民医連新聞

2006年1月16日

ベトナムのリハビリ医療を支援10年 京都民医連など職員・有志 医師が招かれ韓国で報告 アジアの仲間と医療・平和考えるフォーラム

韓国で一一月に開かれた「ソウル健康フォーラム」に民医連の医師三人が参加しました。尾崎望さん(京都民医連)、中田耕次さん(香川民医連)、宮川卓也 さん(京都民医連)です。一〇年来とりくんできた「ベトナムでのリハビリテーション支援活動」の報告を求められての招待でした。「健康問題から平和問題ま で、アジア・太平洋的な視野で交流した。市民レベルの交流は大切」という尾崎望さんの寄稿です。

 韓国インチョン国際空港で、「MVP(Medics with Vietnam and Peace)健康権を求める韓国医療グループ連盟」のメンバー 三人の出迎えを受けました。数年前からベトナムの医療支援を続けている医師・歯科医師のグループです。

韓国にも同じ志の医師が

 MVPがベトナムで医療に恵まれない人たちを支援する理由は、ベトナム戦争の被害がいまも残ることを知り、韓国が戦争に荷担した、という罪の意識からだ そうです。韓国人にとって、ベトナム派兵という事実は、触れたくないことでもあり、また奉仕活動のエネルギーにもなっていて複雑ですが、歴史に眼をそむけ ない姿勢には、共感しました。

 フォーラムで私は、主にベトナムの、特に子どもたちの障害に対するリハビリ支援について報告しました。フロアから「なぜその活動を始めたのか?」「枯葉剤の子どもへの被害は?」「私たちのNPOと民医連との関係は?」など質問が集中しました。

 私たちの活動が大きな共感を呼んだことを確信しました。韓国にも民医連と同じような視点で活動するグループがあり、彼らと率直に意見交換したことも大きな収穫でした。

医療の営利化に抗して

 フォーラムのテーマは「健康は売り物ではないOur Health is not for Sale」、副題に 「アジア太平洋地域における医療の営利化と住民からの代案」を掲げていました。主催は「健康権を求める韓国医療グループ連盟(KFHR)」。韓国で住民の 健康のために活動する歯科医師、薬剤師、労働者グループ、東洋医学グループです。開催は二度目。民医連と交流を持つ緑色病院が加入する「人道主義実践医師 協議会(APH)」との共催でした。

 七つのワークショップと三つのシンポジウムテーマは、たとえば「営利的病院と民間医療保険は信頼できるか?」 「必須薬剤の入手に向けての国境なき医師団のたたかい」「グローバリゼーション時代における移民・出稼ぎ労働者の生活と健康」「アメリカの医療システム・ その優位性と弱点」「WTO(世界貿易機関)の一〇年・そのアジア太平洋地域の住民の健康におよぼした影響」など多彩でした。

 そこに共通するのは「発展途上国や貧困層の健康問題は国内問題という視点だけでなく、背景に世界的規模の資本の収奪を見なければならない。アジア・太平洋的な視野で問題を共有しよう」という姿勢でした。私は、「なるほど、眼からうろこ」の気持ちでした。

平和と健康の関係もテーマ

 発言をひとつだけ紹介します。イラクの医師が、ファルージャの状況について、「表面的にはイラク戦争は終わったが、米軍は民間人攻撃を止めない。特に医 療人をねらい、手術中に外科医を拘束したり、救急車を狙撃し、病院を爆撃するなど後を絶たない。それをCNNもABCも報道しない」と。また「韓国がイラ クに派兵している事実を私たちは忘れない。一日も早く撤退してほしい」と訴えました。もし、ここが日本なら、名指しされたのは当然日本だったでしょう。

 宮川医師は、原水禁世界大会の模様や平和学習会などを報告し、民医連が平和を守る活動をすすめていることをアピールしました。

 また三日目の韓国医師たちとの交流で、宮川医師は地域にささえられる民医連の初期研修制度の優れた点を報告しました。また中田医師は、中四国の医師養成や医師政策を担当する立場から、日本の例を紹介し、意見交換しました。

 強烈に刺激的な三日間はあっという間に過ぎ、知識欲がくすぐられました。「英語に習熟し、近いのに遠かった国、韓国を深く知ろう」この思いを胸に韓国を後にしました。

(おざき のぞむ)


 京都民医連の職員はじめ有志は、一九九五年からベトナムのタイニン省で「枯れ葉剤」被害を調査し、障害者のリハ ビリを支援する活動と交流をすすめてきました(写真)。同省は、病院や専門スタッフが少ない中、家族や地域の人が協力し身近なものを補装具として使うリハ ビリ、障害者自身が教育・生活改善・就労に主体的に参加する運動をすすめています。日本のスタッフには、医療的リハビリ、特に技術指導の支援が求められて います。昨年一月には、同省の保健省長トゥ医師と、平和村所長のトゥアン医師を京都に招待し、リハビリの様子を見てもらい、夏にはベトナムを訪問、検診・ 技術指導・家庭訪問などをしました。「ベトナム・タイニンの地域リハビリテーションを支援する会」は協力者・カンパを募集中です。

(民医連新聞 第1372号 2006年1月16日)

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