの向上という視点で挑戦しよう」とのべました。

 一三の指定報告がありました。

 利用者アンケートで実情や声をつかみ、試算を示して説明、利用者徴収額を極力抑える努力が、各地から報告されま した。減免制度と相談窓口、民医連のたたかいの姿勢を知らせた奈良民医連のリーフが紹介されました。説明会に行政担当者を呼び、利用者の声を直接伝えた経 験も。「自分は年金が八五万円。あと五万円低かったら第二段階だが、年額二五〇万円の人と負担は同じなのか? 一万円の負担増の重みが違う」と担当者に訴 えたとの報告でした。

 また「個室を多床室に変え、利用者負担を減らし満床率を上げる検討」「栄養ケアマネジメントを活用」「ケアマネ緊急学習会で怒りと不満が渦巻いた。減免相談の手引きを作ることになった」などの対応、自治体交渉の報告が続きました。

 意見交換し、「自治体へ相談窓口や独自減免制度を求めて働きかけ、国には被害実態を届け、減免制度と介護報酬の改善を強く要求しよう」と意志統一しました。

(資料)利用者援助をはじめた自治体

東京・千代田区 独自減免制度
 介護施設入所者に、所得に応じ約50~75%を助成。要介護5・所得段階3の特養老 人ホーム入所者の場合、月額約2万8000円の増のうち、1万9500円を市が助成する。デイサービス利用者の食費は、区が1食あたり200円助成。事業 者にも協力を求め、今年度は負担が増えないようにする。予算額は約920万円。(日経新聞9/14)

東京・荒川区 通所食費を減免
 低所得者層(世帯全員が住民税非課税の世帯)を対象に、食費の25%を補助。10月から来年3月まで。同区のデイサービス利用者負担はこれまで 382~400円強。補助制度によって1食450~525円程度になる。補助総額は約650万円。(朝日新聞9/14)

長野・豊丘村 デイ食事費助成を拡大
 これまで社会福祉協議会のデイだけだった食費助成300円を他施設利用者にも広げる。当面06年3月まで。追加予算は80万円。(村住民課の話)

 


利用者、施設の声は―

 うしおだ老健やすらぎ事務長、杉田左和子さんは、「10月の介護報酬引き下げで、赤字に転落する危険があります。これまでも経営的には厳しいのに。8月に利用者ご家族に説明会したら、『法律で料金が上がるなら、施設ももっと努力を』と指摘されました」。

 施設は今まで以上に節約や病床運営に気をつかい、地域に存在感のある老健へ試行錯誤が迫られています。

 老健やすらぎを利用している平野憲二さん(74)は、「介護保険ができたときはありがたいと思っていた」と語り ます。妻の節子さん(75)は要介護5、年金から毎月7万円以上も支払い、改悪後はさらに1~2万円の負担増。「貯蓄を切り崩してでも、妻に不自由はさせ たくない。食事代は仕方なくてもホテルコストは許せない。利用者の声も聞かず、一方的に介護保険から外した。もっと改悪されるのではと、これからが不 安」。毎日、新聞を読み、介護保険の動向をチェックしています。


声集め、自治体に働きかけ…発言から

市担当局と懇談
(石川・やすらぎ福祉会)

 待機者家族会・入居者家族会とともに金沢市と懇談、市単独で軽減措置をつくるよう求めました。利用者の実情を示し、参加者も心配を訴えました。

 特養やすらぎホームのある利用者は、年金三万一九五〇円/月で福祉法人の減免を受けても負担が三万三六二八円。 「第二段階は現行より安くなる」という厚労省の説明は事実に反する、と市の救済策を求めました。市は「信じられないような困難ケースは他からも聞いてい る。貯蓄があったり家族が扶養できる場合もある。本当に困って、国が対応しないなら、市として対応する」と発言。

 参加者は「子ども自身が年金生活者で、扶養できないのが現実。自分の年金で負担できる水準に」と、世帯分離に対する柔軟な対応を求めました。市は「実態に即して判断を」とのべました。

「いま以上払えない」という
利用者が過半数にも
(大阪・耳原鳳病院)

 介護療養病棟(四〇床)でアンケートを実施し、一六人が回答しました。現状でも四人が、収入を上回る負担額になっており、一〇月からはさらに三人増えます。また、支払った後の残金が一万円以下になる人が四人。「これ以上払えない」との答えは九人でした。

 意見欄には「今でもやっとの思いで払っている。死ねというのか」「子どもたちの生活にも影響が出る」「障害者の子がいる。生活できなくなる」「年金も低いし家族の収入も少ないので、負担が大きい」など切実でした。

* *

 長野・はびろの里での調査でも、六割が「一〇月以降は不安」と回答しました。

障害者・寡婦(夫)減税の
利用をすすめて
(奈良民医連)

 住民税が非課税なら、第三段階として食費・居住費の減免措置を受けます。しかし〇六年度から非課税基準が下げら れるので、対応が急がれます。現在は年間収入二六六万円まで非課税、来年三月からは単身者で一五五万円、夫婦で二一二万円までに。減免制度の対象外となる 人は、全国で一〇〇万人です。そこで「障害者控除」と「寡婦(夫)控除」をもれなく申請し、非課税世帯にとどまる手続きが重要です。税法上、障害者に準ず る者として「六五歳以上で市町村長等の認定を受けている者」が対象です。

 申請なしでも介護認定時に「障害者控除対象者認定証明」を同封してくれる自治体もあり、発行手続きの簡素化を求めることも大切です。三月一五日までに確定申告が必要。利用者の実情により世帯分離も検討すべきです。

栄養ケアマネジメント導入を
(福岡・親仁会)

 基準額で利用者から食費負担をもらっても、事業所は大幅な収入減。経営を守り、ケアの質を向上させる視点から、 栄養ケアマネジメントを導入すべきです。しかし、施設ケアマネは現状でもオーバーワーク。そこで、多職種で業務を分担し、カンファレンスを強め、作業手順 をつくることに。また利用者を三グループに分け、一〇~一二月に順次すすめる計画です。これで減収の三分の二が回復できる試算です。

10月改悪の利用者調査
(東京民医連)

 介護の利用所負担軽減について、東京都の来年度予算に向けた要求書に盛り込み、八月に提出、一〇月に交渉する予 定です。そのため介護保険利用者から、食費・居住費自己負担の影響について、聞き取り調査をしています。七月に実施した、介護保険施設緊急代表者会議で は、新単価を当てはめた結果、どこも大幅な減収となる予測でした。説明や対応、栄養マネジメントや経口移行加算の論議も始まっています。

(民医連新聞 第1365号 2005年10月3日)

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