民医連新聞

2002年3月1日

いのちと人権まもれ たたかう列島(3)国民健康保険

“国保の国庫負担もとに戻して”で自治体も一致

札幌市が社保協シンポを後援

 札幌市社保協などは二月二日、「国保問題を考えるシンポジウム」を行いました。老人クラブや国保運営協議会なども含め、一三〇人が参加。同市の国保年金課長がシンポジストをつとめ、市が後援者にもなるという画期的なものでした。

*   *

 シンポジストとして参加した同市の渡辺誠・国保年金課長がきりだしました。「国保財政の累積赤字が八五億円で す。低所得者(生保基準の一・一倍以下=四人家族で年間所得二三六万六〇〇〇円以下)に適応される減免制度の利用者が六、七年前の二倍に急増。この費用が 平成一二年の単年度で発生した二二億円の赤字のうちの一五億円を占めています」。
 札幌市では平成九年の拓銀の破綻から経済不況の厳しさに伴って、国保加入者が増加。「年間所得〇円」が八万六〇〇〇世帯に及ぶなどの実態を背景に、収納 率は八三%と政令指定都市で最低。収納率が低いと、国庫負担がさらに減額というペナルティもあります。
 「政令指定都市中で一位の規模の二八五億円を一般会計から繰り入れ、保険料も七年間据え置くなどの努力をしましたが、今後も保険収入が見込めない状態で は、国民皆保険制度の維持は困難です。国民皆保険制度は、職域(使用者保険)と、地域保険(国保)の二つですすんできました。この不況が国保の問題点をさ らに浮かび上がらせたのでは…?」と渡辺課長。
【苦悩する国保保険者】
 国保財政の危機は札幌市が例外ではありません。
 国民健康保険制度は五八年に「国民皆保険制度」として発足しましたが、国保の主な対象者だった一次産業従事者の減少、年金生活者の加入の増加など、加入 者層が著しく変化し財政基盤が弱くなりました。政管保健や組合保健との格差は拡がっています(資料)。これに加え一九八四年、政府が国保国庫負担を四五% から、三八・五%に削減したことが財政基盤を決定的な危機に追い込みました。
 全国総計で三〇〇〇億円の赤字が計上され、どの自治体でも一般会計からの繰り入れがなくては維持できない状況です。
【医療改悪がさらに国保財政おびやかす】
 今回の医療改悪案も国保保険者の苦悩をさらに深くする内容。シンポジストの一人、全国保団連・滝本博史次長が指摘しました。「医療改悪で七〇~七四歳の 人が老人医療から除外された場合、除外者の四割が国保になる予想。収入は低く、医療の必要性は多い層。医療改悪が国保財政を圧迫することが予想されま す」。
 会場で一致した意見は「国庫負担を元に戻せ」の声でした。


(資料)

【国保加入者の職業構成は激変】

*農林水産業

1965年:42.1%→1998年: 6.8%

*自営業

1965年:25.4%→1998年:20.8%

*無 職

1965年: 6.6%→1998年:46.7%

【保険種別の特徴】

加入者平均年齢

  国保…51.3歳

  政官…36.9歳

  組合…33.6歳

老人加入者割合(70歳以上)

  国保…25.3%

  政官… 5.7%

  組合… 2.8%

所得平均

  国保…168万円

  政官…244万円

  組合…380万円

保険料の負担率

  国保…9.1%

  政官…6.1%

  組合…4.2%

(厚労省)

(民医連新聞2002年03月01日 1269号)

 

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