民医連新聞

2008年1月21日

後期高齢者医療制度 撤回まであきらめない 知れば知るほど怒り 地域で学習・運動広がる

 七五歳以上が強制加入となる後期高齢者医療制度に怒りと不安、疑問が広がっています。国の医療費負担が先進国で一番低く、国民負 担が重いことで問題視されている中、高齢者をターゲットにさらに医療費を抑制する冷たい制度です。政府は一部分の保険料徴収と窓口負担増を遅らせ、批判を かわそうとしています。しかし、年金からの保険料天引きは「生活できない」「受診できない」人を増やすのは必至。国民皆保険制度の崩壊も加速させます。 「あきらめない運動」が強調されています。(川村淳二記者)

89歳も座り込み

 一二月一九日の夜、香川医療生協の組合員でもある池田展江さん(89)が寒風の中、厚生労働省前に座り込んでいました。全国老後保障地域団体連絡会の座り込み行動(三泊)です。
 戦争中に離婚し、農業や病院の付添婦をして、子どもを育ててきた池田さん。「私の年金は月三万円ぐらいよ。自分で野菜をつくって生活しているの。三回も ガンになって、胃もないのよ。税金も負担も増えたのに、四月から後期高齢者医療制度で保険料も上がったら、年寄りはどうやって生きて行けばいいの」と、話 します。池田さんは全日程に参加しました。

知られていない制度

 一二月二八日、神奈川・新つるみ薬局の二階に横浜勤労者福祉協会の友の会員さん約二〇人が集まりました。後期高齢者医療制度の紙芝居を使った学習会です。
 紙芝居は、扶養に入っている花子さんに四月、新しい保険証が届くところから始まり、病院で診療回数や薬の量が制限されたり、年金の振り込みが減り…。幹 事の服部久江さんが花子さん役、事務局長の岸本美保さんが医者役などをしました。その後、社保担当の阿部健司さんが実際に保険料を計算して説明しました。
 収入がゼロでも、死ぬまで保険料を納め続けないと保険証が取り上げられる。「凍結」されたのは健保被扶養者だけ(一五%)などの説明に「収入ゼロでは、 泥棒でもしないと払えない」「みんな半年間凍結されるんじゃないの?」と、驚きの声が上がりました。
 「とんでもない制度だ。新聞やテレビも詳しく報道していないよね」と八〇代の男性会員。「機会あるごとにお話をしていますので、制度が変わることは知っ ていても、具体的な内容については分からない人がまだまだたくさんいるんだと、改めて認識しました」と、岸本さんは言います。

「許しちゃおけん」

 宮川利恵さん(山梨・甲府共立病院)の通信では、甲府健康友の会の強化月間中、老人クラブ訪問で「地区の連合会長が集まる場所で、制度の説明をしてくれ」という要請を受けました。
 一二月二一日、市内北部の連合会長の集まりに友の会の副会長と幹事、組織課職員が伺いました。市の説明会では「よく分からなかった」「負担が増えるかどうか、質問したが答えられなかった」そうです。
 参加者の中から「もっと詳しく話を聞きたい」と電話があり、一二月二五日に市内の単位老人クラブの役員会に伺いました。
 そこでは、みなさんが制度についてある程度勉強しており、「天引きなんてひどい」「取りやすい人から取っている」「今の日本をつくったのは自分たちの年 代なのにひどい」と、怒りました。しかし、年齢で差別する医療という認識や医療費が上がると保険料も上がることなど、詳しい中身は知らされていませんでし た。
 会長さんが最後に「許しちゃおけん。署名しかない。できることはやろう」と呼びかけ、持っていった署名用紙に全員が署名することに。後日もらいに行くことになりました。

2割超える自治体で意見書決議

 見直しなどを求める意見書は、三八〇を超える地方自治体で可決されました。これは全地方自治体の二割を超える数です。
 東京では、葬祭費の財源を別枠とし、保険料を低く抑える対策をとりました。また、ほぼすべての広域連合で、後期高齢者への健診や葬祭費の支給、保険料の 減免を実施する見込みで、世論におされての苦肉の策となっています。

(民医連新聞 第1420号 2008年1月21日)

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