民医連新聞

2006年3月6日

医療倫理のはなし実践編 事例、記事、体験から誰でも自由に語り合う ―群馬・医療倫理ネットワーク

 「医療倫理について自由に語り合おう」と、関心があれば誰でも参加できる場を提供しているグループがあります。群馬県にある「医療倫理ネットワーク」です。利根中央病院の原敬医師は、立ち上げのときから世話人として関わっています。
(荒井正和記者)

 「医療倫理ネットワーク」は、二〇〇二年二月に発足しました。呼びかけ人は、群馬大学大学院で医学哲学・倫理学を研究している服部健司教授です。医療者、医系学生、教育・研究者、市民三〇人が集まりました。

 「ネットワーク」は、「MECC(医療倫理臨床ケース・カンファレンス)」を毎月定例にし、年に三回「市民医療倫理フォーラム」を開催しています。

少人数でじっくり話し合う
「MECC」

 MECCは、二〇〇六年二月で三三回を数えました。

 検討する事例は参加者が持ち寄ります。臨床現場の事例だけでなく、気になった新聞記事や、参加者の体験など、医療倫理に関する事柄を取りあげてきまし た。例えば、「肺炎の高齢患者にどこまで積極的な治療をするか」「がん告知に反対する家族」「自殺企図患者への延命治療」などです。

 参加者は一〇人前後で、机を囲んで一人ひとりが意見を述べ、じっくりと話し合います。一人の素朴な疑問に対してもそれぞれが考えを出し合います。

市民・学生も発表
「市民医療倫理フォーラム」

 「市民医療倫理フォーラム」は、医療倫理に関する講演、市民・学生の発表、ケース・スタディというプログラムです。参加者は八〇人くらい。現在、五月に 一三回目のフォーラムを開こうと準備しています。

 これまでの講演は、「医療・エイズ・社会」「インフォームド・コンセントの表とウラ」「出生前診断」「未成年者の治療決定と親権問題」などがテーマでし た。NPO法人の代表や大学の倫理学、法律学の研究者や医療関係者が講師です。

 それに市民・学生が医療倫理に対する考えを発表する場を設けているのが特徴です。

 脳血管疾患を発症した人のニーズに合う転院先選びの難しさ、医系学生が臨床実習で感じた倫理問題や患者さんとの信頼関係づくり、などが報告されました。

 また、ケース・スタディでは市民、学生が医療者、研究者とともにパネリストとなり、フロアを交えてディスカッションします。

*  *

 「倫理委員会で作った美しい言葉ばかりが並ぶ標語や患者対応マニュアルを、壁に掲げ唱えるだけで、自分たちは倫 理的だといえるでしょうか。目の前の患者さんにそれをどう生かすかを考えることが大事です。たとえば、『患者さんに親切にしましょう』という標語は、どう 振る舞えば親切にしたことになるのかを考えてはじめて意味をもつでしょう。それは医療者や研究者だけで答えが出せるものではありません。医療の受け手も含 めた様ざまな人たちが対話し、身近なところから、ていねいに、しかも安易に結論を求めようとしないで考え続けていくしかありません」と原医師は話していま す。

連載「医療倫理のはなし」は今回で終了します。

(民医連新聞 第1375号 2006年3月6日)

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