民医連新聞

2005年10月3日

看護もっと輝きたいの (2)今、現場は “内因在院日数に追われる日々 また温かい看護がしたい”

 「在宅から病棟に戻ったら、まるで浦島太郎。たった数年でこんなに変わったの?」と、ベテラン看護師がもらしました。ここ数年で急速に変 化し、ひろがった看護業務。一般・急性期・回復期リハ、療養型、特殊疾患など、病棟機能の再編、在院日数管理やリスクマネジメント、電子カルテの導入、外 部評価受審、医療倫理委員会…ざっとあげただけでも、すべてに看護師が関わっています。担う役割は重い。「在院日数の短縮、リスクマネジメント、IT化」 を「医療現場の同時多発テロ」と呼ぶ人もいます。(木下直子記者)

 公立や大学病院、日赤の労組などが加盟する日本医療労働組合連合会(日本医労連)は、この秋「看護師大増員闘争」を準備しています。「民医連だけの困難ではありません。看護師の手が足りない、という悩みはどこも共通」と、同会の田中千恵子委員長。

 「ひとくちに『看護師が足りない』といっても、一五年前のナースウエーブ時代とは質が違います。当時は病床数が規制される直前の『駆け込み増床』で、看護師が絶対数で足りなくなりました。今は、病床回転率や退職率の上昇が特徴的です」。

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 ある大学病院では昨年一年で二〇〇人の新人が離職しました。また、募集枠をひろげたものの、集まらなかったとい う大病院も。大変だとわかっている急性期病棟で働くことを選ばない、という傾向もでています。看護大学を出たのに、現場の重圧に耐えきれず退職、コンビニ で働いている看護師もいます。

在院日数が短縮されて

 グラフは平均在院日数の年次推移です。一〇年前の三三・七日が、いまは二二・二日に。

 「診療報酬で、一七日以内、二一日以内といったしばりが設けられていますから。何十日も退院できない患者さんがいる一方、軽症者の在院日数を切り刻むように短くして、平均在院日数を必死でコントロールしている」と、ある病院の師長。

 そしてその結果が、患者の激しい入れ替わり。「何日か休んで出勤したら、病棟の半数が知らない患者さんになって いる。必要な情報を大急ぎで確認、仕事を始める」という日々です。「三年前と入退院を比べると一カ月だけで約一二〇人増えていた」という病院もあります。 それでも看護師の配置定員は増えていません。

忙しさで奪われるのは…

 「欧米では日本の二、三倍も看護師が配置されている」と、田中さんが話した時、若い看護師が「そんなに人がい て、やる事があるの?」ときいたそうです。「『看護の心を取り戻そう』と呼びかけても、この忙しさの中『看護の心』がどういうものか、分からない若手が 育っているかもしれないと、ハッとしました。現場でチェックされるのは『心』でなく、『業務がまわっているか』ですから」。

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 全日本民医連が八月に行った厚生労働省との懇談では看護師の切実な声をぶつけました。「忙しくなって辛いのは、患者さんとふれあえないこと。痛いところをさすってあげたい、入浴もさせてあげたい、と思うが時間がない」。

 ある看護師は、意識がなかった患者さんとのエピソードを語りました。「声をかけながら体を拭いたり、好物のグ レープフルーツを絞って管に入れたり、枕元で童謡を歌うなど働きかけて、手を握り返すまでに回復された経験がある。在院日数に追われる今は難しいけれど、 私たちはまた命の温かさにふれ、こんな感動ができる看護がしたい」。厚生労働省はどう受け止めたでしょうか。(つづく)

(民医連新聞 第1365号 2005年10月3日)

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