民医連新聞

2005年11月7日

医療倫理のはなし実践編 職員、組合員と学び、考える公開倫理講座ひらく あおもり協立病院

 あおもり協立病院の倫理委員会は、毎月一回定例で会議を開く他に、年二回を目安に職員や組合員に向けて、公開倫理講座を開催しています。倫理委員会事務局の寒河江(さがえ)寛子さんに紹介してもらいました。

 当院では、二〇〇三年一一月に倫理委員会が発足しました。委員会は、今年の一〇月で一八回を数え、公開倫理講座は三回開きました。

参加者とともに事例検討

 公開倫理講座は、多くの職員や組合員に医療倫理について学び、ともに考える場を提供するものです。

 一回目は、〇四年八月に開き、七〇人が参加しました。平岡友良倫理委員長が「医療倫理とは何か」と題して講演。「鎮静剤を投与し患者の苦痛をとったが、 意識低下したため、できる限り会話をしたいと望んだ家族の意向とくい違いが生じた事例」「家族が病名の告知を最期まで拒否した事例」を臨床倫理四分割法を 用いて検討しました。

 二回目は、職員向けの「医療臨床倫理アンケート」の結果を報告。二つの事例を検討しました。

 アンケートは、「様呼称」「患者・家族との関係」「インフォームドコンセント」など、七項目について聞いたものです。

 そのうち「日常業務のなかでインフォームドコンセントを意識したことがあるか」の問いに、「ない」「どちらとも言えない」と答えた人が半数近くでした。

 また「インフォームドコンセントが当院で定着しているか」については、あまり定着していない、と考える人が多いことも分かりました。

 三回目は開催日時を、平日の夜から土曜日の午後に変え、医系学生も参加しました。講演は全日本民医連倫理委員の安田肇医師で、「医の倫理と患者の権利」 がテーマ。判断能力のある難治性疾患患者の病名告知と終末期医療について事例をあげ、参加者の質疑も受けて、いっしょに考えました。

 安田医師は「マニュアル的な倫理指針はできないし、作ってはいけない」と話しました。参加者からは「治療であっても押しつけてしまうのはどうか」「倫理 問題は何が正しく何が間違いということができないジレンマを感じる」「医療者側の苦しみ、悩みが分かった。治療の際は自分の意思をはっきり伝えるべきだと 思った」などと感想が出されました。

今までのとりくみを振り返って

 倫理委員会や公開倫理講座での事例検討を通じて明らかになったことは、「医学的効果」だけでは医療の質の向上はできないということです。患者様の利益を 最優先する「倫理的価値」を考慮することによって、満足度の高い医療を提供できると思います。そのスキルを多くの職員が身に付けることが、倫理委員会の主 要な目的の一つではないかと考えています。

 今後は「四分割法」などのスキルを病棟のカンファレンスで使っていけるようにしていきたいと考えています。そのために、倫理委員会ではスキルアップのた めに、毎回症例検討を行っています。公開倫理講座を続けることによって、倫理の問題を職員や組合員さんと共有していきたいと考えます。

病 床 数 223床
委員会設置 2003年11月
委員構成 委員長(副院長)、委員(内部…医師2人、看護師7人、薬剤師1人、リハビリ技師1人、SW1人、事務2人。外部…県立保健大学教授、顧問弁護士、医療生協組合員の院所利用委員各1人)
検討事項 医療行為や研究上の倫理問題を調査・審議し、指針や規定を作る。職員や組合員から申請のあった倫理問題を検討し指針を出す。職員の教育啓蒙活動。
開  催 月1回

(民医連新聞 第1367号 2005年11月7日)

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