民医連新聞

2006年3月6日

あなたの職場におジャマしま~す(21) 長野・松本協立病院歯科センター 初の歯科センター奮闘中「あきらめないで歯の治療」

 「全県連に歯科を」の方針で、今期三つの歯科が誕生。石川と大分、そして長野の松本協立病院に歯科センターができました。長野県中部の民医連施設 すべてに往診、各地で歯科班会を開き、町内会などといっしょに町おこしで歯科相談にとりくむなど、全職員で地域を駆けめぐっている。こういう情報で松本を 訪ねました。(小林裕子記者)

 訪問した二月一七日は記念すべき日でした。二月の一日平均患者数が目標に到達し、黒字になったのです。昼休みのミーティングで、大澤宏志事務長が嬉しそうに報告しました。

 続いて症例検討会が始まりました。赤ちゃんがいて受診しにくい患者さん、脳性マヒで不随運動がある患者さん、未収金が気になる患者さん…、電子カルテか ら白板に投影されるレントゲン写真を見ながら、花村俊晃所長を中心に、対応を相談します。

 同歯科センターの特徴の一つは密接な医科との連携です。患者さんの了解があれば、その場で医科のカルテを参照できます。薬の内容を確認したり、医師・歯 科医師間の意見交換もスムーズです。医科から紹介されて、重い糖尿病や心臓病、在宅酸素の患者さんなども来るので、酸素の配管も備えています。

 スタッフは医科の知識にも積極的です。車イスの患者さんの介助法をリハビリ技師から学んだり、ペースメーカー・心除細動器の知識、自閉症についてなど勉強会をしています。

歯科医療が届かない人たちがいた

 開設して、職員は重症の患者さんが多いことに気づきました。全部の歯が根っこだけとか、入れ歯を七年間も外していない人など。それは、重い内科疾患が あって歯の治療をあきらめていたり、具合が悪くて家から出られないなど、歯科医療が届かない人たちでした。

 歯科衛生士の大和(おおわ)さとみさんは「全身性の疾患のため他の歯科で断わられたとか、抜歯はここが安心という人も来る。班会で話をしたら遠方から来てくれた人もいた」と。開設は待たれていました。

 一年かけて開設を準備した大澤さんは「民医連の強みを生かすには、共同組織に意識的に働きかけなくては」と考えました。一万通のアンケートを送ると八〇 〇通が戻ってきて、「よく説明してくれる歯科がほしい」「寝たきりで歯が一本一本と抜ける。どうしよう」など要望や訴えがたくさん書かれていました。

誠実な民医連だから

 スタッフ一一人の派遣や研修などに、山梨・東京など近県の民医連歯科が惜しみなく協力してくれました。でも民医連経験のない人が半数。大澤さんは三年 間、民医連について学ぶことを中心に、みんなの気持ちをまとめ、地域に出て患者さんを掘り起こすことに力を注ぎました。群馬の利根歯科診療所から学んで班 会メニューをつくり、病院全体の「地域に出よう」の運動に合わせ、班会に出向きました。月間では歯科医師も先頭に立ちました。『友の会ニュース』に載せる 「歯の健康」記事は山梨に学びました。

 「地域に出て、困難な患者さんを知ったり、自分の言葉で話す面白さを感じたりして、みんな成長している」と大澤さん。

 青年が多い職場です。事務の宮澤ひとみさんは、学生実習で患者さんとのつながりが強いことに魅力を感じ、就職したそうです。それは「期待どおり」で、事 例のような人の歯を「何とかしてあげたい」と話しました。

 「入れ歯がピタッと合う」と友の会の会員さんからも評判です。「それは手順を踏んで、一人ひとりの口の形や筋肉の動きをみて材料を選び、誠実に仕事する 民医連だからこそ」と。歯科技工士として二〇年のキャリアをもつ大澤さんの実感です。

 重症者の治療が一段落した時、次の課題は? 神奈川で研修を受け一年前に赴任した石井賢紀歯科医師は、「まだ痛くなったら診てもらうという傾向が強い。 予防や検診のモチベーション向上にとりくみたい」と意欲的です。

(民医連新聞 第1375号 2006年3月6日)

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