憲法を守ろう

2005年11月21日

9条は宝 発言(9) 人間を不幸にする戦争止めるのが九条の使命

 日本女医会の会長で、「九条の会・医療者の会」の呼びかけ人のひとり、橋本葉子さんです。

 人間を一番不幸にするものは戦争です。災害はしかたがない面がありますが、戦争は、やめようと思えばやめることができます。防衛のために自衛隊があると認めたとしても、こちらから積極的に出ていってはいけない。それを止めることが九条の使命です。これだけは守りたい。

 医師だった父は、昭和一六年、開戦の直前に召集されました。私はそのとき九歳で、小さな妹弟が四人いましたか ら、母の苦労は相当なものだったと思います。医院を閉じたので、人も去り、隣り組のことなど全部が母の肩にかかりました。そのせいか、母は終戦後、病気に なり四二歳で亡くなりました。そういう体験からも絶対、戦争はイヤなのです。

相手が望む支援の形

 もちろん、国際的な支援活動は必要です。しかし、それは九条とは別問題だと思います。「自衛隊のなかに、海外支 援ができる特別の訓練を受けた組織をつくれば、九条を変えなくとも、いくらでも支援できる」という意見もありますね。NPOとかNGOでするのが一番よい と思います。「軍隊」が行うことによって、軋轢(あつれき)がおきるのが怖いのですから。

 専門家であっても、災害時の的確な支援は難しいものです。日本女医会も、海外で災害が起きた時、さまざまな支援をしています。気をつけているのは、相手がほしいものと、こちらがあげたいものと違う場合があることです。物資を直接送るより、お金の方がよいとか…。

 阪神大震災のときでした。会から多くの女医が支援に入ったのですが、混乱の中で連絡がうまく取れない。「とにか く様子を知ろう」と向かったなかに眼科の医師がいました。メガネをたくさん持ち、メガネ屋さんを連れて行き、測定もして、それがたいへん喜ばれました。寝 起きで飛び出した方が多く、みな困っていたのです。

至誠と愛の精神で

 日本女医会は、女性医師の社会的地位の向上をめざしており、百年の歴史があります。先輩たちは戦前から市川房枝 さんなどといっしょに、女性の選挙権獲得など社会運動にもとりくみました。東京女医学校(東京女子医大の前身)の設立者、吉岡彌生先生が掲げた「至誠と 愛」の精神も引き継がれています。

 国際活動も盛んで、国際女医会の会長も出し、国連NGO国内婦人委員会の参加団体にもなっています。

 女性の医師国家試験合格者は三割を超え、女医の割合は一五%以上を占めます。でも医学部に、女性の教授、助教 授、講師はまだ四%ほどです。女性医師が働きやすい環境をつくることは、女医会の大切な課題です。それは看護師をはじめとする女性医療従事者の働きやすさ につながりますからね。

「呼びかけ人なんですね」と学生からも声が

 呼びかけ人になったのは、純粋に平和を願う気持ちからです。著名な方がおられ、政治的に偏っていない。これなら大丈夫と思いましたので。
 でも、こんなに反響があると思いませんでした。ある時、看護学部の先生が「先生、呼びかけ人なんですね」と感激して声をかけてきました。また、女子医大 の学園祭で九条を取り上げたグループがあって、「メッセージをください」と訪ねてきました。学生も危機感をもっているんですね。


 

橋本葉子さん((社)日本女医会会長・医師)

1932年、千葉県生まれ。生理学者。東京女子医科大学名誉教授・理事。吉岡彌生記念館館長。(社)至誠会会長。「本来は無口で本が好き。けれど、大学で教えるなかで、だいぶ変わりました」と語り、女医のサポート体制づくりにパワフルにとりくむ。

(民医連新聞 第1368号 2005年11月21日)

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