民医連新聞

2006年2月6日

看護もっと輝きたいの (9)始まる模索 増員は「良い看護したいから」 他職種・患者さんに知らせよう 東京・小豆沢病院

 東京・小豆沢病院の看護部会は、院内の看護師に「やりたい看護」をアンケートしました。「忙しい、だけでは、他職種や患者さんに、増員の必 要性が伝わらないのでは?」という発想でした。「もっと患者さんのベッドサイドにいたい」との内容は、東京の看護フォーラム(昨年末)で同院の看護師が報 告し、共感を呼びました。(木下直子記者)

 板橋区にある小豆沢病院(一五七床)。この間、病棟編成を何度か行い、在院日数の短縮とともに、患者の重症化・ 多様化で、看護業務も厳しさを増しています。そんな中、同院の看護部会は、「行いたい看護をどうしたら良いのか、今の看護について思うこと」というアン ケートを、昨年行いました。

 きっかけは師長会で看護問題を話しあったこと。「なぜ私たちが看護師を増やして、と言うのか、それを他職種や、患者さんにも伝えるには? と、論議になったんです」と、同院の高木順子総師長。「自分たちの仕事を振り返り、整理しよう、という目的でした」。

「やりたい看護」その結果は

 調査は、師長ではなく、院内の看護部会でとりくみました。若い看護師も、気がねせず本音を出しやすいようにと考えたからです。

 結果、共通していた要望は、「保清」と「患者さんの話をゆっくり聴くこと」でした。中には「やりたい看護が思い 出せない」というものや「雑務が多く、看護ができなくなっていると思う。患者様に看護の力でできることは何か? と考えることが後まわしでは?」などの声 もありました。

 「アンケート結果が示したのは、増員して休みたい、ではなく、増員してもっと患者さんのことをしたい、という看護師共通の思いなんです」と、高木さん。これは待ち合い室に張り出し患者さんにも知らせることにしました。

 また、患者さんや家族からは、苦情ばかりでなく感謝もたくさんもらっています。「これは言葉にして共有しよう」と、月一度の職場会議で、三分間スピーチを始めた病棟もあります。

「海外逃亡」も考えたけど…

 「アンケート結果に、涙が出そうでした」。東京民医連の看護フォーラムで、同院の看護師・小高智美さんは、こう 話し始めました。「看護師をやめようか…海外にでも逃亡しようかな…と、何度も思います。でも、ここに留まっているのは、私たちが、患者様のことをよく考 え、よい医療を実行しようと努力していると、胸を張れるから。同じ目標を持った仲間がたくさんいて、そして、患者様のひと言に、ささえられているから」。

 小高さんは、在宅酸素の患者会の担当者です。病棟勤務のかたわら、時間の捻出にも苦労しながら、会の一泊旅行を準備しました。そして、参加した患者さんの妻がくれた言葉を聴いて「この仕事をやって良かった」と噛みしめました。

 「夫婦で五〇年連れ添ってきたけれど、生活に追われ、出かけることもできず、やっとゆっくりできると思ったら、 夫が病気になって…旅行も諦めていた。でも、今回初めて二人で旅行ができました。生きていて良かった。ふだん感情を出さない夫が、トイレで『お前、良かっ たなあ、良かったなあ』と泣いたの。本当にありがとう」。

 「たいへんな仕事で、これからも葛藤は続くはず。でもこんなひと言がいただけるよう、患者様から力をもらってが んばってみようと思います。そして、尊敬できる先輩や頼もしい後輩たちと、やりたい看護をめざし、チームですすんでいけるよう、がんばりたい」これが、彼 女の決意です。

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(民医連新聞 第1373号 2006年2月6日)

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