民医連新聞

2005年11月7日

看護もっと輝きたいの (4)今、現場は 急増するメンタル疾患 激変する医療の「矢面」で

 「看護師のメンタルヘルスが深刻。休職者、リハビリ勤務者がどの事業所にもいる」―こんな報告をききます。看護職場の人手不足やストレスがメンタ ルヘルスを悪化させ、退職を生み、いっそう職場を厳しくする…。この悪循環を断ち切るカギはどこにあるのでしょうか。(小林裕子記者)

 看護委員会の調査で、二〇〇四年に入職した看護師九四三人のうち、八一人が一年以内に退職、理由のトップは「健康の問題(メンタル)」で一八人、二割を 超えます(表)。大阪・耳原総合病院の調査でも、五年間に休業した職員の原因のトップに「精神疾患」が。うち看護師が六割でした。

民医連だけじゃない

 四月の産業衛生学会にも、看護師のメンタルヘルスの報告が。「入職一年後の燃えつき症はストレスの影響を受けていた」「大学病院における看護師の離職に 関する要因に、燃えつき、抑うつ、身体愁訴が…」「看護師では年代が若いほど、心理的ストレス・仕事のストレスの訴えが高率…」などです。

 看護師を対象に「メンタルヘルス相談」を行うある臨床心理士に聞きました。患者に対するカウンセリング法を教える中で「私たち自身のストレスも半端じゃ ない」という声を聞いてきた体験から「看護師は自分で対応できると思われる」と。様ざまな職種と接してきて感じ、相談窓口を開くきっかけになりました。看 護師のメンタルヘルス障害の増加や新入看護師がリタイヤする傾向もよく耳にし、「なかには看護師になる以前から、ストレスを人一倍強く受けやすい条件を 持っている人もいる。そのケアは不可欠。一方、病院によっては、過度なビジネスモデルの導入、効率至上主義の影響もあるのではないか」と話します。

健康リスク 看護師に集中

 福岡医療団は、六月「心の健康づくり計画」をスタートさせました。臨床心理士の相談日を設け、ポスターで周知させ、「復職支援」も始めました。

 その出発点に、医療団が二〇〇二年から続けている職場のストレスアンケートがあります。〇四年の結果は「看護師だけが一貫して健康リスクが悪化。特に急 性期病棟の看護師は、急速に悪化。これは看護師の働く意欲、仕事の満足度の低下に結びつく」というものでした。

 調査に携わる産業医の舟越光彦さん(千鳥橋病院)は、早急にとるべき対策を提言しました。管理者を含め仕事量を管理し、職場で具体的なささえあいを強 め、育成面接などで問題を早期発見するなど。合わせて、全日本民医連の『民医連職員が健康で働き続けるための指針(案)』の実践も求めました。

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 提言を受けて「計画」づくりに携わった佐藤剛さん(労安事務局)はいいます。「〇三年に集中した医療経営構造の 転換、医療と介護の激変の負荷で退職もメンタルも増えた。なかでも看護師は多かった。原因を探り対策を立てることは〇四年の重点だった。課題をトップが認 識し、周知徹底することで計画が動き出した」。

 舟越医師は、「高度化する医療に対応し、安全問題で緊張し…看護師は激変する医療の矢面に立ち、ストレスが集中的に現れている。対策の基本は、人を大切 にする職場づくり」と話しました。看護師に表れた健康悪化は、各医療職の健康リスク上昇の象徴といえそうです。

 「言うまでもなく、問題の根源は劣悪な医療政策。メンタルヘルス対策と同時に、制度改善の運動も求められる」。舟越医師の提言にはこう記されています。

*次回からは、事業所の努力工夫を取材します。

(民医連新聞 第1367号 2005年11月7日)

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