民医連新聞

2005年10月17日

看護もっと輝きたいの (3)今、現場は

“人員配置引き上げは必要です”
–看護協会にきく

 日本看護協会は、看護の現状をどうみているのでしょう。同会の「看護職員需給状況調査」や、医療提供体制の見直しを求め厚生労働省に提出した「意見書」の内容を中心に、岡谷恵子専務理事と小川忍常任理事にききました。 (木下直子記者)

 今年五月、日本看護協会は、厚生労働省に医療提供体制の見直しを求める「意見書」を提出しました。医療・看護を とりまく環境の変化、医療安全など近年とくに求められてきた課題をのべつつ、「国民の医療参画への支援」や「安全」「救急」「在宅」「人材養成」などを強 調しています。目を引くのが安全対策の項にあった人員配置の引き上げ提案。「急性期一般病床は患者対看護職員一・五対一以上、夜間帯看護職員配置数の増員 及び常時配置の考え方の導入」です。

 〇二年の一年間に出た三万三五二四件のヒヤリ・ハットのうち、看護師の報告が約八割(二万六三八三件)。背景に、患者の重症化と業務の過密化がある、との指摘です。

 「現行の診療報酬の最高基準は二対一、これでは足りません。実際は二交代勤務をするので、看護師一人がみる患者 数は日勤で七人、夜勤では一五人くらいになります。夜勤は最低でも一〇人の患者さんに一人の看護師が配置される保障がほしい」と岡谷さん。「急性期一般病 床は一・五対一以上という根拠はここから出ています」。

 また「常時配置」は、どの勤務帯でも一人の看護師が受け持つ患者の数が同じであるという配置を意味しています。 例えば、カリフォルニアでは五対一体制を二四時間維持する保障がされています。「一人の看護師の受け持ち患者が一人増えると、患者の入院三〇日以内の死亡 率が七%上がる」とのデータに基づいているそうです。

在院日数が短い病院で高い離職率が

 八月にまとまった看護師の需給状況調査※の概要では、〇三年度の離職の特徴などを報告しています。離職率平均は 一一・六%と、前年と変わらなかったものの、平均在院日数や地域別で差が大きく出ました。一般病棟の入院基本料Ⅰ群1算定の病院を平均在院日数で比較する と「一四日以下」の離職率が一三%を超えました。

 「平均在院日数が少ない病院ほど離職率が高い傾向があり、現場ではより強い閉塞感があると思います。もともとの 配置基準が少ない上、重症患者に高度医療を提供する急性期病床では看護師の負担が過重です。入退院業務の増大など業務密度が高くなり、実際一対一でも間に 合わない病院も」と、岡谷さん。「診療報酬の人員配置基準の上限が引き上げられ、人手が足りてくれば離職率は低くなるのでは」と期待します。

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 また、小川さんは、高齢社会の実情をふまえ、医療提供体制の見直しの必要性にも触れました。「これまで過疎地の 悩みだった高齢化問題は大都市の問題になります。急性期を脱しても、帰るに帰れず、病院を転てんとしている患者さんも。平均在院日数の短縮と同時に、在宅 医療・訪問看護の基盤整備をすすめる必要があります。理想はひとり暮らしでも在宅療養できるシステムですが…」。

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 「看護労働と、医療提供体制と、同時並行的に改善していかないと、矛盾はなくせないと思うんです」と岡谷さん。「毎年の総会でも、現場のたいへんさを会員が切せつと訴えます。この実態を市民にどう伝えるか、意識的に新聞に投稿などもしています。努力していきたい」。

(民医連新聞 第1366号 2005年10月17日)

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